第17話 木のてっぺんにいた!(オオタカほか)
「ふむふむ。タカの仲間はよく、木のてっぺんなどの高いところにとまってじっとしています。双眼鏡などでよく探してみましょう。……か。ふむふむふむ」
とある鳥の本にそんなことが書かれていた。
いつも行くバードウォッチングコースは、左手側に田んぼが広がっていて、右手側に川が流れている。その川の向こう側はスギ林になっている。もしかしたら、スギのてっぺんになにかとまっているかもしれない。
期待を胸に秘めて、最近私は、いつものバードウォッチングコースへ行くと、スギのてっぺんになにかとまっていないだろうかと気を付けながら見回していた。
そんなある日、それは前回書いたシジュウカラが撮れた後のことだった。
いつものバードウォッチングコースへ行くと、その日はなんだか様子が違った。
まず最初に、田んぼの上でノスリに出会えた。しかも二羽。争っているようには見えず、仲良さそうに二羽で弧を描きながら飛んでいた。もしかしてつがいだったのだろうか。上空を二羽のタカが飛び回る光景に、私はカメラを構えるのも忘れて、しばらく見入っていた。
それから先に行こうとした時、今度は地面スレスレを低空飛行する猛禽類を見つけた。なんとかカメラに収めることができたが、いまだになんの鳥かわからない。タカっぽいのだが、わからない……。もしもわかる方いらっしゃいましたら、教えてください。
さて、ここからいよいよ、川と田んぼにはさまれた野道を歩く。田んぼを見たり、川を見たり、その向こう側にあるスギ林を見たりしながら歩いていた。
ふと、私は足を止めた。右斜め前方にあるスギのてっぺん辺りに、なにやら白いものが見えた。
「もしや、あれは鳥か!?」
私はカメラを構えて、その白いものに向かってズームしてみた。正直この時は、お試し感覚だった。たぶん後ろの木が映っているか、枝にビニール袋っぽいものが引っかかっているんじゃないかと疑っていた。
しかし、カメラの画面に映されたものを見て、私は胸が高鳴るのを感じた。
それは、明らかに生きていた。生き物だった。鳥だった!
鋭いくちばし、うっすらと青みがかった灰色の翼、黄色い目、目の上にある白い眉毛のような模様。
以前に私が書いていた大長編『バードボーイズウォッチング~鳥男子たちの恩返し~』にも、擬人化したキャラクターが出てくる。あの時に、図鑑を食い入るように見ながら作ったキャラなのだから、見間違えるはずがない。
私が会いたいと思っていたトップ3に入る鳥!
「オオタカが、なんでこんなところに!?」
心の中で歓声を上げながら、私はカメラのシャッターを切った。
オオタカはおもに林や森の中に棲んでいる鳥。以前は絶滅の危機があるほど数が少なくなっていたそうだが、保護や保全の成果があってか、最近は都会でも見られるようになってきたという。
ただ、私の地元にいるとは思っていなかった。もっと山の中にいると思っていて、ここでは会えないだろうとずっと思っていた。
それが今、目の前にいる。目を疑いたくなるほどに、目の前にいる!
数回シャッターを切ってから、私はカメラを離して、リュックから双眼鏡を取り出した。
もっと大きな姿でオオタカを見たい。この目で、くっきりとはっきりと、オオタカを観察したい。欲に囚われながら双眼鏡を向けたのだったが、それがいけなかった。
オオタカはさすがに気に障ったのか、サッと飛び立ち、無言で林の向こう側へ飛んで行ってしまった。
私はただ、オオタカの飛んでいったほうを見ながら、しばし呆然となった。
心の中は複雑だった。オオタカに出会えたうれしさ。夢を見ていたのではないかという疑念。双眼鏡向けなきゃよかったという後悔。もっと見ていたかったという欲望。そして、またいつか出会いたいという希望。
さまざまな感情が一気に押し寄せてきて、私はしばらくその場を動けなかった。歩き出した後も、何度もオオタカがいた場所を振り返った。
一羽の鳥で、こんなにも心を動かされることがあるとは。
オオタカ。また、会いたいなぁ。そう思いながら、今日も木のてっぺんを見つめるのだった。
追伸
その時に撮ったオオタカを近況ノートに載せています。
https://kakuyomu.jp/users/miyakusa/news/16816927861502685123
名前がわからない鳥はこちら。わかる人いたら教えてください。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1502253957992751108
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