第18話 鳥の合唱

 昨日はバードウォッチングへ出掛けて、鳥成分を十分チャージしたから、今日は家でのんびり作品を書いていよう。


 あっ、その前に洗濯しないとなー。


 そう思い、外へ出て洗濯を干していた時だった。


 ツーピーツーピー。

 ヒーヨヒーヨ。


「…………」


 ツーピーツーピー。

 ヒーヨヒーヨ。

 ギー、ギー。

 ジュリジュリ。


「…………」


 ツーピーツーピー。

 ヒーヨヒーヨ。

 ギー、ギー。

 ジュリジュリ。

 キョッ、キョッ。

 ホーホケキョッ。


「……ちょっと待ってろ、お前ら! 今、撮りにいくからな!」


 近所のやぶから聞こえてくる鳥たちの声に我慢できず、家に戻ってカメラを引っつかんで外へ飛びだしたのだった。


 前回のヤマガラとシジュウカラの話でも書いたが、最近鳥たちが活発にさえずっている。恋の季節が来たのだろうか。私にとっては、鳥の存在を知ることができる重要な手がかりとなっている。


 カメラを持った私は、早速、庭に出てバードウォッチングを始めてみた。


 ツーピーツーピー。


 あれはシジュウカラだな。結構遠い。やぶの向こう側にいるみたいだ。


 ヒーヨヒーヨ。


 あれはヒヨドリ。あっちのツバキの木にいるみたいだ。


 ギー、ギー。


 あれはコゲラか。あっちのスギの木あたりにいそうな気がする。


 ジュリジュリ。


 あれはエナガ。たぶんあの木あたりをうろちょろしている。


 キョッ、キョッ。


 あれはたぶんシロハラ。どっか下のほうにいるんだろうな。


 ホーホケキョッ。


 ウグイスの声もした。たぶんあそこのやぶの中にいる。


 ビービー、ジュククク。


 今度はヤマガラの声がした。たぶん家の向こう側にいる。


 キリキリキリ。


 次はカワラヒワの声。あっ、上空を飛んでいった。


 ピロピロピロピロピロ……。


 おぉ、今季初めのヒバリの声だ! スギの向こう側で鳴いているらしい。


 チッ、チッ、チッ。


 えっ、この声なに!? どこにいる!?


 ……と、一度にいろんな角度からいろんな声が聞こえるものだから、私はカメラを降ろして、思わず笑ってしまった。


「どこを見ていいのか、全然わからん!」


 右からエナガの声が聞こえるからしばらく待っていようかなと思っていたら、左からヤマガラの声が聞こえて、頭上からカワラヒワの声が聞こえて、その他いろいろな場所から声が聞こえるものだから、てんやわんやになってしまった。


 目で観察できた鳥は、シジュウカラとエナガとシロハラだけで、結局この日は、残念ながら良い画像が撮れなかった。


 それでも、家の周りでたくさんの鳥の声を聴けて、楽しいバードウォッチング、いや、バードリスニングができた。


 鳥の鳴き声を覚えれば、いろんな場所で鳥の存在に気づくことができて、鳥探しにもとても役立つ。


 私は昔、鳥の鳴き声CDというものを買って、それを聴きながら鳴き声を必死に覚えようとしたことがあった。でも、一番覚えやすいのは、やはり外へ出て、実際の鳥が鳴いている姿を聴くことだろうと今は思っている。最近は、ネットで調べれば、鳥の鳴く動画や音声がたくさん出てくるので、観察した鳥をあとで調べて、鳴き声を確認するのも良いと思う。


 ただ、鳥の鳴き声を覚えて、困ったことがひとつ。


「今日のエッセイは、リラックス音楽を聴きながら書こう」


 そう思い、動画サイトで森の中にいるような良い感じの音楽を流して、作業をしようと思ったのだが……。


「んっ!? さっき鳥が鳴いたよね! この声なに!? どこで録ったの!? だれか教えてーっ!」


 と、癒やしの音楽のはずなのに、鳥の声が気になって全然癒やされず集中もできないのであった。

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