第9話 お互いの想い〜距離感〜

ある日の事。


「悠斗君」

「えっ!?…あれ…?…君は…」

「ごめ~ん。先回りしちゃった♪」



合コンの後だった。


俺のマンションの建物の前に、合コンの席にいた女性がいた。



「何か用ですか?」

「ねえ、部屋にあがりたいな〜」


「えっ!?…部屋…ですか…?えっと…それは…ちょっと…」


「え〜っ!私、マンションまで足を運んで来たのに?」


「すみません…それに、俺、休日出勤なので明日早いんですよ」


「そう?オールでいける若さなんだし問題ないでしょう?」


「困ります!帰って貰って良いですか?」

「え〜っ、やだ〜。ねえ…お願い♪」



そう言うと彼女は、俺の眼鏡を外した。



「やっぱり!眼鏡の下、気になっていたんだ〜。思った通り、イケメンだ♪」



「………………」



「眼鏡、返して貰って良いですか?」

「部屋に入れてくれたらね」



「………………」



俺は、部屋に入れるしかなかった。




「何か飲みますか?」

「いらない。そんな事よりも…」



彼女は、俺にキスをした。


男慣れしていると思った瞬間だった。


ベッドに押し倒される。



「ちょ、ちょっと…ま、待っ…」


再びキスをされた。



「初めてじゃないんだろうし」



俺は彼女を押し退け、逆に押さえ付けた。


彼女は余裕で、俺を求め始める。



「早くしよう♪」


「無理!!」


「えっ?ちょ、ちょっと…」


「俺、全然、その気ねーし!そういう行為目的だったら帰れよ!つーか、俺がマジ(本気)で怒る前に帰ってくんね?」


「え〜、怒った悠斗君も見てみたいし、あなたの事、知りたいな〜♪」




バッと離れる俺。



「ふざけんなっ!とっとと帰れよ!つーかさー、俺、男が好きでさ〜」


「えっ…?」


「女の子の扱い慣れてなくて。男装してくれる?」


「えっ…!?じょ、冗談…か、帰る!お邪魔しましたっ!」




彼女は、慌てて部屋を出て行った。



「んなわけねーだろ!バーカ!ノーマルだし!…つーか、男装する〜とか言ってきたら…逃げられなかったよな…」




その直後だ。



俺の部屋を誰かがノックした。



「えっ!?まさか戻って来た?」



カチャ


ドアを開けると



「藍里ぃっ!?」



意外な訪問客だった。




「ご、ごめん…ちょっと気になって…女の子が慌てて出て行った所に遭遇しちゃって…」


「あー…別に大丈夫だから心配する事はないから。じゃあ」


「ほ、本当に?」


「本当。つーか、キスはされたけど、それ以上は何も…」



「………………」



「えっ?何?その反応って俺、疑ってんの?もしくは、彼女に対する心配?」


「…いや…えっと…」


「何?言いたい事あるなら言えば!?」


俺はちょっと強めで言ってしまった。



ビクッ

彼女は一瞬、ビビった様子を見せ、恐怖の眼差しで見た事に気付いた。



「…あ、ごめん…」


近付こうとする俺に彼女の距離が離れた。



マズイ!


明らかにビビらせてしまった。



「藍里…?」


「ご、ごめんなさい…」



彼女は一瞬、涙目になり、自分の部屋に足早に戻って行った。



「………………」


「今の…絶対…嫌われた?」




俺は一瞬にして


彼女との距離感が出来た事を感じた。






私は正直怖いと思った瞬間だった。


でも彼は間違っていない


嘘をついている様子じゃない


そう思ったものの


私の心は


距離をあけてしまった…









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