第25話 目的は達成したけれど
いつものように私は、屋敷の魔法研究室にこもって魔法を研究していた。
「うん。これでよし」
撮影機が想定通り、ちゃんと動作しないことを確認する。新しい魔法道具の開発に成功した。
新たな魔法道具の効果は、撮影機の機能を妨害して記録には残せないようにする。開発した目的は、犯罪防止のため。
発明した撮影機は、大々的に販売する予定だった。これが普及して、悪用されると困る。機密情報を取り扱うような会話や場所を隠れて勝手に記録したり、女性の裸を記録して楽しんだり。そんな事をさせないために、防御手段を用意しておく。
これを設置すれば、好き勝手に記録することは出来ないようになる。こんな手段を用意しても、頭の切れるやつが悪用する新たな方法を考えるだろうけど。問題が発生したら、その時に対処しないとね。
それから、撮影機本体の性能も落として量産する。魔法石に記録できる時間も短くして、少し扱いにくく制限した。それでも唯一無二の魔法道具だから、かなり売れると思う。
他にも、売り出して問題ないような魔法道具を量産するつもりだった。なるべく、アレクグル王国の発展に関与しないような物を。どれが良いかしら。
研究が一段落した時、メイドのヘレンから話しかけられた。彼女は手に、紙の束を持っている。それを、私に差し出してきた。
「お嬢様。旦那様から、お渡しするようにとコレを」
「ありがとう、ヘレン」
ヘレンから受け取ったのは、婚約破棄に関する話し合いの報告書だった。じっくり読み込む。
婚約破棄については、正式に決定したようだ。これで、今回の私はリカード王子と結婚することは永久になくなった。まずは一安心する。
リカード王子の不倫の処分については、かなり甘い。本来ならば王位継承権の剥奪される。だけど、今まで積み重ねてきた功績により処分は免除されたらしい。
今まで積み重ねてきた功績って、私が顔合わせの時に提出してきた魔法の研究成果のことよね。過去の私が、王子の気を引くために喜んで渡していたもの。それで彼は評価を得ていた。そして今回、処分を免除されたのか。
過去の私の行為が、彼を助けてしまうなんてね。まぁ、いいわ。
それよりも、アレクグル王国の未来が思っていたより危なそうだ。あんな不祥事を起こしたリカード王子を処分しないということは、彼に王位を継承させるつもりなのかしら。他に何人か、候補が居るはずだけど。
やはり、他国へ移住することを考えておく必要がありそうね。
それと、もう一つの大きな問題。
報告書には、リカード王子の新しい婚約相手について書かれていた。その相手が、私の妹であるメイヤである。
リカード王子は、メイヤと結婚するつもりのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます