第11話 Cカップ

 その電撃は,千雪の体を直撃した。SS級に迫る電撃には耐えることができず,千雪は,その場で意識を失った。


 ジョセフは,千雪の手刀を躱す際に,無理な体制で大きく水平に後方に飛んでいた。そのため,その体勢のまま転倒した。受け身も取ることができなかった。かつ,自分の実力以上の魔力を放出したため,まったく体を動かす力もなかった。彼も,転倒による激痛と枯渇した魔力により,意識を失った。


 ーーー 10分が経過した。


 先に目覚めたのは,ジョセフだった。


 彼は,はいずるようにして体を起こした。千雪は,まだ気絶しているのがわかった。だが,彼女が目を覚ますと,自分は確実に殺されてしまう。彼女が目覚めないうちに,彼女の手を縛り付けなければならない。


 彼は必死で,なけなしの体力をふり絞り,四つん這いで,千雪のもとに歩みよった。仰向けに気絶していた千雪のサラシが目についた。そのサラシも,胸に収まっているとはいえ,側面がほとんど焦げていて,焼け焦げた状態でくっついていた。


 ジョセフは,千雪に刺激を与えないように,焦げていないサラシの部分を剥ぎ取った。


 千雪は,もともとBカップだったが,最近,回復魔法でCカップになったばかりだ。ほんとうに綺麗な裸体だ。


 しかし,今の彼には,千雪の裸体にはまったく興味はなかった。生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。千雪が目覚めれば,彼の死は決定なのだ。一刻も早く,千雪の両手を縛らなければならない。


 ジョセフは,そーっと,千雪に刺激を与えないように,両手首を合わせてしっかりと結ぶことに成功した。


 彼は,千雪を確実に殺せればいいのだが,剣を振るう力がないのだ。かつ,下手に殺しそこなうと,千雪は確実に目を覚ます。


 彼の行動は正解だった。この状況での最善の方法を選択したといえよう。ただし,千雪が魔法を使えない,という前提での話だが,,,


 少なくとも,これで,ジョセフは,さらに5~10分程度の時間を稼ぐことができたと判断した。この時間で,なんとか剣を振るう体力を回復させればいいのだ。


 ジョセフは,呼吸を整え始めた。そして,千雪がなぜ女性一人で,われわれのチームに恐れることもなく参加したのかを考えた。そして,彼は心の中で呟いた。


 『ふーー,なんと!千雪よ!お前はこんなにも強かったのだな。だから,女性一人でも恐れることなく,われわれのチームに入ってきたのか。お前が意識を取り戻す前に,両手を縛れてよかった。これで,縛った布を振りほどく時間を少しは稼げるからな』


 全力の魔法攻撃は,ぎりぎりまで体力を消耗する。10分ほど休息して,やっと,ぎりぎり立ち上がれるほどになった。この頃から,月が雲に隠れ,月明りだったのが,暗闇に近い状態になった。


 魔法を扱えるものは,少なからず,感知能力を引き上げることができる。暗所での目視能力も昼間と同じように見ることができる。


 ジョセフは,もともと,この場で彼女を辱める予定だったが,こんな状況では,いくら裸の女性が横たわっているとはいえ,とても性欲などあるはずもない。


 彼は,雨が降るのを恐れた。雨が降ると,千雪は確実に目を覚ます。すぐには,サラシの拘束は解けないと思うが,一気に,剣で喉を掻っ切らなければならない。


 剣は,ブラック・ウルフのそばにころがっていた。ジョセフは剣を拾い上げて,千雪のそばに移動した。


 数秒ほど,千雪の気絶している美麗な顔と形の整った乳房を見た。

 

 ジョセフ「惜しいが,お前もここまでだ。さらばだ」


 そう言って,彼は剣を上段に構えた。彼は剣の重さを借りて,千雪の喉元に振り下ろそうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る