第64話 ニートの決意
僕は合流場所へと急いだ。その場所とはニートザワールドの「冒険者ギルド」だ。
ここまでは普通のニートモと何ら変わりはない。ただの冒険者なのだ。
更衣室で「ローグ」の装備と、愛用の「神々の(ジャッジメント)ツインダガー」を手にした。
「行きましょう」
アカバネの声に僕は頷いた。彼女もまた【ダークナイト】の装備を一式身に着けている。伝説のドラゴンを一緒に狩ったのは、ほんの一週間前だ。
町の外へ出ると一目散にフィールドを駆けた。まず目指す場所は、パピヨンの住む居城。
「どうしてそこに行くの?」
走りながら僕は訊いた。雨粒が僕の口の中に潜り込んで来ようとする。雨は夜になっても止まなかった。そういう予報だったから別に驚きはしない。
「ニートザワールドに入るにはウェアラブルジャケットとアーム端末を身に付けなくてはならない。それは同時に、施設側へ私たちの位置情報を教えることに繋がるの」
「知ってるよ」
「私たちの位置を悟られないようにするためには一度、どこかでウェアラブル装備を脱ぐ必要がある」
「そっか、パーティーメンバーであるパピヨンの城に、僕らが長居している体(てい)を装うわけだ」
「ええ」
アカバネが走りながら銀髪を掻き上げる。
「でも、どうして雨の日なの? やっぱり僕らの動きを悟られないため?」
道中に出現する映像の乱れたモンスターをダガーで瞬殺しながら、僕はアカバネに訊いた。
「その理由はパピヨンの城で説明するわ」
パピヨンの城という単語で僕はドキッとした。またあの気味悪い死霊系のモンスターが出てくるのかと思うとゾッとした。
「やっぱり、パピヨンの城って……出るよね?」
「出るって何が?」
アカバネが走りながら訊いてきたが、「ゴメン、やっぱ何でもない」ととぼけたフリをした。
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パピヨンの円塔城塞は全ての階で煌々と明かりが点いていた。これから夜通しで仲間たちと楽しいひと時を過ごすのだという、フェイクのように思われた。
「やっときたわね変態仮面」
と両手を腰に付けながらパピヨンが玄関先で出迎えてくれた。
先にアカバネが入ると僕もあとに続こうとしたが、やはり腰が引けた。ゾンビはもう御免だった。
「何してんのよ!」
パピヨンが両頬を膨らます。僕は周囲をじろりと見渡した。
「もうモンスターは出現しないわよ」
「てか、何でこの城にモンスターを出現させるようにしたんだ?」
僕は以前の仕打ちに何だか腹が立ってそう言った。
「決まってるじゃない。アッシュクロウをこの城に近づけさせないためよ」
「アッシュクロウを?」
訳が分からなかった。統治者であるアッシュクロウなら、どこでも出入りできるはずだ。それをどうしてモンスターを配置することで、この場所から遠ざけることに繋がるのだ。
「その訳もあとで話す」
アカバネが代わりに答えた。
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