第13話 オスとメスの違い(イソヒヨドリ)

 鳥の中には、オスとメスで姿が異なるしゅがいる。もちろん、姿が同じ種もいる。


 例えば、スズメやカラスは、オスもメスも姿がほとんど同じである。


 一方、キジやオシドリのように、オスとメスで姿が明らかに異なるものもいる。


 実はカワセミも、オスとメスで違いがある。オスのくちばしは真っ黒で、メスのくちばしは下のほうが赤くなっている。くちばしを見れば、雌雄を見わけることができるのだ。


 タカの仲間は、オスもメスも姿がほとんど同じだが、一般的にオスよりもメスのほうが体が大きい。例えば、オオタカはオスがハシボソガラスくらいの大きさに対して、メスは一回り大きくハシブトガラスほどの大きさがあるらしい。私は実際に見たことはないのだが、並ぶとその違いがよくわかるそうだ。


 さて、今回紹介するのは、オスとメスで姿が違う鳥――イソヒヨドリである。


 よく晴れた日に、いつものバードウォッチングコースを歩いていた時、川沿いの木の枝に一羽の鳥がとまっていた。


「イソピーのメスだー!」


 「イソピー」とは、イソヒヨドリの愛称である。私が勝手に付けた。一般的に言われているかはわからない。


 イソヒヨドリのメスは、全体的に灰褐色をしていて、うろこのような模様がある。ぱっと見、灰色でかなり地味な鳥である。けれども観察していると、お尻をヒコヒコと上げたり降ろしたりする。とてもかわいらしい仕草をするのだ。


 イソヒヨドリのメスと別れて、しばらく歩いていくと、今度は道路の脇にあるくいのそばで鳥を見つけた。


「イソピーのオスだー!」


 イソヒヨドリのオスは、全体的に青色でお腹がオレンジ色をしている。メスと異なり、鮮やかな姿である。カメラを向けてしばらく観察していたが、イソヒヨドリのオスはボーッと杭の上にとまっていた。


 私の主観なのだが、イソヒヨドリのオスとメスは行動がちょっと違うように見える。メスは地面をうろうろしてお尻をヒコヒコ動かしているのをよく見るのだが、オスは屋根や杭の上などの高いところに止まっている姿をよく見る。あくまで私の観察してきた範囲内での推察なのだが、雌雄で行動の違いがあるのだろうか。


 ちなみに、イソヒヨドリという名前は、磯でよく見られるヒヨドリに似た鳥という意味だそうだ。姿こそ似てはいるが、ヒヨドリとイソヒヨドリは分類上違う鳥になっている。ヒヨドリがスズメ目ヒヨドリ科なのに対し、イソヒヨドリはスズメ目ヒタキ科。夏の森で美しくさえずるオオルリやキビタキの親戚である。


 だからだろうか、イソヒヨドリは美声の持ち主だ。きれいな鳥のさえずりが聞こえるなーと思って外へ出てみれば、屋根の上でイソヒヨドリが鳴いていたということもあった。


 もともとの生息場所は磯の近くのようだが、最近は街中でも見かけることが増えたという。私がいつも観察している場所も磯から離れているが、イソヒヨドリがよく見られる。


 もうイソでもヒヨドリでもないじゃん! ……と言いたくなるが、イソヒヨドリはイソヒヨドリである。


「あっ、イソピーだー!」


 そして今日も、私はイソヒヨドリのオスもメスも愛でるのであった。



追伸

イソヒヨドリのメスがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1492108066317160448

イソヒヨドリのオスがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1492108512842846209

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