第10話 千雪のピンチ

 千雪は恐縮して言った。

 千雪「ほんとにうまくいくのですね。私,なにも役に立たなくてすいません。申し訳ないです。」


 ジョージ「いやいや,サリーさん。松明での作業はたいしたものでしたよ。とても勇気ある行動でした。こんな人気のいないところで,女性一人だけでいるなんて,ほんとうに勇気ある行動です」

 

 千雪は,ちょっと嫌な予感を感じた。もしかしたら,彼らは,よからぬことを考えているか?


 ジョンも言葉を足した。

 ジョン「そうですよ。魔法の使えないような,か弱い女性が,こんな人気のいないところで一人でいるって,どうゆうことかわかるでしょう?」


 そういいながら,ジョンは,千雪の肩を軽く触った。


 千雪「あの,私に触るの,止めていただけませんか?」

 千雪は,ジョンの手を払いのけようとした。しかし,ジョンの手から小さな炎がでて,千雪の着ているジャージに着火した。


 千雪は,この着火を見ても,落ち着いていた。しかし,ここは初心な女性を演じるほうがよいと判断した。


 千雪「キャー!」

 千雪は,慌てる素振りを示して,燃えてるジャージを脱ぎ捨てた。幸い,サラシや髪には引火しなかった。ここは,逃げるのが先決と判断し,急いで逃げ出だそうとした。


 その時だった。足元の土が10cmほど急に隆起して,それにひかかって,転んでしまった。


 千雪は,『これが土魔法なのね』と内心感心した。それと同時に,千雪は,ここで覚悟を決めた。3人をゴキブリとみなすことにした。全くためらうことなく,彼らの首をはねることを決意した。



 まだ,起き上がれない千雪に向かって,リーダーのジョセフは言った。

 ジョセフ「俺の得意なのは,実は剣技でなく,雷魔法なのだよ。その威力を調節すれば,千雨さん,あなたを気絶させることも容易なんだ。別に,あなたの命まで取ろうなんて思っていないよ。ちょっとだけ,気絶してもらうだけだからね」


 そう言って,威力をかなり抑えた電撃魔法を千雪に向かって放出された。まだ立ち上がれていない状態では,それを躱すことができなかった。電撃魔法は千雪の体にぶつかった。


 バババーー!


 だが,千雪は何事もなかったかのように,ゆっくりと体を起こし始めた。


 3人は,『え,なんで動けるの?』と不思議がった。


 ジョン「ボス,なにを威力の弱い電撃魔法を使っているんですか。ぜんぜん効いていないじゃないですか」

 ジョセフ「そ,っそうだな。あんまり強くすると,殺してしまうので,弱くしすぎたのかもな」


 今度は,人を殺せるレベルの電撃魔法を発射した。


 バババババババババーー!!!!


 千雪は,2発目の電撃魔法を食らった。しかし,何事もなかったかのように,彼女の立ち上がる動作を止めることはできなかった。


 ジョン「ボス!遊んでいないで,真面目にしてください!」

 ジョセフ「いや,2発目は,普通の人なら死んでしまうレベルだったぞ!」


 そんな会話を聞きながら,千雪は完全に立ち上がった。次の瞬間,脱兎のごとく,目にもとまらぬ速さで,手の平を鋼鉄の硬さに変えた手刀が,彼女の近くにいたジョンとジュージの首をはねた。


 シュパーー!シュパーー!


 2人の首は胴体から離れた。そして,コントロールを失った首無し胴体は,ゆっくりと地に倒れた。


 血しぶきは,千雪の体に全身を覆った。だが,千雪の皮膚に到達することなく,雨ガッパに雨水が垂れるが如く,きれいに地面に落ちていった。


 少し離れていたジョセフはその光景をみて,『千雪の全身に何か,防御する層のようなものがある。全力で攻撃するしかない』と悟った。


 彼は全魔力を両腕に集中させた。そのわずか1,2秒の間に,千雪は次のターゲットをジョセフに設定し,彼に向かって直線的に駆け出した。


 ジョセフの全力による電撃魔法の発射と千雪の首部への手刀攻撃はほぼ同時だった。


 ジョセフは,千雪が首を狙ってくるのはわかっていた。電撃発射と同時に首を水平に傾けて,千雪の右手からの手刀をギリギリ躱すのに成功した。


 48式を骨の髄まで体得している千雪には,次の左足からのキックでジョセフの首を飛ばすつもりだった。


 その刹那,上級レベルの魔法に達していたジョセフの全力の電撃威力は,一時的にS級,それもSS級にせまるレベルの電撃に達したのだ!!


バババババババババーーバババババババババーーバババババババババーー!!!!!!!!!!!!

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