第7話 彼女の想い

「藍里」

「あれ?倫歌」



仕事終了後、私の前に現れた倫歌。



「ねえ、今日、この後、予定ある?」

「ううん。別にこれといってはないけど」

「良かったー。ねえ、付き合って!」

「合コン?」


「違う、違う。ほら、以前、一緒に飲んだ人達いたじゃん?荘深 正弥君と、久陵 悠斗君」


「あー」


「一緒に食事しないかって話してて、この前の友達連れておいでって」


「そうなんだ」




「もち行くよね?私、あんたの職場まで足を運んで来たんだからねー。それに、前に話していた。良いな〜って思っている彼がいるし…前の合コンの時以来、ある日、偶々、合コンの席で、また再会しちゃって…」


「へえー」


「その相手が、正弥君なんだけど…」




《一瞬、悠斗って言われてるかと思った》




「付き合ってくれるよね?」


「分かった」





私達は目的地に向かう。


倫歌は、実は恋愛奥手で、好きな人には、緊張してうまく想いを伝えきれなくて、話もうまく出来ない女の子。


それで、結構、誤解受けたりして…


倫歌には、きっと引っ張ってくれて、自分の意見や話を聞いてくれる相手が良いんじゃないかな?


女の子って恋する時とか、恋している時は少女のような純粋な女の子になるから。


だけど、年を重ねるごとに、純粋さが薄れていく。


違う?




そして、合流し、私達は楽しい時間を過ごす。




その日の帰り、悠斗と帰っている時の事だ。




「あ〜〜〜、飲み過ぎたかな?」

「今日、悠斗、ペース早かったからね」

「でしょ、でしょ?」

「何かあった?」

「話したら慰めてくれる?」


「えっ?」


「な〜んて」

「…いいよ。慰めてあげる」


「えっ?マジ?」


「うん…私が出来る事は、それぐらいでしょう?」


「…実はさ…」




私は悠斗から話を聞いた。


仕事で失敗したみたいで……




「どんな慰め方が良い?」

「ぎゅうっと抱きしめて♪」

「えっ!?だ、抱きしめるの!?」

「うん♪」

「…あ、後でしてあげる」

「えええっ!!慰めてあげるって言ったじゃーーん」「あっ…いや…それは…そうだけど…でも…ここは外だし…」



「じゃあ、部屋に戻って抱きしめるなら、俺、サービス良いから俺が満足するサービスしちゃうよ♪」


「それ…意味違う…」

「えっ?何、何?どんなサービスだと思ってんの?」

「えっ…!?あ、いや…それは…」

「藍里ちゃんのエッチ〜」

「だ、だって…!」


「…でも…つまり、それって…受け入れてくれてるって事だよな」


「えっ?」


「距離が縮んだ気がするのも、そう感じてるのは俺だけ?」


「それは…どうかな…?」


「えっ!?まだ縮んでない感じ?名前呼び捨てあってタメ口なのに?あ〜…表面的なものか…」


「えっ?」


「心が縮んでないのか…」


「悠斗?」


「藍里、男の人が苦手だし、まだ完璧じゃねーよな?自分の中でも良く分からない感じ?」


「それは…」





完璧って?


私の中では



どれくらいの


距離感


縮んでいるのだろう?



私が思う


距離感って?



好きになった瞬間?


それとも


男と女の関係になって


深い仲になった瞬間?





頭をポンとされる。



ドキン…

胸が小さく跳ねる。




「難しく考えなくて良いから。焦らなくて良い。ゆっくり自分と向き合って答え見付ければ良いから」




次の瞬間、抱きしめられた。




「えっ?」


「隙あり!」


「ええっ!!」


「藍里、後で、ぎゅうっと抱きしめ返して♪」




そう言うと、パッと離れ、私の手を握る。




ドキン

胸が小さく跳ねる。




「帰ろう。藍里。まあ、帰っているんだけど」


「う、うん…そうだね」






繋がれた手から感じる体温が


とても温かくて


すごく心地よくて


私の心を


温めてくれる



ねえ……



私が


あなたの事を


好きになれた時



その瞬間―トキ―が


私のかけがえのない人になる


瞬間(しゅんかん)なのかな?



あなたの


傍にいたい



あなたに


傍にいてほしい



その想いが


私の


私達の


恋の運命を


恋の歯車を


動かしてくれる


瞬間(しゅんかん)なのかもしれない―――








































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る