満たされない



ちょっとしたずれの積み重ねが何日も続き、ついに同棲3か月を迎えたころ・・・




             ー『事件』は起きたー




「はあ、こうどうしていつもいつもいつも私が片付けてるの?少しはゆうもやってよ。」私は相変わらずの届かない小言をゆうに言っていた。「うん。わかってる。ごめーん」ゆうはこちらを見向きもせず答えた。

最近はいつもこんな感じだ。お互い育った環境が違いすぎるのか価値観が合わない。食の好みもまるで違えば気になる箇所も違う。

ゆうは両親とも働きに出ていた共働きだ。お互い3交代制で夜勤もあった。にもかかわらずお義母さんが家のことほとんどをしていたらしい。兄妹は3人だが特に『手伝い』はしていなかったとゆうは言っていた。

一方私は母が専業主婦で父は公務員で土日祝休みで家にいた。父は家のことはしていなかったが、私たち姉妹は母から


「女たるもの自分のことは自分でできるようにしなければならない」


と言われよく家事を手伝わされていた。

こういう部分がゆうとの気になる部分のずれにつながったのかもしれない。

「ちょっと!ちゃんとわかってるの?いっつも謝ってるけどできてないし、あと何回言ったらできるのかな?家事もほとんど私がしてるし、確かにバイトで時間に余裕がゆうよりあるから負担的に私が多いのは仕方ないけど、一緒に住む条件として家事は分担にして私は家政婦じゃないよって言ったよね?」今までの鬱憤をゆうに嫌味たらしくぶつけていった。

「わかってるって!俺も俺なりにちゃんとやってるし、慣れない仕事で疲れてるんだからいちいち嫌味でいうなよ。何?生理前?」ゆうは怒りつつも冗談を言ったつもりなのか最後には笑っていた。

「はあ?女性に生理前なの?とか、もしそうだったとしてもデリカシーなさすぎだし、私だって働いて自分の稼ぎできちんと生活費いれてんじゃん。疲れてるのは一緒だと思うんだけど。」





止まらない私たちはその後も嫌味に嫌味を重ねてヒートアップしていった。



「もうしらない!じゃあ自分のことは自分でしてよね!!!!!なにもしないから!」感情が高ぶった私は泣きながらもう冷静にはいられなかった。

「落ち着けって。泣いてもどうにもならないだろ。俺もするから。これでこの話は終わりな。」ゆうはめんどくさくなったのか勝手に話を終わらせた。





     ーこの事件がきっかけか、私たちは『家族』になったー





小さなストレスが溜まり、ついに爆発した後、少し過去のことを思い出し現実逃避していた。






大学の時働いていた場所でナンパされ、高校生のとき以来、男ってめんどくさいと思って告白を受けても付き合うまではいかなかった私は、20歳も過ぎたしそろそろ彼氏欲しいなと思っていたので、付き合うことになった年上の彼氏が


            クズだった



社会人でお金もあり車もあった彼がとても魅力的だったのだが、処女をささげ捨てられたのだ。よくある年上に魅力を感じる高校生みたいなことをして傷心中だった私はSNSで出会ったゆうの優しさに癒され普段なら付き合わないであろう男性に追いかけられる快感が気持ちいいなと思い彼氏となった。現在は旦那だ。

ただゆうは優しすぎたのだ。私はいつも人と違うことを求めていた。

「なにそれー変なの!」など話のきっかけになるような変わったものを収集する癖があったし、漫画や小説も刺激のあるもののほうが好きで、小説はミステリーの猟奇殺人など読んでいた。少し刺激があるほうが楽しく幸福を味わえる体質であった。

ゆうと付き合うのは楽しく平和で安心感があったのだが、一つ物足りないとすれば。



                『セックス』



であった。クズ彼氏との人生初めてのセックスはよく覚えていない。痛かった気がしたが緊張しすぎて記憶に残っていなかった。その後捨てられたのだから本当にノーカウントにしてほしいぐらいだ。




ゆうとの初めては覚えている。



                 『痛かった』





もちろん優しかったんだが痛かったのだ。前回の処女を奪われての捨てられたことがあったので、ゆうには2か月待ってもらった。その間もちろんお泊りなどもしたが手出しはない。きっと相当我慢していたのだから待ちに待った初めてだったんだろうが、もともと女性との経験が少なかったからか。





       ー今思えば下手だったのか相性が悪かったのかー





大学のときの友達、すみれにもよく相談していた。


「ゆうとのセックスって気持ちよくなくてさ、入れるのも痛いしなんでだろう。」今日は鍋パのためにすみれの家にお邪魔していた。

「ん?さやちゃんって入れる前ってどれぐらいしてもらってるの?気持ちよくないってのはそういうこと?」鍋の準備でまな板の上には白菜がのり、心地よい「ザクザク」という音がしていた。

「全部で15分ぐらいかな。短い?」私は経験が少なすぎて標準がわからなかった。すみれも今の彼が初めての人なので経験は豊富ではないのだが、セックスに関して文句の一つきいたことがない。

「みじっか!!それは濡れないから痛くない?入れる前が15分とかじゃなくて?それでも短いと思うけど。」鍋の準備をしていたすみれは驚いたのかこちらを向いて声を荒げていた。

「やっぱり短いの?私どうなのか気になったからAVなるものを見てみたんだけど15分の動画って本番に移行するのが早いよね。こんな工程ないなと思ってたけどでも短くはないと思ってた。」爆弾発言とも思える内容をすみれだからこそ話せていた。

「私でも1時間はするし、入れてから15分って感じだよ。AVは男性が見るものだから本番がはやいって彼氏がいってたよ。ああいうのはドラマと一緒で現実には当てはまらないって。ゆうくんは経験が少ないのかな?」すみれはお鍋の準備に戻っていた。

「そうね。私の前に2人付き合ってたみたいだよ。年下は私が初めてみたい。お姉さま方に可愛がられてたんだろうね」そろそろできる鍋を食べるためのお皿を準備しながらため息をついた。

「まあ確かに経験は多くはない感じだけど単にやり方が下手なのか、さやちゃんとの相性が悪いのかだよね。でも15分は短いよ」笑って話す小っちゃい悪魔はおいしそうな鍋をテーブルに運んでいた。






     ーこのころから道を外れていくフラグが立っていたのかー








話は同棲のころに戻り、私はあの事件以来ゆうのために家事をしていることがばかばかしくなっていた。

「ゆう!靴下丸まったまんまだし、ソファの下にも1足あったよ。この前も言ったんだけど。」洗濯物を回そうとして靴下が丸まっていることに気づいた私はもう呆れた気持ちで一応ゆうに注意を促していた。

「おっと、ごめん。あっ洗濯物まわすならこれもよろしく。」本当に分かったのかわからない感じでさらに洗濯物を増やすゆう。

「今日は成林家に行くんでしょ?どうせ泊まることになるんだろうから早く家事終わらせて出かけよう。」この週末はゆうの実家にお邪魔することになっていた。実家まで40分ぐらいなので月1の頻度でお邪魔しているのだが99%の確率でお泊りになる。成林家は酒飲み一家で、宴会が好きなので私も飲まざる終えなくなる。そのため必然的に泊っていくことになるのだ。ごちそうが食べれるのでそこはいいのだが、野菜がないし、寒い地域特有だからなのか醤油からい料理が多い。お茶を飲まない家族だからお茶もなくて未成年用のコーラか大人用のお酒が常備されている。話の内容も私がするものとはまるで違い私が突っ込みをいれると空気が覚めてしまうのでいつも笑っていることしかできなかった。






  ー私は辻井家との大きな違いに月1の訪問はなかなかハードだったー





ちなみに私の実家にはゆうは帰らない。挨拶もしてないのもあるがそもそも家系が他人との交流を遮断する性格なのだ。おじいちゃんは親戚や友達との交流をとても大切にしている人だったが、お金ありきの付き合いだったため母は心底人との付き合いに不信感を抱き親戚をはじめ友達との付き合いも社交辞令としてしていた。父ももともと社交的なほうではなかったため私は他人との関わり方が下手だった。妹は社交的であったりそうでなかったり今はその話はあとにしよう。

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