第17話 楽しく不愉快な日々 ※リカード王子視点

 最近、婚約相手であるナディーンの反応が鬱陶しいと感じていた。以前のように、まとわり付いてくるからじゃない。その逆だ。彼女が、俺のことを必要以上に避けるのが、不愉快だった。


 定期的に顔を合わせる回数も減っている。彼女が忙しいから、という理由で断ってきたのだ。俺から、会いたいなんて絶対に言いたくない。だから、彼女と会う回数は減っていた。


 なぜ彼女は、俺を避けるのか。理由は分からないが、距離を取ろうとしているのを肌で感じていた。


 別に、ナディーンのことが気になっているわけじゃない。婚約相手として、彼女の行動を注意しているだけだ。そもそも、なぜ俺が婚約相手なんかのことを、いちいち気にしなければならないのか。今までのように、向こうの方から会いたいと望むべきじゃないのか。


「リカードさまぁ! また、他の女のことを考えてるでしょ!」


 間近から女の声が聞こえてきて、考え事が中断された。


「あぁ、いや。すまない、クレリア」

「駄目ですよ! もっと、私のことも考えて下さい」

「わかった。ずっと、君のことを考えるよ」

「約束ですよ」


 腕の中に抱いている恋人のクレリアが嫉妬するので、即座に謝った。こんな感じの可愛らしい嫉妬ならば許せるのだけれど、ナディーンの嫉妬と束縛は不快だった。


 だが、今のナディーンは何も言わなくなった。女性と会うのを邪魔しなくなった。だから、今のような状況は俺が望んでいたこと。でも、なんとなく納得がいかない。彼女が急に、態度を変えるから。突然なぜ、邪魔をしなくなったのか。




 ナディーンの顔は気に入っている。しかし、性格や行動はタイプじゃなかった。


 あんな女と結婚したいとは、絶対に思わない。最近、魔法の研究成果も俺に報告をしてこなくなった。いよいよ、彼女と結婚する意味が何もない。なんとかして、婚約を破棄しなければ。


 タイムリミットが迫ってきていた。早く彼女との婚約を破棄する理由を考えないといけない。このまま俺が何もしなければ、本当に結婚することになる。それは絶対に嫌だった。


 ただ、ナディーンに婚約破棄を告げるだけじゃ物足りないな。何とかして、彼女を後悔させてやりたい。


 衝撃を与えて、痛い目を見せて。恥をかかせてから彼女との婚約を破棄したい。


 何か良い作戦はないだろうか。最近、ずっとそれを考えていた。だが今は、恋人と楽しい時間を過ごすのが最優先だな。


「クレリアは、いつ見ても可愛いな」


 頭を撫でながら、彼女の身体をぎゅっと抱きしめる。良い感触。


「キャッ!? もう! そんなところ、触っちゃ駄目ですよ」

「えぇ。気持ちいいのに」

「ンッ。駄目、ですって……」


 そして俺は、クレリアとイチャイチャして楽しんだ。

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