第45話 見込み違い ※リカード王子視点

 最近、各地で魔法道具の故障が頻発して問題になっているらしい。原因を調査した結果、とある研究成果が影響していることが分かった。


 その研究では、様々な魔法道具の性能を簡単に上げる方法が開発されていた。その方法を使えば、簡単に性能がアップするそうだ。その代償として、魔法道具の劣化を早めてしまい、故障の原因となるらしい。


 少し前に、宮廷魔法使いが提出した研究成果だ。こんな欠陥があるなんて、報告は無かったはず。既に、この方法は各地に出回っている。新しくて画期的な方法だと、大々的に発表してしまった。


 今になって、こんなにも影響が大きくて酷い欠陥があったなどと、公表することは出来ない。公表すれば、研究成果を発表した俺が国民達に無能だと笑われてしまう。そんなのは嫌だ。


 どうにかして、この問題を穏便に解決することは出来ないだろうか。


 こんな時にナディーンが居てくれたなら。魔法の知識に関して天才的な彼女なら、この問題も解決してくれるはず。


 だが、彼女は居なかった。なぜ、こんな大変な時に奴は居ないんだ!


 ストランド伯爵家に何度も問い合わせてみたが、旅行しているらしい。今は、どこに居るのかも分からない。自分の娘が、今どこに居るのかも把握していないなんて、酷い親だ。


 メイヤに聞いたら、デュラレン王国に居るらしい。だが、それも本当なのかどうか分からない。彼女も彼女で、色々と問題があるから信用できない。


 居場所も知らず、いつ帰ってくるかも分からない。そんな状況たから、ナディーンに頼ることも出来ない。


 仕方なく、宮廷魔法使い達に解決する方法を捻り出すように命令する。彼らの研究成果が原因だから、彼らに責任を取らせるべきだろう。


 今問題になっている研究成果は、かつて宮廷魔法使い筆頭だった男が報告したものだった。あの男の顔は、ハッキリと覚えている。アイツは優秀だと思っていたのに、とんだ詐欺師野郎だった。その男も、今は行方知れずらしい。罰を与えるべき相手が消えてしまったのも問題だ。


 そして、もう一つの大きな問題。アレクグル王国内から、魔法使いが徐々に減っていること。アレクグル王国に居たはずの魔法使い達が、他の国に流出している。


 どうやら彼らは、デュラレン王国に行ったようだ。


 我々の大切な人材を奪い取るなんて。何度も抗議文を送っているが、向こうからの反応はない。最近、魔法技術で振興しているようだから調子に乗っているのだろう。忌々しい。


 魔法技術はアレクグル王国の特色だった。他国に抜きん出て、圧倒的に魔法技術が高かったはずなのに。


 いつの間にか他所で、魔法使いの街だなんて騒がれている。本当に、忌々しい。


 このままでは、アレクグル王国は本当に危ない。それなのに、父上は対策しようとしない。日和見している。問題の大きさを理解していない。


 傾きかけている王国の財政政治体制を、早く立て直さなければならない。そのためには、さっさと王の座を奪って権力を手に入れないと。


 早くしないと、手遅れになる。

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