第46話 思ったよりも退屈な日々 ※妹メイヤ視点
「ねぇねぇ、リカード様! 私、新しいドレスが欲しいの」
「……その話は、また今度にしよう」
「この前も、そう言って買ってくれませんでしたッ! 婚約者を、もっと大事にしてくれないと困ります」
「すまないが、処理しなければならない仕事が残っている。今日は、これで終わりにしよう」
「えっ!?」
久しぶりに2人で、お茶を飲んで楽しく会話していた。しかしリカード様は突然、仕事が残っていると言い残して、部屋から出ていく。
「ちょ! お待ちになって、リカード様!」
私の声も無視して、行ってしまった。
「もうッ!」
なんだか、ちっとも面白くない。
リカード様の婚約者になれたら、全て思い通りになると思ったのに。そんな事は、全然なかった。欲しい物をお願いしても、すぐに却下される。何も買ってくれない。王族とはいえ、意外とケチな人である。
最近のアレクグル王国は、どこも不景気らしい。活気がない。近々行われる予定の私達の結婚式も、かなり地味になると言われていた。
そんなの絶対に許せない。せっかく私が王子様と結婚をするのに、大切な式を節約するなんてあり得ない話だ。
皆に活気がないというのなら、私達の結婚式で楽しませてあげよう。それで活気が戻るはず。
私は頑張って、リカード様と交渉を続ける。とにかく私達の式は、派手に行おうと話し合っていた。絶対に説得して、式を豪華にしてみせる。それが今の、私の一番の目標だった。
だけど、最近のリカード様は酷い。私のお願いを一つも聞いてくれないし、仕事が忙しいとか言って会ってもくれない。今日も久しぶりに会ったのに、そっけない。
もしかしたら、また他所に女を作っている可能性があるわね。
お姉様が彼の浮気を暴露した時に懲りて、全ての関係を精算したとは聞いていた。だけど、また新しい女ができている可能性もある。やっぱり結婚前に浮気するなんて最低な人よね。改めて、しっかり彼の身辺を調べておかないと。
だけど、正直に言うと彼に対する私の好意は、段々と冷めてきていた。前よりも、彼のことを好きだとは思っていない。
私が頑張って、お姉様の部屋に置いてあった研究資料を持っていってあげたのに、全然褒めてくれないし。私の働きを評価して、もっと褒めて欲しいのに。
それから、私のお願いを何も聞いてくれない。結婚したら、もっと聞いてくれなくなりそうで嫌だわ。
リカード様も、最近は私に対する愛情も薄れてきていると肌で感じる。やっぱり、他所に女が出来たのね。そっちに愛情を奪われているのかしら。
そうだとしか、考えられないわ。
まぁでも、浮気されても別にいいわよ。私が欲しいのは、王妃という立場。それを手に入れて、私は優雅で自由に暮らすのだから。
退屈だけど、今は我慢する時なのね。私が王妃になる、その時まで。
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