第26話 遠回りをしてみたら。(ハヤブサ)

 今回は通常運転。晴れたので、いつものコースへ一人でバードウォッチングに行ってきた。


 最近の田んぼは賑やかだ。農家さんがやってきて、トラクターで田んぼを耕している。すでに水の張られた田んぼもある。もうじき田植えの時期になるだろう。


 田んぼには、カラスやサギたちが集まって、エサを探す姿をよく見るようになった。田んぼを耕しているトラクターの後ろへついていくカラスもいる。耕されて出てきた虫を狙っているのだろう。


 ツグミやノスリなどの冬鳥はすっかり見なくなってしまった。みんな北のほうへ旅立ってしまったのだろうか。一方、ツバメが空を飛ぶ姿をよく見るようになった。いよいよ夏鳥がやってくる季節だ。今季はどんな夏鳥に会えるだろうか。


 そんなことを思いながら、田んぼ道を歩き、川縁までやってきた。いつもはここで左に曲がって川沿いを進むのだが、今回は気分で右に曲がることにした。右に曲がるといつもより遠回りになるのだが、時間があるからじっくり鳥を見ようと思った。


 しばらく歩いていくと、田んぼのほうで何羽かのアオサギに出会ったり、川のほうでダイサギに出会ったり、上空を舞うトビに出会ったりした。


「今日はチョウゲンボウ、いないのかな?」


 なんて思いながら、ふと空を見上げた時、一羽の鳥がこちらへ近づいてくるのが見えた。


「あれは、カラス……?」


 一瞬、カラスかと思った。けど、なんだか翼がシュッとしている。シュッとしている! もしかして、猛禽!?


「ハヤブサだ!」


 直感でそう思い、私は慌ててカメラを向けた。


 しかし、飛んでいく鳥は速い。すぐに私の頭上を通り過ぎた。振り返って、カメラに鳥をなんとか捉えてズームする。その間に鳥は方向転換して、林の上空へ飛んで行ってしまった。


 シャッターを押せたのは一度だけ。私はすぐさま、撮った画像を確認してみた。


 残念ながら、画像はピントがあっておらず、少しぼけていた。けれども、鳥の姿は捉えられている。


 シュッとした鋭い形の翼。黄色いくちばしや足。目の下にある黒いモミアゲのような模様。


「やっぱり、たぶんハヤブサだ!」


 ここで少し、ハヤブサについて書いてみようと思う。


 ハヤブサはハヤブサもくの鳥で、チョウゲンボウも同じ仲間に属している。実は、オオタカやトビなどのタカもくとは違う種類。どちらも猛禽類ではあるが、分類上は遠縁らしい。遺伝子の研究によると、ハヤブサはインコ類と近縁になるそうだ。


 おもに海岸の岩棚などに棲んでいて、上空から獲物に向かって猛スピードで突っ込んで仕留める狩りが知られている。時速は300kmにもなるのだとか。最近は、都会のビルを崖に見立てて暮らしているという話も聞く。


 私が住んでいる町でも生息しているという話を知り合いから聞いたことがあったが、まさかいつものバードウォッチングコースで見られるとは思っていなかった。気分を変えてちょっと遠回りして、正解な一日だった。


 ……それにしても、ピントがズレたぁ。悔しい。次こそは絶対にキレイに撮ってやるっ!

 

 帰り道、初めて出会ったハヤブサに興奮しつつ、悔しさを噛み締めていた私だった。



追伸

その時に撮ったハヤブサがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1517417288458113025

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