久しぶりのレモン味


今日も仕事は忙しかった。いつも通りの朝を迎え私は仕事に向かった。「いらっしゃいませ。お持ち帰りですか?店内でお召し上がりですか?」仕事にも慣れてきてレジができるようになったのでお客様と接する機会も増えた。日数も多く時間も長いので覚えるのも早かったと思う。まだ結婚はしていないので、父の扶養に入れてもらっている形になる。扶養を超えて働くことも考えたが、そこまで稼げる自身もなかったので扶養内で働くことにしていた。月にマックスまで働いて引き落としや生活費をのけると手元に残るのは1万円ぐらいになる。それを化粧水などの美容にあてたり、自分のおやつを買ったりして貯金はなかなかできなかった。

「お疲れさまでした。お先に失礼します。」残業もなく無事に仕事を終えてまたワンパターンの生活に戻っていく。



          ー今日も夕飯作って食べて寝るだけー




帰宅した私は仕事中開いてなかった携帯を確認した。『ん?このマークなんだ?』携帯の通知に今まで見たことないマークがあった。開いて確認すると昨日勢いで登録した出会い系サイトの通知だった。『あーこのマーク出会い系のか。通知切っとかないとゆうに見つかったら言い訳できないな。』通知の内容を確認する前に通知を着るために設定画面を開きオフにした。通知の内容は私をいいと思ってくれた男性が〈いいね〉をしてくれていたものとお知らせだった。いいねをしてくれた男性を確認していくと、いろいろなタイプの顔の男性がいた。『うーん、あんまりタイプの人がいないし加工してる人も多いな。ちゃんと顔がわかるような写真の人も結構少ないんだな。』一通りいいねをしてくれた人を確認し、私もいいねと思う人を探していく。いいねは30人ぐらいきていて残り10枚になったときいいなと思う一枚の写真に目が留まった。『あっこの人かっこいいかも。プロフィールもいい感じだしいいね返ししてみようかな。』その人は爽やかなでも男らしい一面もありそうな私のタイプだった。私はいいねを返し残りの人はごめんなさいをして携帯を閉じて夕飯の準備を始めるためにキッチンに向かった。




           ーこれが女としていい選択だったのかー




世間の女性はいつも集まるとこんな話題を議題に上がる。

「浮気はどこからなのか」

100人いたら100違う意見があるだろうがたいていの人は似たようなことを言っている気がする。



          ーやったら浮気、気持ちがいったら浮気ー



許せる、許せないは別として、この議題があがっているときは男性の行動がどうなのかが重要な話になる。

あるひとは「もう黙って女性と二人でごはんとかに行ったら浮気でしょ」

あるひとは「体の関係をもったら浮気だよ」

いろいろあるがきっと自分の彼氏はそんなことしないよという仮定のもと話しているから実際されたらきっと反応は変わってくるのだ。例えば彼氏の愚痴の話になったときに、後輩の可愛い女の子がボディタッチをしてきてにやついてるのを目撃してむかついた。これは浮気の部類に入らないのだろうが、二人で連絡を取り合ってるのを数日後に見てしまった彼女は、以前体の関係をもったら浮気だと言っていたが、自分の立場になった瞬間に連絡を取り合っているだけで大喧嘩をし、別れの危機をむかえたらしい。私からするとこれはもう浮気になるのではないかと思ったが女性間の自分の意見は気を付けないといじめられる原因になるので自分の胸にしまって黙っていた。

それぞれの浮気のラインがあるが。。。。







           ー私の場合はどこからなんだろうー





どんどんどんどん。階段を上がる音がして玄関の鍵を開ける音がした。

「ただいまー。今日も暑かったね。」カバンを置いてシャワーを浴びるために着替えを取りに行った。「おかえり。暑かったね。夕飯準備終わるからシャワー終わったら食べよう。」私は置かれたカバンを移動するためにゆうを追いかけて話しかけた。なぜ玄関にカバンを置いたままにするのか謎なのだが、何度いっても改善しないので私が持っていく。「うん。今日の夕飯は何?」着替えをもってお風呂場に向かう。「ハヤシライス。」素っ気ない二人の会話は熟年の夫婦みたいな感じに思えた。キッチンに戻りサラダの準備に戻った。シャワーの音がしている。サラダは盛り付けるだけだったので、ゆうがあがってくるまでテレビを見て待つことにした。携帯を確認すると先ほどのアプリを開き反応がないか確認した。通知を切っているので開くしかない。『あっさっきの人マッチングしてる。メッセージもきてる!〈いいねありがとうございます。よろしくお願いします。〉テンプレートかな』定型文の挨拶がきていたので私も定型文で挨拶を返すことにした。〈こちらこそいいねありがとうございます。っよろしくお願いします。〉メッセージを返した後、またいいねがきていたので確認したが、特にいい人はいなかったのでいいねは返さなかった。





          ーなんだか彼以外の男性と会話久しぶりー





シャワーからあがってきた音が聞こえてきたのでキッチンに戻り夕飯をテーブルに並べていく。今日の夕飯は、ハヤシライスとサラダとインスタントのコーンスープだ。ハヤシライスは牛肉を使うので普段はあまりメニューにはでない。「いい匂い。おっ今日はハヤシライス!!牛肉だよね?」ゆうはこういう一言が多い。「牛肉だよ。セール品で安かったから今日はハヤシライスにした。サラダはドレッシングゴマでいい?」お肉はセール品を買うようにして、その日のメニューに使い使わなかった分はその日のうちに冷凍するようにしていた。「ゴマで!いただきまーす」ゆうは相変わらず私を待つことなく食事を始めた。「はい、ゴマ。いただきます。」もうそんなことに文句を言うのもめんどくさくなり私も気にせずに久しぶりの牛肉を楽しむことにした。






          ーいつもの夕飯、いつもの光景ー



夕飯を終え食器を片付ける。料理が苦手な理由は食器を片付けたりするのが面倒だということもある。ゆうがやってくれたらいいのだが、任せるとやるまで時間がかかるしやっても周りがびちゃびちゃになるので任せるのをためらってしまう。そうやって自分がやってしまうからいつの間にか全部私がするというゆうの甘えにつながってしまったのかもしれない。「さやー、お茶とって。」食器を片付けていることはわかっているはずなのに自分の要求を言ってくる。「食器片づけてるからそれが終わったらね、待てないなら自分で取って。」食器の片づけを終わらせたかったので要求はのめなかった。「えー冷たいな。自分で取るよ。」嫌味を言いながらも自分でお茶を取りにきた。私たちまだ一緒に住んで4ヶ月なのにもう何年も一緒にいたかのような、結婚してるような雰囲気だった。「たまには食器を片付けてくれてもいいんだよ。買い物に料理までしてるんだから。」やってほしいのでこちらも要求してみた。「うん、またやるよ。」案の定嫌だったのかお茶を取ってさっさとリビングに戻っていった。





            ー私は家政婦じゃないってのー



片付けも終わりお風呂に入る準備をする。「今日は湯舟沸かすからゆっくり入るね」いつもシャワーだけでお風呂に入るのが面倒なのだが、湯舟は好きで毎日はお金がかかるのでためない湯舟を今日はためることにした。「わかった。ごゆっくり。」ゆうは湯舟を好まないので入ることはほぼない。普段は本を持っていくが今日は携帯を持ち込みお風呂に向かった。シャワーを浴びて湯舟につかり携帯を開くと例のアプリを確認した。『えっと、なになに〈こちらこそよろしくお願いします。なんてお呼びしたらいいですか?〉か。うーんこういうのって本名でもいいのかな?』悩んだ末本名でいくことにした。ひらがなでいけばばれても言い訳がきくと思いひらがなで自分の名前を送る。〈名前はさやというのでどんなふうでも呼んでください。あなたはなんて呼んだらいいですか?〉文章を打ち込み返信をする。『ふー。なんか何でもない会話だけどちょっと楽しいかも。』この後どうするかなんて考えていないが、ゆう以外の男性と会話するというのがちょっと楽しかった。仕事場で男性と話すこともあるが、それとは違うなんだか甘酸っぱい気持ちだった。






              ーまだ知らないー

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