深海の探索


またいつもの朝が来てしまった。なにも変わらない朝で晴れてて夏の晴天という天気なのに、私の気持ちは大雨警報が出ていた。それでも体はルーティンをこなすためにキッチンに立ち彼のお弁当を作り始める。

「ふわぁ。おはよ。今日も暑くていい天気で嫌になるね。」ゆうは外での現場作業の仕事のため天気がいいのを皮肉っていた。「おはよう。今日もいい天気だから汗だくになるしちゃんと水分補給しなきゃだね。」熱中症になると困るのでお弁当と一緒に塩タブレットをいれる。もちろんお弁当が傷んではいけないので保冷材も入れて保冷が保たれる弁当バックに詰めてゆうに渡す。「ありがとう。冷たいお弁当って食欲そそらないよな。保温のお弁当箱だとやっぱ腐るのかな?」朝から文句ばかり言っているがお弁当があるだけいいと思ってほしいものだ。「どうだろうね、おかずは難しいかもしれないね。車内にお弁当箱置きっぱなしだろうし夏場は冷たい弁当は我慢だね。」朝ごはんも完成したのでテーブルに並べて食べるように促す。




           ー本当に何もしないのに文句はいっちょ前ー




ゆうも仕事に出かけ私も仕事は昼前からなので朝ごはんを食べて家事を終わらせていく。一通り終えて自分の準備を終えたころ時計を確認すると出発まで30分あったのでタブレットでネットサーフィンをしていた。

『あっこれよく見る出会い系サイトだ。私たちもSNSの出会いだしこういうので最近は出会い探すんだろうな』パズルゲームをしていたら広告で出てくる出会い系サイトが気になった。ゆうと出会ったのもSNSで周りには友達の紹介と言っている。大学の頃のクズの彼氏に懲りたはずなのになぜか寂しくて彼氏がほしく、とはいえ大学では女性が多く出会えないのでSNSで待っていたら釣れたのがゆうだった。当時はタイプでもなく付き合う気もなかったのだが、猛烈なアピールに押し負けて付き合うことになった。その後なんとなく続き結婚を見据えて同棲を開始したのだ。付き合っている間は遠距離だったので2ヶ月に1度会えればいい方だった。ほとんどゆうが来てくれていたが、旅行もしょっちゅうしていた。引きこもりだった私は見たことない景色に興奮して楽しい気持ちでいっぱいだった。




         ー後にこれが私を苦しめることになるとはー




仕事に向かう時間が来たので自転車乗り場へ向かった。今日も熱烈に暑く仕事に着くまでに汗をかきそうだった。

仕事中もいろいろ考えてしまいぼーっとテーブルを拭いていたりしていた。大きなミスをしなかったのが奇跡だ。仕事中もそんなことばかり考えてしまうなんて重症だなと思い仕事の終わりが近づいてきた頃には帰宅したらゆうに話そうって決心をしていた。

『今日は金曜日で明日も休みだし話す時間はあるんだからモヤモヤしてても解決しないしすみれのいう通り話し合うしかないよね。』

お誘いに誘惑は失敗したので恥ずかしさはもうない。

とりあえず夕飯の買い出しをして夜の自由時間までは集中して目の前のことをやることにした。



          ーこれでなんとか解決してくれたらー



私の初めては今の彼氏ゆうだ!と脳内では記憶していることにしている。クズ彼氏が初めてなんて忘れたかったからだ。そもそもそこまでしたいと思うほど性欲は強くない方だと思っているのだが、女性として愛されてるという確認だと認識しているのでないのは寂しい。同棲する前の遠距離の頃は会うたびにしていたし、ゆうが友達と来た時でさえお風呂に一緒に入りしていた。ちなみにお友達は爆睡していたので一緒にお風呂に入ったことさえ知らなかったらしい。1人暮らしのお風呂はお湯が溜まった分だけ使える使用だったので一緒に入ったんだねと言ってくれる寛大なお友達だった。それが一緒に住んでゆうとはもう4ヶ月していない。スキンシップもあまりないので結婚はしていないが「家族」になってしまったんだろうか。




        ー家族になっても女性でありたいー



帰宅して夕飯の準備を終えてゆうの帰りを待つ。その間変に緊張していてモヤモヤした気持ちがふわふわした気持ちになった。

「ただいまー今日も暑かったし疲れた。」今日も疲れたの一言を言いながら靴を脱いでそのまま洗面所に向かう。「お疲れ様。夕飯出来てるから。」お出迎えをしたが間に合わず置きっぱなしのカバンをリビングに移動した。そんな私の問いかけには

答えることなくシャワーを浴びる音がした。『また着替えもっていってない気がするんだけど何回いったらいいんだろうか。』ため息をついて上がるまでテレビを見ながら待つことにした。「ふーいいシャワーだった。ちょっと失礼。」案の定タオル一枚出てきたゆうはリビングを通過して着替えを取りに行った。「いい加減さ、何回言ったらきちんと着替えて出てこれるの?恥ずかしくないの?」もう怒るというよりは呆れ果てていた私は怒鳴ることはしなかった。「うーんごめん、次から気を付けるよ。」きっと反省していないんだろうなという謝罪を受けて仕方がないので夕飯を温めにキッチンに移動した。






         ーこんなデリカシーないのにしたいのか?ー




夕飯を食べ終え食器を片付けながらゆうとの話し合いのために頭の中で整理した。

『ゆうがなぜ夜の営みをしないのか。したくないのかできないのか。この点を聞いて返答によってまた考えて・・・・・』一通り片づけを終えたのでリビングにいるゆうのもとへ行き話のタイミングをうかがう。

「あのさ、ちょっと相談というか聞きたいことがあるんだけ。」私は緊張の面持ちでテレビを見ていたゆうに話しかけた。

「ん?なに?」テレビを見たまま私の方には向かずに返事をしたゆうは真剣な話だとは思っていないようだ。

「同棲して4ヶ月経つけどさ、その・・・・最近一度も夜の営みをしていないのはなんでなんだろうなと思って。ほら!こないだ誘った時も断られたし、したくない理由でもあるのかと思って。」下を向いてもじもじとしながら少し恥ずかしい気持ちになっていたがなんとか言いたいことは言えた。

「えっ?そうかな。誘われたっけ?てかそんなにしてなかったかな。」まさかそんな話を私がすると思っていなかったのか、驚いた様子でこちらをみて少し考えた後ゆうはいったのだ。

「してないし、誘ったのもつい最近だよ。別に頻繁にしたいってわけではないんだけど、ちょっと寂しいというか魅力がなくなったのかなとか思ったりもして。」









          ー寂しく、つらいと思っていたのは私だけー




ゆうにとっては重要なことではなかったのか、していなかったこともわからない状態だった。考えて悩み傷ついていたのは私で、そんなことを勝手にしていたのも私だった。「そっかーそんなにしていないと思ってなかった。新しい職場で仕事に一生懸命だったから疲れてたし、一緒に住んでるんだからいつでもできると思ってしまっていたごめん。」またテレビに視線を戻し少し天を仰ぎながらゆうは他人事のように話した。私もこれ以上はなんとなく話ずらくなりテレビを見て何事もなかったようにした。結局これでさらに傷ついてしまいなぜゆうに話してしまったのか後悔してしまったほどだ。その後テレビを見て会話をせずに時間が過ぎ22時をまわろうとしていたので、お風呂に入ろうと準備をしに立ち上がった。「あっお風呂行く?じゃあ炭酸取って!」立ち上がって和室に移動している背中に聞こえたのはゆうのパシリのお願いだった。「自分で取りなよ。」わざわざとって戻らなきゃいけないので自分で取りに行くよう促した。「いいじゃん立ったんだから。取ってー」意地でも立たないつもりみたいだ。






             ー私のお願いはあまり聞かないのにー



お風呂から上がり寝る準備を終えて布団に向かった。ゆうはというとテレビはついているが見ずに携帯でゲームをしていた。「私は寝るよ。テレビ見てないなら消してね。」一応声をかけた方がいいと思ったので寝ることを伝え和室に向かった。「あいよー。わかった。」こちらを向きもせず適当に返事をする。『はあ。一緒に住むとこうも扱いが変わるの?やっぱり適度な距離がドキドキを生むんだろうか。』なんてことを思いながら布団でタブレットを開き電子書籍を読む。最近は無料で読める電子書籍が充実しているので寝る前に読むことが多い。ある程度読み進めていると眠気が襲ってきたので時間を確認すると1時をまわり日付が変わっていた。『ゆうはまだ来てないのか。先に寝るかな。』横にはまだ来ていないゆうはまだリビングでゲームをしているのか来る気配がないので先に就寝することにした。夢の中に入りそうになった頃、ドアが開く音がしてゆうが入ってきたのがわかった。一度夢から引き戻されたので顔をあげゆうにおやすみの挨拶をしようとした。「ゆう。今来たんだ。おやすみ。」ゆうはこちらに気づいたのか私を確認して布団に入った。「まだ起きてたんだ。おやすみ。」あんな話をしたし明日はお休みなのでもしや・・・・・・





      ーそんな願いもむなしく当たり前にいびきが聞こえてきたー





このままレスが更新されていくのか。



         それは果たしていいのだろうか。



                  女性として綺麗でいる意味とは。




わかっている。それだけが幸せというわけではないということも。

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