第68話 R
街の家の引渡しも無事に終わり、私達は森の家に持ってくるものや身の回りのものを整理しに戻ってきた。
マインがあれは?これは?と、要不要の選別を手伝ってくれて、初日にほとんど終わってしまった。
イオルとキエクは、街にいる間にも大きくなって早くなって、今日マインの鉱山に来る時も歩いて3日かかる道を半日で辿り着いた。
ガングリードで新調した鞍は、お尻が痛くならず、イオルとキエクの負担も軽くなったようで、中々優秀だった。
鉱山からドワーフの村へ移動するのは、2匹の背に乗れば瞬く間だった。
マインはドワーフの村で、元自宅の片付けを黙々とこなしていた。
「ははは、なんにも無いな。まぁ、こんなものなのかな?手入れして使うことにするよ。鉱山の管理小屋程度の仕事なら出来るよね・・・いや、いっそ建て替えかな?」
森と鉱山の管理者としてのお仕事のことも考えると、管理小屋は必要だと思うけど、ある程度の施設を整えるのは時間がかかりそうだ。
これは、ボロスやみんなと相談しようと話し合った。
冒険者達が葬送してくれたからか臭いや嫌な感じは無かったけど、ドワーフの村があった場所は火の入っていない炉の様に寂しげだった。
村の中を見て周り魔獣などが住み着いていないか、残った器具や道具が無いか等を確認した後で、鉱山に関する書類が無いかを村長宅や教会で探した。
どちらも散乱していて、書類を掻き集めて目を通していく作業は思ったよりも時間がかかった。
夕方になり、教会の司祭の部屋でぐったりと上を向いた。
「マイン、この鉱山村、思ったよりも大きい…」
私は、鉱山の共同権利人の書き出しを終えてマインに愚痴った。
共同権利人は、普通なら3人ほどしかいない。
村長と、その他位のものだ。
だが、この鉱山は共同権利人が8人も居る。
王都の貴族と思われる人や商人と思われる人、村長に村民と名前が並んでいた。
この辺りの処理は、ボロスさん達がやってくれるはずだと信じている…
村の祭りを行っていた広場に、寝床と夕飯を簡単に用意して済ませた。
「リェース、付いて来てくれてありがとうね。流石にあの量は一人じゃしんどかった」
視界いっぱいに広がる夜空を見上げながら、どういたしましてと笑った。
翌日家に戻って荷物を取ってから、街に向かう。
街の家は、家具と日用品が揃えば、生活が出来るようになっている。
家具の出来も途中で見せてもらったが、注文以上の物になっていて職人の粋を見た気がした。
新しい生活に向かうワクワク感が押し寄せてきて、私は少しドキドキする。
上手く話せるように、人見知りが治るように、マインに負担を掛けないように、少しずつ頑張りたい。
マインは、いつも私に頼って申し訳ないって言うけど、守られてるのも頼っているのも私の方だと思う。
これからは、もっと自分のことが自分でできるようになって、マインと一緒にみんなでずっと笑っていたい。
そう思いながら、今日もラスバルさんの家で眠りについた。
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