第37話 番外編・チョウチョを撮ろう2(アオスジアゲハ)
五月も終わりに差し掛かったとある休日。
居間でくつろいでいた私のところに、兄がスマホを持ってやってきた。
「これ、なに?」
なにか鳥でも撮ったのだろうか。そう思ってスマホを見たら、そこには家の庭に生えた花が映されていた。しかも動画。花の周りを、しきりに翅を羽ばたかせながら飛ぶ一匹のチョウがいた。
「このチョウ、なに?」
なんだ、チョウか。兄の撮ったチョウ。どうせアゲハチョウだろうと思って見ていたが、なんだか違う。翅が黒っぽく、中心に青っぽい筋が入っている。これは……。
「アオスジアゲハだ!」
言った瞬間、私はカメラを取りに二階へと走っていた。
外へ出て、庭に行く。亡き祖父が手入れをしていた庭は、かつては庭木がきれいに刈られて、季節ごとに花々が咲き誇っていた。今ははっきり言って草が生い茂ってしまい手入れが行き届いていないのだが、植物たちは季節が巡るごとにやはり花を咲かせてくれる。
幸い、アオスジアゲハはまだ花にいた。
ゆっくりと近づいて、カメラを向ける。アオスジアゲハは花の蜜を吸っているから、画面に入れるのは簡単だった。けれども、翅を羽ばたかせながら飛んでいるため、シャッターを切っても翅がブレてしまう。難しい……。何度も撮りながら、翅の羽ばたきが止まった一瞬を狙う。
何十枚か撮って、やっと一枚、きれいに撮れた写真ができた。
アオスジアゲハはアゲハチョウ科のチョウで、その名の通り、黒地の翅に青い筋模様が入っているのが特徴だ。幼虫の食草はクスノキやタブノキなどのクスノキ科の植物で、よく神社などに植えられている。私の家の近くではクスノキを見たことがなかったので、まさかこんなところでアオスジアゲハに出会えるとは思っていなかった。今まで見ていなかっただけで、もしかしたら毎年来ていたのかもしれない。
アオスジアゲハには思い出がある。私が学生だった頃、構内にクスノキがたくさん植えられていて、アオスジアゲハもたくさんいた。成虫を捕ったり、幼虫を捕って育てたりした。拙作の『虫採れっ!』にも登場する。私の大好きなチョウだ。
「アオスジアゲハ、撮れたよー!」
兄が教えてくれなかったら、アオスジアゲハが庭に来ることを知らないうちに過ごしてしまっていたかもしれない。感謝しつつも、できれば自分で見つけたかったなという思いもあり、ちょっと複雑な心境になった私であった。
追伸
撮ったアオスジアゲハがこちら。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1533411382548320256
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