悪魔のささやき

お昼を食べ終えてから掃除機をかけたり、洗面所を綺麗にしたり掃除に集中した。気づけば2時間ぐらいたっていて少し休憩するためにおやつを物色した。『んーチョコとスナックしかないな。気分じゃないから珈琲だけにするかな。』珈琲を入れて落ちるのを待つ間、今から読みたい本を探す。『今日はこないだの続きのミステリー本を読むか、ちょっとファンタジーの本を読むかどうするかな。』私は本が大好きで毎月2冊は買っている。本棚には自分が好きな本だけが並び綺麗に整頓されていた。『よし、ミステリーにしよう。珈琲を飲みながら休憩だ』落ちた珈琲に牛乳を入れてカフェオレにし休憩を始めた。




            ー1時間後あたりは暗くなってきたー





薄暗くなった空が読書の終了をお知らせした。『もう17時か、ゆうが帰ってくるから夕飯考えないと。そおいえば携帯見てなかったな。返信きてるか・・・・』本を閉じてソファーから立ち上がり携帯を探す。いろんな場所に置く癖があり、常に携帯を持っているわけではないのでよくなくす。『ありゃ、どこいった?キッチン・・・・じゃない。寝室・・・・もない。えーどこ。』朝ソファーで触ったはずなのにリビングにもない。思い返しても朝の返信の光景しか浮かばないのでしらみつぶしに探すしかない。洗面所、玄関、机の下、ソファーの下、どこを探しても見当たらない。『はぁ。どこ行った。自分のことなのにこんなに探してもないのなんで。カバンか?』クローゼットに投げていたカバンを確認すると携帯が見つかった。『えーなんでカバンに入れたんだろう。出かけてないし朝触ったのに自分が謎だわ。』なぜそこに入れたのか見当もつかなかったが、とりあえず返信がきていないか確認した。『あっきてる。〈甘いもの好きなんですね。美味しいパンケーキが食べれる雰囲気の良い喫茶店があるんですが一緒にいかがですか?お時間あればご一緒したいです。〉ってもうお誘いになってる。』急なお誘いのメールに戸惑い、会ってはいけないのに心のどこかで会いたいという気持ちがある自分もいた。








           ー会ってどうするの・・・・ー




返信に困りこのまま考えていてもしばらくは答えが出ないと思ったので、キッチンにたち夕飯の準備をすることにした。冷蔵庫を確認し今日のメニューを考えていく。『今日は鶏肉があるから、唐揚げとかかな。とお味噌汁とサラダとで足りるよね。』本日のメニューを決定してまずはメインの唐揚げづくりに取り掛かる。料理をしながら考えるのは先ほどのお誘いの件だ。出会い系サイトは独り身で出会いを求めてる人が出会うサイトなので、私みたいに彼氏、婚約者がいる人が本来いるべき場所ではない。ちょっとメールして楽しい話をしてストレスを発散しようと思っていた私は、会うつもりは一切なかった。なので断ればいい話なのだろうが、揺らいでいる自分がいて正直驚いた。相手はイケメンで丁寧な文章できっといい人だ。趣味も合いそうだしきっと会ったら楽しいだろう。ただ会うということは男女として会うということになる。私は間違った道へと行っている気がした。『よくないよね。ちゃんと断らないと。メールだけで終わるって思ってたしさすがに道を踏み外すのはリスクもある。』






           ー悪魔のささやきに乗らない方がいいー






唐揚げをつけ置きしながらサラダの用意をしていく。あとはゆうが帰るのを見計らって揚げてお味噌を入れるだけだ。『さっきの返事、なんて返そうかな。〈急なお誘いありがたいのですが、人見知りなのと急に会うのはどうかなと思うのでもう少しメールでお願いしたいです。〉こんな感じ?でもなんかいずれ会いたいって言ってるような気がするけどいっか。』会う気はないがあまり無下に断れずやんわりとお断りメールをした。そうこうしているうちに階段を昇る音がしたのできっとゆうがかえってきたのだろう。「ただいまー、疲れた。シャワー浴びてくるわ。」この一文は毎日の定型文なのか平日の仕事帰りはいつも言っている。「おかえり。お疲れ様。じゃあご飯仕上げていくね。」置きっぱなしの鞄をもってゆうを追いかける。「今日の夕飯はなに?」着替えを持ちながら洗面所に向かう。「今日はからあげ。今から揚げるね。」私たちは終始簡単なコミュニケーションを動きながらしていた。






                ーこれは会話なのか?ー




ゆうがシャワーを浴びている間に漬け込んだ唐揚げを揚げる。『当たり前に夕飯があって当たり前に出てくると思ってるから今日の夕飯はなに?とか聞けるんだろうな』最近ゆうと一緒にいると不満や不安などのネガティブなことしか浮かばなくなった気がする。きゃぴきゃぴした同棲。一緒にずっといれる幸せを味わえると思っていた学生終了間近。母の反対も押切、ほぼ駆け落ち同然で家を出てきた私の覚悟は若さがあったからできたことだと思う。結婚への夢と好きな人とずっと一緒に入れる幸せを想像していた。しかし、今は毎日同じように生活をして、家事と仕事をこなす日々。ゆうの家族と一生懸命コミュニケーションをとる努力をし、女としても頑張っているつもりだ。気づいたら夜の営みもなくレスになり、それを打ち明け話し合いをしようと思うと傷つけられた。『あっち』考え事をしながら揚げていたら油が跳ねて手についてしまった。現実に引き戻された私はいい感じに揚がった唐揚げをもってテーブルに運んだ。






               ー最近は現実逃避ばかりー




がっちゃん。お風呂から上がる音が聞こえたのでお味噌汁も味噌をいれて仕上げる。「ゆう!ドレッシングはなにがいい?」ドア越しに叫んで今日のドレッシングを聞く。「うーん、ごまで!」返事が返ってきたので、サラダも冷蔵庫からだしてドレッシングをかける。先にかけとかないとゆうはあほみたいにかけてしまう。七味やからし、わさびなどなどの調味料を私からしたら驚くほどかけるので付き合いたてのときはドン引きした。「おぉ。うまそう。ビールとってー。」テーブルにつき特に何も準備することなく要求だけをしてきた。「自分でとってもらってもいいですかね。今お味噌汁を準備してるので。」お味噌をとかし沸かさないように火を見ていたので要求には応じれない。「えーいいじゃんとってよ。それ終わってからでいいよ。」ゆうは座って立つのを面倒がってかすぐじゃなくていいから取ってほしいようだ。「これが終わったらね。」こういうところで甘やかしてしまうのでいつまでたっても理不尽に要求されてしまうのだろうか。





             ーまだ20代前半で母親子持ち?ー




ある程度、夕飯の準備が整ったのでビールをもって席につく。「やっときたー。いただきます。」無意識なのか今の私には嫌味に聞こえた。「いただきます。」私も夕飯にありつく。夕飯を食べながらテレビを見て二人には特に会話はない。私の家では黙食が当たり前で、テレビもついていなかった。逆にゆうの方はテレビがついて会話もずっとしている。こんなにも同じ人間で環境が違うのかと驚いたが、二人の時は間を取っているかのようにテレビはついて会話はない。ふと先ほどのメールが気になり横目を気にしながら確認した。『あっ来てる。〈いえいえ、急にお誘いしてしまってすいません。つい美味しいパンケーキをさやさんに食べてほしくなってしまって。お気を悪くされたのでしたら謝ります。〉ものすごく丁寧だけどなんだか私の方が悪いことをしてしまった気分だな』ふっと笑ってしまい思わず声が出たことに驚き横を見たが全く気付いていない様子で安心した。返信をいまするのはまずいと思い夕飯に戻る。





      ー隠すのは決して後ろめたいと思っているからではないー






夕飯を終えて食器をシンクに運び水につけていく。「今日はどうだった?唐揚げ、片栗粉だったんだけど。」普段は小麦粉を使うのだが、片栗粉だとサクサクになるとネットで見たので実践してみた。「ん?美味しかったよ。」話を聞いているのか聞いていないのかそれ以上の答えは返ってこなかった。『どう美味しかったのかいってほしいのにな。』食器をすぐに洗いたいがなんとなくやる気が出なかったのでソファーにつくことにした。『さっきの返事なんて返そうかな。返し方がわからないな。〈こちらこそ驚いただけなのでそこまで謝罪していただかなくでも大丈夫ですよ。パンケーキは確かに気になりますしね。〉とかでいいかな。』目の前にゆうがいたがテレビに夢中で私がいるとか気にしていないようだったので、返事を返して少し楽しい気持ちになって、途中の小説を手に取り読み始めた。2~3ページ読み進めた時に現実に引き戻されていることに気づく。「さや!聞いてる?明日は仕事?」ゆうが私を下から覗き込み読んで質問をしていた。「あっ。ごめんなに?」小説を読むとその世界に入り込みものすごい集中力で読んでしまうので、ゆうの問いに全く気付かなった。「だから、明日は仕事?」ゆうは同じ質問を少し苛立ちながら問いかけてきた。「仕事だけどなんで?夜じゃないからゆうが帰るまでには家にいるよ。」基本的に夜はシフトに入らず、入る場合はきちんとゆうに許可をとっていた。「明日残業で遅くなりそうだから夕飯は20時とかになりそうだからよろしく。」自分の要件を言い終わるとまたテレビを見るために視線をテレビに向けた。「わかった。」





       ーえっ?その要件今言わなきゃいけなかったのか?ー




私は少し疑問に思いつつも考えるのも面倒になり小説を閉じてお風呂に向かった。













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