真面目な彼だけど…

ハル

第1話 真面目な彼

私、朝乃 藍里(あさの あいり)。20歳。OL。




「藍里ちゃん、ちょっと今日付き合ってくれない?」




同じ職場の先輩。


河奈盛 弥砂都(かなもり みさと)さん。25歳。



「付き合う?何にですか?」

「行っての、お楽しみ♪」

「えっ?」

「ともかく、今日の予定とか都合とかどう?」

「全然、大丈夫ですよ」


「じゃあ、決定ね」

「えっ!?決定…ですか…?」

「じゃあ、後程」

「えっ!?せ、先輩!?」



先輩は去って行く。



「私…行くって…言ってないんだけど…」




その日の仕事終了後、私は先輩に連れられるまま後をついて行くと――――




「…先輩…あの…これって…もしかして……合…コン……?」


「ピンポーーン!」


「いや…私…こういう場の雰囲気馴染めないし向いてないので帰らせ…て…」




グイッと引き止めズイッと顔を近づけスーッと糸のように目を細める至近距離の先輩。


怖すぎる…



「頭数、足りなくなるのよ?」

「…いや…でも…そ、その前に先輩…怖いです…」


「じゃあ、協力してくれるかしら?藍里ちゃん。でないと恨んで祟ってやるから。それともキスが良い?」


「えっ!?ええっ!?こ、困ります!ていうか…その選択肢も…どうかと思いますけど……」


「じゃあ…返事は?勿論、OKよね?」


「わ、分かりました…つ、付き合います…」




明らかに強制参加だ。



「よろしい!」




そして、合コンが開始される。


私は正直、男の人が苦手で、恐怖感があり、うまく会話が出来ない。


そんな中、合コンに参加させられた。


合コンの場、何とか乗り越え、お開きとなり帰る事になる。




「すみません、○○町まで、お願いします」




すると――――




「あっ、運転手さん」



ビクッ


背後から突然の声に驚く。


視線を向けると男の人だ。





「あの……」と、私。


「○○町ですよね?同じ方向だし一石二鳥と言う事で」


と、男の人は言った。




「いや…でも困ります!運転手さん、私、降り…」


「まあまあ」




スッと乗り込む男の人。



ドクン…


恐怖感と苦手意識で私は硬直し、心臓もバクバクだ。




《どうしよう?…至って真面目そうな雰囲気だけど…》





「………………」




「運転手さん、車出して下さい」



タクシーは私達は乗せ走り出した。




「合コン中、何処か表情が曇っていたけど」




《合コン?》

《…そういえばいたっけ?》

《真面目そう雰囲気の人》




「………………」



「過去に何かあった?」

「…べ、別に…あなたには…」

「関係ない。そう言いたいんでしょう?」



「………………」



「わ、分かっているなら…き、聞かないで下さい!むしろ、聞く必要ないかと思いますけど!運転手さん、タクシー停めて下さい!降ります!」



タクシーは停車。


私は反対側のドアから降りる。



「えっ!?ここからじゃ、軽く一時間は掛か……」

「放っておいて下さい!」



男の人が言い終える前に言葉を遮るように私は言った。


足早に去り始める私の後を追うように男の人も降りた。


私は、そうとも知らず帰って行く。




その途中――――




「ねえ、ねえ、彼女ーー」




ビクッ


声を掛けられ、視線の先には車が―――



「こんな時間に一人?家まで送ろうか?」


「い、いいえ…結構です!」




私は足早に去り始める。



「ねえねえ、君、可愛いし、良かったら遊びに行かない?」


「行きませんっ!」



すると車から降りて来る一人の男の人。



グイッと私の手を掴む。




ビクッ


「い、いや!は、離して下さい!」




抵抗する私。





そして―――――





グイッと私の肩を抱き寄せられた。



ビクッ




「なあ、あんたら俺の女に何か用?」


「何だよ。男いんのかよ…!」



彼等は去って行く。


バッと抱き寄せられた体を離す。





「ほら、言わんこっちゃない!」



ドキッ



「…あっ…!」



そこには、眼鏡を掛けた合コンの相手の人だった。





「…あなた…タクシーに…」


「タクシーから降りた女の子を一人、帰らせるわけにはいかないでしょう?」




「………………」




「とにかく帰りましょう!」




私達は歩いて帰ることにした。






 












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