第16話 ツーピーツーピー(シジュウカラほか)
三月に入ってから、朝起きると、この声が聞こえるようになった。
ツーピーツーピー。
シジュウカラの声である。
シジュウカラはスズメと同じくらいの大きさの小鳥で、頭が黒く、ほおが白色、翼は灰色っぽくて、胸は白くて喉から腹にかけて黒い模様がある。まるでネクタイをしているように見えるのが特徴である。一見すると地味っぽい鳥に見えるが、背中はうっすらと黄緑がかっていてきれいなポイントだ。
一年中見られる留鳥なのだが、冬はどこにいっていたのか、姿も見えず声も聞こえなかった。ところが、春先になって、急に「ツーピーツーピー」と声を聞くようになった。
この「ツーピーツーピー」は、シジュウカラのさえずりである。さえずりはオスがするもので、縄張りを主張したり、メスを誘ったりする声だそうだ。
おそらく、家の近くに縄張りのあるオスが鳴いているのだろう。恋の季節が来ているのかもしれない。
さて、そんな家の周りで鳴いているシジュウカラ。もちろん、撮りに行きたかった。ただ、問題があった。
シジュウカラ、鳴くのがいつも、隣の家のそばなのだ!
うぅ~ん、お隣さんの家からシジュウカラの声がする。撮りに行きたい。でも、お隣さんの家の前でカメラを構えるのはさすがにまずい。うちの庭に来ないかな? 来てくれ! 来てくれ、シジュウカラー!
と、首からカメラをぶらさげて、家の角からチラチラとお隣さんの方向を窺う怪しい人がそこにいた。
そして、念願の出会いは、突然にやってきたのである!
ビービー、ジュククク。
「今のは、ヤマガラの声!?」
ある日、バードウォッチングに出掛けようと外へ出た私は、ヤマガラの声を聞いた。
ヤマガラはシジュウカラと同じ仲間で、お腹がオレンジ色をしているのが特徴である。
私はさっそく声のしたほうへと行ってみた。しばらく探していると、見つけた。高い木の上で鳴きながら飛び回っているヤマガラがいた。
「首が、痛い……。しかも逆光……」
などと嘆きつつ、顔を上に向けながらカメラを構えてシャッターを切る。ヤマガラは飛んでいき、今度は我が家の庭のほうへ行ってしまった。
私はそれを追いかけて、来た道を引き返した。しかし、ヤマガラの姿はもうどこにもいない。しばらく待っていたが、声も聞こえなくなってしまった。
「さて、いつものバードウォッチングコースに行こうか」
そう思って、庭を出て歩き出した時、そばにあった茂みから、なにかが飛びだしてきた。
「あれは……シジュウカラ!?」
なんと、あれだけ声を頼りに探していたシジュウカラが、無言で目の前の木に止まっているではないか!
私は急いでカメラを向け、シャッターを切った。シジュウカラはしばらく木の周りをうろちょろしてから、飛び立って行ってしまった。
シジュウカラ、鳴かないと本当に存在に気づくことができない。もしかして冬も近くにいたかもしれないが、鳴かないからわからなかった。改めて、鳴き声の大切さを知ったのだった。
追伸
その時に撮ったヤマガラがこちら。「うぉおおおー!!」って叫んでいます。逆光なうえにタイミングが悪くて……。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1501829949937704963
シジュウカラがこちら。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1501473552255492102
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