第2話 住人

「あ〜〜〜眠い…」



私は眠い目をこすり、ごみ捨てに行く。




「おはようございます」と、男の人。




ビクッ


驚く私。




「お、おはよう…ございます…」





《同じマンションの…住人…》



苦手意識のある私だけど、彼には嫌な感覚はなかった。


親しみやすい笑顔で私に挨拶をしてくれたからだろうか?



私達は、すぐに別れた。






数日後―――――




「藍里ーー」



名前を呼ばれ視線の先には、

親友の、南夏松 倫歌(ながまつ りんか)がいた。



「あれ?どうしたの?」


「ちょっと外周りで近くまで来たから立ち寄った。ねえ、今夜、空いてる?」


「うん、大丈夫だよ」


「そう?じゃあ待ち合わせしない?」


「待ち合わせ?」


「うん、ごはんでもどう?」


「いいよ!」


「じゃあ、仕事終わり次第、お互い連絡し合うという事でどう?」


「うん、分かった!」


「じゃあ、後でね!」


「うん、後で!」



私達は別れた。



その日の仕事終了後、私は倫歌に連絡をした。


待ち合わせ場所が書かれたメールが入ってきた。


私は目的地に向かった。


食事後。




「ねえ、藍里、あれから男出来た?」


「まさか!」


「そうか…。実は、今度合コンの予定があるんだ。参加しない?」


「…えっ!?…あ、でも…私は…」


「勿論、藍里が、男の人に対する苦手意識があったりして、色々事情があるのは分かるよ。それを踏まえた上で頼んでるの!お願い!」



「………………」



「…無理だよ…辞めておく…ごめん…」


「…藍里…」





そんなある日の休日の事だった。


私の部屋のインターホンが鳴った。



「はーい」



カチャ


ドアを開けた玄関先には




「藍里」


「あれ?倫歌、どうしたの?」


「急で申し訳ないんだけど、ちょっと付き合って欲しいの!お願い!」


「別に用事がないから良いけど、すぐに準備する。とりあえず、部屋であがって待ってて」


「うん」




私は準備をする。



そして、準備が済み次第私達は出掛けた。





「ごめんね」


「ううん、別に良いけど」



私は倫歌に付き合う。


その日の夕方を過ぎた頃。



「藍里、もう少し良い?」


「うん」





そして、向かった先は、お洒落な居酒屋さん。


とあるテーブルに案内された。


既に、何人かの先客がいる。




「倫歌…ちょっと待って!まさか…これって…合コンなんじゃ…」




両手を合わせる倫歌。



「ごめんっ!許してっ!」

「…帰る!」

「藍里っ!待って!」

「無理だよ!ごめん…倫歌…」



帰り始める私を必死に止める倫歌。



「お願いっ!だって、藍里、こうでもしなきゃ絶対参加しないじゃん!」


「騙してまで私を参加させるなんて酷いよ!」


「だから謝ってるじゃん!」




その時だ。



「あれ〜?どうかした感じ?」




同じ席の合コン参加者と思われる相手の2人の男の人達が来たようだ。


そのうち一人は、眼鏡を掛けている男の人。


何となく記憶にある人だ。



「…帰るんですか?」



眼鏡の男の人が尋ねた。



「…か、帰ります!失礼します!」




グイッと引き止められる。



ビクッ



「………………」



「は、離して…下さい…」



掴んでいないもう1つの手で頭を軽くポンとされた。



ビクッ


「…大丈夫…何もしないから…せっかく来たんだから楽しみましょう!」



「………………」



眼鏡を掛けた男の人は、私の手を掴んだまま、合コンの席に移動する。



「すみません。相談なんですけど、彼女、俺の隣で良いですか?」


「えっ…?」と、私。


「ちょっと事情があるみたいで」


「事情?」と、参加者達。


「俺の勘違いだったらすみません。もしかして…君…男の人…苦手じゃないですか?」




眼鏡を掛けた男の人は、私に尋ねた。



「…それは…」


「色々聞いたり検索はしない約束で。勿論、皆さんもそれを約束した上で…どうでしょう?」


「まあ、帰られるよりは…なあ」と、男の人。


「確かに」と、別の男の人。


「うん、分かった。せっかく来たんだし一緒に飲もう!」


と、女の人。




私達は合コンを始め、


私は、彼・久陵 悠斗(くりょう ゆうと)さん。22歳のおかげで楽しい時間を過ごせた。




その日の帰り。




「すみません、○○町まで!」



男の人と同時に言う。



「あっ!」



そこには眼鏡を掛けている彼、久陵さんの姿。



「お先に、どうぞ!俺は別のタクシーで帰りますから」


「い、いいえ…。良かったら…一緒に…」


「えっ?」


「お礼を兼ねて…」




私達は一緒のタクシーに乗り込む。




「今日は…すみません…。ありがとうございます」


「いいえ。少しは楽しめましたか?」


「…はい…」


「そう?まあ、相変わらず、大人しめだったけど…一体…君の過去に何があったの?」


「えっ…?べ、別にあなたには…」


「あ…すみません。検索したりしない約束でしたね」




「………………」




「だけど…正直、気になるかな…?」


「えっ…?」


「…また再会する、しないにしろ…この先、俺の中で何処か引っ掛かってくる気がするのは…気のせいじゃないと思います。2回目の再会という事は…何かしらの理由があるから引き寄せられたんじゃないかと俺は思います」




「………………」




「まあ、俺の勝手な思い過ごしかもしれないですけど」



「………………」



「君は…一体…何を秘めてるの?」


「…私…今まで付き合った相手に…暴力振るわれたんです……」


「…えっ…!?」


「…だから…」


「それが真実なら、君、一生恋愛出来ないし、結婚すら無理なんじゃね?」




ドキッ


彼の違う話し方に胸が大きく跳ねる。




「えっ…?あの…」

「あっ!悪い!本性出た!」




彼は申し訳なさそうに苦笑しながら片手で謝る。


そして眼鏡を外す。




ドキン…


私の胸が大きく跳ねた。




《…えっ…?これだけカッコイイ人なのに、どうして眼鏡…?》


《必要なくない?》



「あ、あの…眼鏡…」


「えっ?」


「それだけ申し分ない容姿に眼鏡…必要…なんですか?目、悪いんですか?」


「あー、これダテ眼鏡だから」


「ダテ…ですか…?」


「そう!掛けてみる?」




ドキン…

ニコッと優しく微笑む笑顔に胸が跳ねる。



「い、いいえ…」





久陵さんは、親しみやすい笑顔でクスクス笑う。



「今日の合コン、友達(だち)に連れられて参加したんだ。強制っつーの?マジ参ってさ〜。でも…また君に逢えた。今日は君の過去聞けて、ラッキーみたいな?俺、強運の持ち主かも?」



私はクスッと笑みがこぼれる。



「あっ!笑ってくれた♪!可愛いじゃん!元々、可愛いんだし、勿体無いよ」


「…じゃあ…あなたが私の笑顔…取り戻したら?」


「えっ?」


「なーんて…嘘。きっと私は心を開かないから…あなたが言うように…男の人に対する苦手意識を克服しない限り…私は恋愛も結婚も無理だから…すみません。ここで良いです!それじゃ」




タクシーを停め、私はタクシーを降り始める。


グイッと引き止められた。


ビクッ



「えっ…?」


「試してみる価値あるかも?」


「久陵…さん…?」




そして、久陵さんもタクシーを降り代金を払う。




「久陵さん…あの…それより代金…半分…」


「良いよ」


「でも…ていうか…どうして降りたんですか?」


「えっ?いや…俺も、ここのマンションの住人だし」


「えっ!?」


「俺達、運命だったりして!」



無邪気な笑顔で言う彼に胸が跳ねる。



「えっ!?…いや…多分…それは違うかと…」


「そう?じゃあ、俺はコンビニに行くから」


「…はい…」




私達は別れた。






















































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