第69話 M
鉱山から帰った翌日、大人3人組にドワーフ村の件の報告をした後、森と鉱山の所有や権利などの大人の話は3人でするからと、追い出されてしまった。
私とリェースは、難しい話をありがたく丸投げして街に出かけた。
生活雑貨の買い物や、イオルとキエクの鞍を作ってくれた職人さんへの使用感と改善点の報告、フォル爺さんの工房で包丁を研いだりして時間を潰した。
ラスバルさんの家に帰ると、3人はまだ話し合いの途中なのか揃っていた。
夕飯までの少しの時間を、従魔たちと過ごした。
アルコの娘ちゃんは、翼の生え代わりを迎えていて、ふさふさの産毛がだいぶ抜け落ちて飛ぶための物へと切り替わっていく。
全て生え変わって、食事が大人と変わらなくなったら飛ぶ訓練をする。
一人前に飛べるようになるまで、この家で親から教わった方が良いだろうとまだ一緒に暮らせるまでは時間が掛かりそうだった。
それでも、「ヒエラ」と名付けたヒナは元気に私の後をついてくる。
ヒエラは頭が良くて、大きくなったら一緒に暮らそうねと話すと嬉しそうに頭を摺り寄せてくる。
体自体は大型の鶏ほどに育っているから少し圧が強いが、まだかわいい盛りだ。
今は、おやつにあげれるときだけ鉄魔鷹の非常食「命の聖血」の粉をほんの少量あげているだけだが、ラスバルさんの従者さんが不思議がるほどにこの子だけ体が大きくて、一緒に生まれたオスのヒナの方がヒエラに追いかけまわされていて申し訳ない。
ラスバルさんに呼ばれて、3人の元に行くと話し合いは終わったようだった。
「待たせてしまったね。さぁ、お座り。話し合った末の結果を聞いておくれ」
ラスバルさんがそう言うと、ボロスが喋り出した。
「まず、先日の通りに森と鉱山の管理は、2人にお願いするよ。共同権利者の件は、国で調査してくれる手筈だ。所有権は、その後になるね。少し待って欲しい。管理のための必要なものについては、経費で落とすから請求してくれとのことだったよ。」
「ありがとうございます。」
リェースが言うと、ボロスはにっこり笑って、建て替えの話をしなきゃいけないねと言った。
「建て替えは、人手をお願いできたりするの?材料を運んだり組み上げたりするのに、イオルとキエクが居てくれても2人では、流石にしんどいんだ」
森の家も手直ししたいし、専門家に教えてもらえた方が良いと思う。
「わかった。手配しよう。それについては、経費で落とせるから安心して過ごしやすいように作ってくれて構わないよ。最終的には、森の管理人兼鉱山の管理人兼鉱山の所有者兼鉱山の権利人になってもらう予定だから」
なんだその役職の羅列は・・・
頭に何をすればいいのかと疑問を浮かべた私の顔を見て、マグリッドさんが笑った。
「なんにも難しいことはないわよ?国の依頼を受けて森と鉱山を見回ったり、こんなものやこんなことがありましたよって報告したり、それくらいだもの。それに、鉱山については所有者で権利者になれば、鉱山で採取されたものはみんながあなたから買うしか手に入れる方法は無いの。つまり、国ですらあなたから採取物を買うってこと。いくらか希少なものが出ても、国なら買いとってくれるしお金に困ることもないってこと」
茶目っ気たっぷりに、片目を閉じて笑いながら教えてくれた。
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