第9話 仕事紹介所
翌日の午後,千雪はさっそく仕事紹介所に顔を出した。
千雪「あの,ここで,仕事の紹介を受けたいのですけど。初めてなので,どうすればいいですか?」
受付嬢は,ニコッと笑って応対した。
受付嬢「あら?あの有名な魔法士のお弟子さんね。ここ10年,姿見なかったけどね。あなた,あの魔法士の新しい愛人さんですか?」
千雪は,おおよその意味は理解した。
千雪「いいえ。愛人ではありません。私は師匠のお手伝いさんです」
受付嬢「まあいいわ。まず,レベル測定ね。あなたの魔力量を測定するわね。この水晶玉に手をあててみて。数字がでてくるわ」
千雪は言われた通り,手をあてた。すると,0の数字がでてきた。
受付嬢「あら,魔力量ゼロなのね。まだ,魔力を引き出せていないのかしら。でも20以下はレベルEランクなので,そこから始めることになわるね。ペットの散歩,掃除,ネズミ駆除くらいかな。あなたは女性だから,ウェイトレスの仕事もあると思うわ。どこかのチームに入れてもらって,一緒に仕事する方法もあるけどね。でも,レベルEだと難しいわね」
そういいつつ,手際よく登録証を準備してくれた。千雪は,年会費の銀貨3枚を払って,登録書を入手した。
仕事募集の張り紙のところで,仕事を探していると,ロビーでたむろしていて,ひそひそと話していた男性3人連れのパーティの一人,ジョージが,千雪に話かけてきた。
ジョージ「あなた,新人さんですね?一緒にチーム組まない?報酬は山分けでどう?」
千雪は,そのパーティに女性がいないのに少々気になった。しかし,そこはためらってもしょうがない。師匠が一人でやっていけるいと判断したのだから,ここは,警戒しつつ,慎重に行動しよう。
千雪「私は魔法使えないけど,いいですか。体力は少しだけ自身があるくらいで,なにもできないです。それと,午後の2時から夜の10時までに終わる仕事でないとできないです。それでもいいですか?」
ジョージ「それでいいですよ。危険なことは,われわれがするので,見張りの仕事をしてくれればいいのですよ。今日の仕事は,ときどき家畜を襲うブラック・ウルフの討伐です。午後4時ごろから3時間くらいで終わる仕事だから,十分に余裕あると思うよ」
3人組のリーダーはジョセフで,No.2がジョンだ。声をかけてきた男は,ジョージと名乗った。
待ち合わせの場所は,村外れで森の入口だった。そこから森に入り,ブラック・ウルフの巣を探すことになる。普通,群れを成しているが,一匹だけ群れから外れて,この辺りで,たむろして,ときどき家畜を襲っているのだった。
ブラック・ウルフは多少魔力をもっており,小動物を金縛りにして,動きを止める能力を持っていると聞かされた。ブラック・ウルフは犬の大型というイメージなので,群れでない限り,あまり脅威になることはない。
また,このパーティメンバーの詳しい紹介も,このとき千雪にした。
リーダーのジョセフは,魔法はあまり得意でないけど,剣技が得意であること。No.2のジョンは,火炎魔法が得意であり,声をかけてきた男,ジョージは,土魔法が得意とのことだった。
千雪は自分のことを,師匠の食事など,身の回りの世話をするお手伝いさんで,午後はときどき時間ができるので,簡単な仕事を探しているという簡単な自己紹介をした。
ジョセフが魔法に反応する羅針盤を取り出して,ブラック・ウルフがいると思われる方向をしめした。
ジョセフ「ここから2キロくらいで,うろうろしているな。あなたは女性だから,この松明をもっていなさい。やつは火を恐れるので,それを持っていれば,襲われることはないから安心して。サリーさん、ジョージそしてジョンが松明を持って,三箇所から追い詰めて、ブラック・ウルフを私の方に追い出すのが作戦だよ。私一人だと,ブラック・ウルフも勝てると思って,攻撃してくるはずだからね」
千雪は言われた通り,松明をもって,ゆっくりとほかの2人と歩調を合わせて,歩みをつめていった。ブラック・ウルフも,炎が3箇所から近づいてくるので,危険を感じたのか,徐々に後ずさりして,早足で逃げ去った。だが,逃げ去るその方向には,予定通り,ジョセフが待ち受けていた。ジョセフは武器を持っていなかった。
ブラック・ウルフはジョセフが武器を持っていないことに安心したのか,金縛りの魔法を放し,そのままジョセフに襲いかかった。金縛りの魔法は,すでに対策済だ。その効果は,事前にジョセフの服に設置した解除魔法によって,打ち消された。ジョセフの両手から雷の塊を出現させて、ブラック・ウルフに向けて発射された。
ピカーーーー!
一瞬だった。ブラック・ウルフは,その電撃を受けてあっけなく即死した。
実はジョセフが得意なのは,剣技ではなく電撃魔法だったのだ。しばらくして,松明を持った3人がジョセフと合流した。彼らは作戦が成功したことを知った。すでに,ブラック・ウルフの頭部が切断されて,血抜き作業をしていたからだ。この頭部は,討伐成功の証として,仕事紹介所に持ち込まれることになる。
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