第44話 暮れゆく王国 ※アレクグル王国民視点
最近、街の雰囲気が不穏だった。そうなった原因は明らかで、日々の生活が苦しくなっているからだろう。
税金が高くなった。これから先、もっと高くなるという噂もある。食べていくのも困難な状況になっている。王族や貴族達は、市民の暮らしに全く興味がないらしい。こんなに苦しいのに考慮されず、税金はどんどん高くなっていく。
このままでは、まともな生活が出来なくなるほど。
そして、仕事も厳しくなった。今までは魔法の道具で対処していた、辛くて苦しい作業を人間がやらなければならなくなった。あちこちで、道具が不具合を起こしているからだ。
道具を修理してくれる魔法使いも、どんどん数が減っているらしい。修理の依頼が殺到して、彼らは逃げ出しそうだ。
修理が間に合わない魔法道具が、どんどん増えている。今までは道具に任せていた部分を、人間が代わりに作業するしかない。仕事の負担が、どんどん増えていく。
頑張って働いても、給金は増えないというのに。そして苦労をして稼いだお金は、税金として持っていかれる。
これじゃあ、街の皆が荒れてしまうのは仕方のないことだろう。街の雰囲気が悪くなるのは、明らかだったのに。この国の王や貴族達は、やはり何も分かっていない。そんな文句を言っても、何も変わらない。
アレクグル王国は、とても良い国だと言われていた。楽に生活できる国だと評価は高かった。だけど今は、その印象も覆った。生活が、とても大変な国に変わった。
昔は良かった。新しい魔法道具が次々と発表されて、仕事の負担が減っていった。税金も安くて、日々の暮らしが楽だった。
なんで、こんなことになってしまったのだろうか。王族や貴族達は、国を良くしてくれないのか。市民の暮らしを楽にしてくれないのか。
近頃は、デュラレン王国の暮らしが良くなっているという噂をよく聞く。かつてのアレクグル王国のように、魔法道具で発展しているようだ。羨ましい限りだ。自分の国と比較して、重い陰鬱な気持ちになる。他の皆も、同じような気分なのだろう。
俺も、噂の国に移住しようか。生まれた国を離れるのは辛いが、アレクグル王国で暮らし続けるのも大変そうだから。いつか、決断しなければならない時が来る。
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