第27話 先を越された!?2(ウグイス)
「ホトトギスが撮りたい!」
突然、兄がそんなことを言い出した。
ホトトギスとは、体が灰色っぽくて、お腹が白黒の斑模様をした鳥である。カッコウの仲間で、他の鳥の巣に卵を産んで育ててもらう
「ホトトギスは夏鳥だから、まだ来てないよ」
「えっ、今鳴いてるやん」
「ん?」
「ほら、ホーホケキョって」
そこまで聞いて、私はツッコんだ。
「それって、ウグイスやん!」
ウグイスはお馴染み「ホーホケキョ」と鳴く春告げ鳥である。灰色がかってくすんだ緑色をしていて、目の上に白い眉毛のような模様がある。普段はやぶの中にいて、開けた場所へはめったに出てこない。そのため、メジロという緑色をした鳥とよく間違われることがあるのだが、兄はどうやらホトトギスとウグイスを勘違いしていたらしい。
「そう! ウグイスが撮りたいんだよね!」
兄はやる気に満ちた様子でそう言った。しかし、私はそんな兄の言葉を聞き流し、冷ややかな視線を送った。
「ウグイスなんて、撮れるわけないじゃん」
そう、ウグイスは撮れない鳥なのだ。先ほども書いたが、ウグイスは普段やぶの中にいて開けた場所にはめったに出てこない。ゆえに声が聞こえるが、姿がまったく見えない鳥なのだ。正直、私は見たことさえない。というか、見ることをもはや諦めている。
「えー、ウグイス、すぐそこで鳴いてるやん」
「だから、出てこないんだって。絶対撮れないよ」
そんな会話をして、私はちょっと用事があったので出掛けていった。
そして帰ってきたら、兄が私のカメラを持ってやってきた。
「鳥、撮れたよ」
カメラを受け取り、私は画像を確認してみた。兄が撮った鳥、どうせヒヨドリだろうと思いながら見てみたら、そこには木の枝にとまる地味な色の小鳥が写っていた。
灰色がかってくすんだ緑色の羽。顔のほうを拡大すると、目の上に白い眉毛のような模様がある。
これは……。
「ホーホケキョって、鳴いてた?」
「鳴いてた」
ま・さ・か!!
「ウグイスやん! すごいやんっ!」
兄いわく、家の窓から外を見ていたら、枝にとまって鳴いているウグイスを見つけたらしい。かなり遠くから撮ったらしいが、その姿をしっかりと捉えることができている。
「ウグイス……、開けた場所に出てくることあるんだ……」
私はすっかり動揺していた。そして悔しさを噛み締めていた。ウグイスなんて絶対に見られないと思っていたのに、兄が見つけてしまうとは。やはり決めつけはよくない。これからは先入観に囚われず、鳴き声がしたらウグイスの姿をちゃんと探そうと思ったのだった。
追伸
兄が撮ったウグイスがこちら。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1519235147232555009
ちなみに、以前私が撮ったメジロがこちら。ウグイスと勘違いされる鳥です。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1519243329619210240
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます