歪んだ世界

昔から女性と一緒にいるのが苦手だった。

別に女性が嫌いというわけではなかったが、あの仲間を作って気の合わない人を的にして悪口をいうというのがどうしても受け入れられなかったのである。男性といるほうが楽だったし楽しかった。それが災いして女性陣から疎まれていたこともある。




      ー的になって悪口を言われるほうが楽だったー




私には幼馴染のそして初恋の2つ上のお兄ちゃん的存在がいた。

彼氏としては成就しなかったが、専門学生をしていたころにお兄ちゃんと電車で偶然再会して連絡先交換をしてよく遊んでいた。

「お兄ちゃん、今日はどこいくの?居酒屋って言ってたけど。」車に乗って先に社会人になったお兄ちゃんは居酒屋に向かっていた。「今日は特別な居酒屋に連れて行ってあげるよ。まさかさやが大人の女性になってお酒を飲めるとはね」お酒を飲む話をしていたが、お兄ちゃんはなぜか車を運転していた。「あれ?お酒飲むの?車どうするの?代行でも頼むの?」私は今向かっている居酒屋を考えながら問いかけた。「俺は飲まないよ。明日仕事なんだよ。」お兄ちゃんは残念そうに言っていた。「なら今日じゃなくてもよかったのに。」ちょっと不貞腐れて口をとがらせた。会いたかったが一緒にも飲みたかった。「さやに会いたかったし急な仕事だったからね」





     ーお兄ちゃんはいつも私の欲しい言葉をくれるー





             


大学に進学して一人暮らしをする頃同じ県内だったが、車で1時間ちょっとの場所の距離だったためにお兄ちゃんとは頻繁には会えなくなってしまった。大学の生活にも慣れてきたときゆうと出会ってその冬に付きうことになった。しかし遠距離だったので月1の頻度で会っていた。連絡はまめにしていたがこの時からお兄ちゃんとも連絡をとっていた。

ー今日は23時までバイトだから終わったら連絡するねー

ゆうにはバイトの時は終わる時間を連絡して終わったら帰るまで電話をすることになっていた。

ー了解!がんばってね。気を付けて行くんだよー

メールの返事を確認して私は仕事へ向かった。


仕事は居酒屋で親に内緒でしていた。お酒が出るような夜のバイトはだめだと言われていたが大学に通いながらの昼だけの仕事は難しく、お金も足りなかったので内緒で始めたのだ。夜のバイトは帰りが遅くなるので連絡しながら帰るとゆうに約束をしていた。

「お疲れさまでした。お先に失礼します。」綺麗な店長さんとキッチンの方に挨拶をして帰路につく。「お疲れ様。気をつけて帰ってね」このお店には3人の正社員とオーナーがいてあとはバイトだ。最後に残るのは正社員の方なのでバイトは先に帰る。「さてと、ゆうは起きてるかな。」たまに寝ているゆうは電話をしてもでないこともある。自分で約束させたくせに待てない男だ。「あっでた。バイト終わったよ。」自転車の鍵を外してライトをつけた。「起きてるよ、今日は忙しかった?」今日は出たゆうは眠そうだった。「今日は予約もまあまあだったしそこまで忙しくなかったよ。」自転車を漕ぎながらの電話は危ないのでポケットに入れてイヤフォンをして会話をしていた。「そっかー気を付けて帰るんだよ。」ゆうは話題がないのかそれ以上は何も言ってこなかった。「話すことないのか?なら切るぞ」私はこの何もない電話は苦手だ。「いやいや、俺はさやの話が聞きたいんだよ。」やはり話題がないのだろう。ゆうはいつも話すことがないと私の話が聞きたいと言って人任せにしてくる。




        ー30分の話題のない苦痛な時間の始まりだー




「そおいえば今度お兄ちゃんと食事に行くことになったよ。」仕方がないので話題を提供した。「えっ?あの幼馴染の?夜に飲みに行くとかなの?」ゆうは私を質問攻めにした。「そうだよ。休みの日に遊びに来てくれるんだって。夜というか夕飯を一緒にするって感じかな。」私はお兄ちゃんが家に泊まっていくということは内緒にしていた。「2人で行くのか?」ゆうはさらに質問を重ねる。声は少し怒っているように感じた。「そうだけどなに?」私は疲れと蒸し暑さにやられながら自転車を漕ぎ少しの風に癒される。「そうなん。でも2人で飲みに行くなんてちょっとやだな。」ゆうはやはり怒っているというか不貞腐れていたのだ。「そんなこといったって幼馴染だしね。付き合う前からよく飲みに行ってたし。」暗い裏路地を通っている静かすぎる間少し怒った声が住宅街に響いていた。「わかってるけど。そのお兄ちゃんも飲むんだったら車は?」こういう過剰の干渉は好きじゃないため私はよく思っていないと伝えていたし、ゆうは女性の友達が多かったがそれにとやかく言うことはなかった。「ノンアルで我慢するって言ってたよ」めんどくさくなった私は適当に返した。「そっか。わかった」ゆうも適当な返事をして少しの間の後家に到着したのだった。

「今日もありがとう。おやすみなさい。」「おやすみなさい」2人は険悪な雰囲気で電話を終えた。






            ーちょうど倦怠期の時期だったからー






今日はお兄ちゃんが来る日だ。あれからゆうとはこの話はしていない。しても険悪な雰囲気になるだけだからだ。「今日はどんな服を着ていこうかな。その前に部屋を掃除しなきゃ。」久しぶりに会えるお兄ちゃんに浮足立っていた私は普段苦手な掃除を念入りにしていた。





            ーあわよくば何かあれば面白いー






外は夕暮れになっていた。「そろそろお兄ちゃんが来るから出迎えに行こうかな。」服も可愛くして普段めったにしないメイクも軽くして出迎えに降りた。

「おにいちゃんまだかな。しかし蒸し暑くてせっかくセットした髪もうねりそう。」待っている間もワクワクして仕方がなかった。髪の毛のうねりを気にしながらくるっと一周したその時お兄ちゃんはやってきた。「お待たせ。どこにとめたらいい?」車は泊めて電車で行くことになっていた。「駅に泊めて行こう。明日取りに行かなきゃだけどここのアパートで契約してないから。」助手席に乗って案内をした。「駅はとめていいの?明日取りに行くのは全然いいけど。」お兄ちゃんは車を走らせながら言った。

「大丈夫だよ。電車の時間があと10分後だからちょうどいいね。」電車は田舎なので本数が少ない。逃すと次まで時間が空くのでお兄ちゃんの到着は本当にぴったりだった。






           ー楽しい飲み会はここから始まるー




「美味しかった。おなか一杯だしちょっと飲みすぎた。」今日のお店は私が働いている場所だ。「美味しかったね。俺もおなか一杯。電車まで時間大丈夫?

?」お兄ちゃんは財布をしまいながら時間を気にしているのかもう歩き始めていた。「大丈夫。むしろ終電まで2時間はあるね。」やはり酔っているのか何も可笑しくはないのに笑っていた。「2時間。次の電車は何時かな?」お兄ちゃんはさりげなくいつも道路側を歩いてくれる。「えっと。21時20分かな。」私は携帯の時間を確認して次の電車の時間を伝えた。「じゃああと30分か。少し待つけど駅まで行くか。」私たちは駅まで並んで歩きながらあれだけ居酒屋で話したにも関わらずさらに話していた。




          ー駅についてホームで電車をもつー




電車がついてホームに降りようとしたとふらついた。「あっと、ごめん。やっぱり飲みすぎたかな。」お兄ちゃんはそんな私をすかさず支えてくれた。それは少女漫画の一面を思わせるようだ。「飲みすぎたのか?さやは弱いんやな。」笑いながら掴んだ腕をまだ掴んだままで家路まで歩いた。

「んー私はちょっと酔いを醒ますからシャワーお先にどうぞ。」今日は家に泊まるお兄ちゃんにタオルを渡す。「了解。シャンプーとか適当に使っていい?」受け取りながら寝巻の準備をしていたお兄ちゃんは私にお茶を差し出す。「うん。ありがとう。」もらったお茶を飲みながら私はベッドにダイブした。「上がったよ。タオルありがとう。大丈夫?」タオルで濡れた髪をふきながら出てきたお兄ちゃんにちょっとドキっとした。「うん。だいぶ醒めた。さやもシャワー浴びてこようっと。」お兄ちゃんといるときは自分のことを名前で呼ぶ。昔から自分のことを名前で呼んでいたのだが、中学生の時にキモイと言われて以来仲の良い人の前でしか呼ばなくなった。





        ー初めてのお兄ちゃんとの一夜ー





私はシャワーから上がり軽くスキンケアを終えた後、髪を乾かすためにリビングに戻った。部屋は一人暮らしようで1Kだがリビングは10畳もあり家具家電付の学生には嬉しいアパートだった。しかしユニットバスのためドライヤーはリビングにある。

「お兄ちゃんごめんドライヤーどこにあるか言うの忘れてた。テレビの下にあるから先に乾かして。」そう言いつつ自分でセットしてドライヤーを渡す私は行動と言動があってなさ過ぎてびっくりした。「ありがとう。夏だし長くないからすぐ乾くけどね。」スイッチを入れて乾かし始めたお兄ちゃんの横に座る。「さや、俺終わったからおいで。」呼ばれて振り向いた私は渡されないドライヤーを不思議に見つめながらフリーズした。「ん?どうしたの?さやも乾かすから貸して。」不思議に思いつつ手を差し出しドライヤーを受け取ろうとした。「乾かしてあげるからおいでよ」お兄ちゃんは満面の笑みで私をベットの座っていたところから下ろし自分の足の間に座らせた。「はい?まじ?なんでよ。」照れ隠しをしながら内心嬉しい私はきっと耳まで真っ赤なのがばれないことを願った。





       ー指先から感じるお兄ちゃんの手に心臓が。。。。ー

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