きっかけは突然に


お風呂からあがり寝る準備をしていく。『この生活ってずっと続くんかな。話し合いした方がいいとか?やってほしいことはいちいち言わないといけないのかな』いろいろ考えながらドライヤーをかけてこの髪の長さにも嫌気がさしてきた。『髪の毛切りたいな。ショートにしてた頃はドライヤーも楽だったし』幼少期からおばあちゃんに女の子はショートですっきりしときなさい!と男の子にいうようなことを言われていて、肩につくまで伸ばしたことがなかった。付き合っている際に、ゆうから伸ばしてみてほしいと言われたので、人生一度ぐらいと思い伸ばしていた。まだ肩にはつかないがかなりの長さになっていた。『ゆうのために一生懸命しても気づいてくれなかったり、当たり前と思われていたらやる気もなくなっていくな』







         ーおしゃれって誰かのためにするものだよねー




リビングに戻ると携帯でゲームをしているゆうがいた。「ゆう。私もう寝室行くけどどうする?」まだ寝る時間には早いが布団でごろごろしたくなったのでゆうに一応声をかける。「ん?あー先に寝るなら寝てて。」めんどくさかったのかいつものことながら適当に返事をした。「わかった。」もう同じ屋根の下にいるというだけで一緒に住んでるって感覚はこの人とは違うのか寂しさも薄れてきた。布団に寝転がった私は携帯を開きメールを確認した。ラインをするような仲の良い友達はいないので出会い系サイトのメールだ。『返事きてる。〈そこのパンケーキとっても美味しくて、でも一人で行くにはちょっと寂しい喫茶店なんですよね。また仲良くなったら一緒に行きましょう!ごちそうしますよw〉か。本当にいい人だな。この人となら趣味も合って幸せだったんだろうか。』不思議な感覚に陥り、今傷ついた心に優しさが染みる。それと同時にわくわくしたような気持になりゆうを好きになったときの感覚がよみがえった。





         ーだんだん好きになったあの時は幸せだったー





いつの間にか寝ていて気づいたらアラームが鳴っていた。『うーん。もう朝か・・・お弁当作らなきゃ。』重い体を起こしてとりあえずソファに腰を掛ける。『昨日返事したっけ?あっきてる。私したんだ。〈さやさんはお休みの日何をされてるんですか?〉か、たわいのない会話だけどもう休みの日が当たり前にゆうがいるからゆうとはこんな会話しないな。バイトがない日になにするか聞いても来ないし』メールをするたびにゆうとの一緒にいる楽しさが薄れているからこれで大丈夫なのか不安になってきた。『お弁当は今日はいつものでいいか。卵焼きとほうれん草と・・・・』寝起きで頭が回らないので返信は後にして洗面所にむかった。いつもの朝なのにメールが来てて嬉しいという気持ちと、このままゆうといるのがいいことなのか、今更実家には戻れないしというネガティブな気持ちで交差していた。こんな気持でもゆうのためにお弁当を作る私は、やっぱりゆうのことが好きなんだろうと思うことにした。





   



             ー気持ちがぐちゃぐちゃー




ゆうを送り出してバイトの準備をした後、行くまでに少し時間があったので先ほどの返信を考えることにした。『えっと、〈休みの日はインドアなので本読んだりとかつまらないですよwってこれも前話しましたよね。きいさんはお出かけしたりするんですか?〉でいいかな。』私は免許はあるが車がないので普段は自転車移動だ。なのでゆうが休みの日じゃないと遠くにはいけない。よって自転車で休みの日に遠くに行ってなにかするだけのやる気がないので家で本を読むことが多い。『さて、バイト行くかな』携帯をカバンにしまい玄関を出てバイトに向かった。「おはようございます。」バイトに入った私は今日も忙しいランチどきを裁くために気合を入れて仕事に向かった。この時だけは家のことを考えなくてよく、お金を稼ぎ社会と関わっているという感覚が得られるので仕事は好きだ。『本当は就職出来たらいいけど一回躓くとなかなか次に迎えないな』





           ー女でもなく家政婦でもない仕事ー





仕事も終わり夕飯の買い出しに向かう。「お疲れさまでした。お先に失礼します。」挨拶をして自転車置き場に向かった。乗る前に携帯を確認すると、彼から返信が来ていた。『あっ返信きてる。いいねもいっぱい来てるな。〈俺は休みの日は出かけることもありますが家にいることが多いかもしれないですね。本は読みませんけどゲームしたりとか。〉ゲームか、ここは趣味が違うな。ゆうもゲームするし男性はゲームするもんなのかな』返信は家に帰ってからにしようと自転車に乗ってスーパーへ向かった。『今日は夕飯何にするかな。餃子とかでいいかな』考えながら走らせて必要な材料を考える。毎日毎日ご飯のことを考えて料理してたお母さんはすごいなと感心しながら、それにかなり甘えていた自分がいたことに少し後悔した。1人暮らしではご飯が優先されなかったし、自分だけなので凝ったものはたまにしかしなかった。しかし、人と暮らすとそうはいかず、やはり時間がある人がする傾向にあるので必然的に私がすることになる。







            ー美味しいっていってくれたらー








帰宅して、ゆうが帰ってくるであろう時間を逆算し、ゆっくりできる時間を考える。『ゆうは18時過ぎだから今は17時30分。あーゆっくりしてる時間ないわ』考えた結果、夕飯の準備をしないと間に合わないことが分かった。とりあえず返信するだけしようと携帯を開く。『えっとなんだけっけ。休みの日にすること、〈ゲームされるんですね。私はしないわけではないんですがほとんどしないのでよくわからないですね。出かけるんだったらやはり喫茶店とかに出かけることが多いですか?〉でいいかな。』返信をすませキッチンに立ち餃子づくりを開始した。『餃子はキャベツを切って肉と混ぜて、餃子だけじゃ足りないよね。ご飯は白ご飯がいいからお味噌汁とナムルでもするかな。』実家ではメインがあって副菜がちょっとある感じだったのだが、一人暮らしで、メインがあればある程度いいなと思ってしまっていた私はあまり副菜のレパートリーがない。料理の勉強でもすればいいんだろうが、そこまでのやる気を持ち合わせていないのと、食わず嫌いが邪魔をしてなかなか作るまでに至らない。






              ー便利道具があってくれたならー







料理をしながらゆうとの関係についてまた考えていた。『遠距離の時は毎日メールして電話して、寝落ちしてってやってたけど今は会話という会話もない気がするな。ゲームばっかしてるし。メールはあの彼だけだ』同棲してもうすぐ5ヶ月になろうとしているが、最初の頃は喧嘩が絶えず、今はそこまでしないにしても会話がない。成井家はみんな話す人ってわけではないのだが、誰かが話してて笑いが絶えない楽しい家族だ。一方辻井家は、食事中は黙食だがそのほかは誰かがずーっと話している。それで笑いが起きることはあまりないが、静かなのは夕飯の時だけかもしれない。ゆうと話したいと思って話しかけても聞いてないのでだんだん私も話さなくなってしまった。ゆうは話したいことがあれば話すんだが、なにもないと自分のことをしていることが多い。考えるとなんて自分勝手なんだと思わざる終えない状況だ。『このままだとだめだけど、話し合いをして解決するものなんだろうか。これはお互いの気持ちの問題というか。私がもっと努力したらいいのか?』こういう時にすべてをゆうのせいにできず自分が変わればいいと思ってしまうことがゆうを甘やかしていることにつながっているのかもしれない。







             ーゆうのこと好きなんだよねー







夕飯を作り終わったころ玄関が開く音がしてゆうが帰ってきた。「ただいまー疲れた。」今日も疲れたといっている。「おかえり。お疲れさま」私もいつもの挨拶を交わす。「今日飲みに誘われたからちょっといってくるよ」突然のことに私はフリーズしていた。「えっ?今から?夕飯出来てるんだけど。」今出来上がった夕飯を指さしどうするのかと問い詰めた。「あーごめん急だったからさ。明日の朝でも食べるし冷蔵庫いれといて。」早く出なければいけないからかそそくさとシャワーにいった。『信じられない。暖かい夕飯をと思って休憩もせずに作ったのに、まさか明日食べるなんて。』怒りと絶望といろいろな感情が沸き上がったが、もう飲みに行ってしまうことは変わらない。『なんでメールの1つもできなかったのかな。会社で誘われただろうに帰りにメールしてくれたら』何を言っても目の前の餃子はもう食べてもらえないのだが、何とも言えない気持ちに文句を言うしか落ち着くことができなかった。







           ーこれが後の事件のきっかけになるー






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ただの主婦だけど一生女 プリミエール @rila9ma

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