第6話 修練2ヵ月

 2ヶ月が経過した。


 師匠「サリーよ,これから,本格的な訓練にはいる。全裸になりなさい。服がすぐぼろぼろになってしまう」

 千雪「はい」

 千雪は全裸になった。

 

 師匠「では,両足の筋肉に霊力を満たしなさい」

 千雪「はい,満たしました」

 師匠「さらに,両腕の筋肉にも霊力を満たしなさい」

 千雪「はい,満たしました」

 師匠「よし,その状態で,48式を,できるだけ早く演舞してみなさい。私は,時計で時間をはかる。では,はじめなさい!」

 千雪「はい,始めます」


 千雪は,体に染みついた48式をできるだけ早く演舞してみせた。

 師匠「よし,そこまで。4分ちょうどか。千雨の限界のスピードが6分だから,だいたい1.5倍速の速さで行動できたことになる。いい傾向だ。まだ霊力が不安定だが,時間とともに安定するだろう。次の段階に入る。

 霊力の強みは,その防御力にある。腕を合わせて体をガードする体制にして,腕の表面部分に,霊力を集めて、霊力の層を作るイメージをしなさい。それができたら,私がそこに,初級火炎魔法で,火炎を発射する。防御をうまくしてみなさい」

 千雪「はい。イメージしました」


 師匠は初級火炎攻撃を千雪に発射した。火炎は,腕を焼くことはなかったが,火の粉が髪について,髪をかなり焦がした。


 千雪は髪が燃えても,全然慌てなかった。落ち着いて,両方の手の平で,火の粉を消した。


 師匠「そうか,今度は,髪も含めて,ガードしないといけないな。今度は,仁王立ちで,体全体の表面を霊力の層で覆うイメージをしなさい。強くイメージしなさい」

 千雪「はい,できました」


 師匠は,初級火炎攻撃を千雪の腹部めがけて発射した。火炎は,一瞬,千雪の全体を覆ったが,すぐに消滅した。千雪に外傷や火傷はなかった。

 

 師匠「サリー,どうだ?熱さは感じたか?」

 千雪「いえ,ぜんぜん感じませんでした」

 師匠「そうか。今が一番大事なときだ。ゆっくりと,確実に修練せねばならん。次に,こぶしを作り,そこに霊力を集めて,鋼の硬さをイメージしなさい。ここに,庭から持ってきた岩がある。それができたら,48式のうち,もっとも適当と思う型で,この岩を攻撃してみなさい。また,岩石の破片が飛んで体を傷つける恐れがある。攻撃するときは,常に体全体を霊力で覆ってからにしさない」

 千雪「はい,できました。岩を攻撃します」

 千雪は両腕の正拳突きで,岩を攻撃した。


 ダーーーン。


 岩は音を立てて砕けた。その勢いで破片が千雪の裸体に当たったが,霊力の層で弾かれた。


 師匠「見事だ。だが,まだまだ霊力を覆うのに,時間がかかりすぎる。でも,ここまでできれば,たいしたものだ。では,1日のこなす訓練内容をいう。霊力を瞬時に体のあらゆる部分に集積させる訓練,そして,あぐらの姿勢で霊力をゆっくりと体中にめぐらして,霊力を養う訓練をそれぞれ30分ずつ,1日3回繰り返しなさい。次に,48式を1日20回,そして,霊力を,鋼,刃,火炎,氷結のイメージで,体のどの部位でも帯びさせる訓練を1日3時間,かつ,その動作を一瞬で行うように常に意識して行いなさい」

 千雪「はい,わかりました」


 師匠「これから毎日,朝,昼,晩の3回,種々の攻撃魔法を受けてもらう。今から,1週間は,初級レベル。2週間後から中級レベル。3週間後から上級レベル。1カ月後には,できればS級レベルを防御してもらう。こんなにズムーズにいくとは思えんが,真摯に訓練すれば,達成可能だと思う。霊力というものは,最初の10年が大変なのだ。その後の進歩は早いはすだ。真摯に修練しなさい」

 千雪「はい,師匠。師匠の貴重な10年間を,私のために費やしてくれたこと,ほんとうに感謝します。その恩に報いるためにも,全力で修練に励みます」


 千雪はまじめに修練に励んだ。2週目からの中級レベルの攻撃をすべて防御し,3週目からの上級レベルの攻撃もすべて防御した。上級レベルからは,道場の外で実施した。裸体を隠すため,霊力に色を帯びさせた。全身を緑,茶,その斑模様など徐々に複雑な模様もできるようになった。


 千雪は修練の傍ら,近くの子供たちと,蹴鞠のゲームとか,ドッチボールなど,月本国のゲームを教えたりして遊んだ。また,子供たちから,魔族語の絵本や簡単な読み物も借りて,魔族語がほぼ理解できるようになってきた。


 また,魔族語が理解できるようになると,古代魔族語辞典を効率よく使えるようになり,古代魔法書の解読スピードも早くなった。この解読に費やす時間は,千雨にとってはリラックスタイムだ。ついつい,寝る時間を惜しんで解読に費やした。


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