第67話 M

翌日、ルンルンのラスバルさんと家具を見に3人で出かけた。

紹介された職人さんは凄く腕のある人で、私とリェースの要望をほとんど叶えてくれる。

頑丈な寝台、低めの厨房と折りたたんでしまっておける椅子、移動式の棚に、二人揃いの机と椅子や、大きな食卓。

職人さんにお願いして出来上がりの予定を聞くと15日あればある程度は形にしてくれると言う。

私達は、まだしばらくラスバルさんの家にお世話になるしかないが、森の家にも帰りたいしゆっくりで構わないと告げて家具をお願いした。

その日は、家具職人さん、食器作家さん、調理器具屋さん、魔導具屋さんと、ありとあらゆるお店を回ったように感じる。

ラスバルさんは不満げな様子もなく、ニコニコと楽しそうに私達の買い物を見ていた。

途中、宝飾品店で指輪を買われそうになって、本気を出して逃げたりもしたが概ね楽しいお出かけだった。

何だかんだと買い物や制作で時間を使い、ボロスとの約束の日になった。

私達はマチアさんを訪ねて、不動産屋さんを訪れた。

ボロスは予め渡しておいたお金をマチアさんに渡すと、私とリェースの前に書類を置いた。

売買契約の書類と、未成年故にボロスが代理人を務めると言う旨の書類。

何も考えずに来た私達は、ボロスにお礼を言って代理人をお願いした。

書類への署名が終わると、ボロスが私達を服飾店に連れて来た。

曰く、「今から商業組合に挨拶しに行くから、少しおめかしをして行かなくてはいけない」とのこと。

私達は、慣れない服選びにお店の人たちの力を借りて、何とか「年頃のしっかりした娘さん」程度に変身することが出来た。

リェースは、薄桃色で胸の下に切り替えのある袖がふんわりとしたワンピースに統一感のある色の丸みの可愛い靴、共布のあしらわれたフリルのリボンを頭に結ぶと、深窓の令嬢かと言わんばかりの可愛らしさだった。

私は、すらりとした体に沿う形に縫製された白いシャツに黄みがかったクリーム色のサマーベスト、前と後ろで裾の長さの違う濃い目の茶色のスカートに同じ色目のロングブーツで私の目の色に似た色の猫目石を使ったブローチを付けられた。

店員さんたちの合格を貰うと、さっさと商業組合に連れていかれる。

何故か組合の人たちは、私達の養い親の事を知っていて、ほとんどの人が笑顔で挨拶してくれた。

ボロスに後から聞いた話では、みんなが気にしていてくれたらしく、ボロスが私達を独り占めしていると言われていたらしい。

だから、自腹でおめかしをさせて、お披露目したかったとのことだった。

私達に言わなかったのは、言ったら恥ずかしがって来ないからと、見抜かれていた。

ボロスと組合の人たちに感謝をして、ラスバルさんの家に戻った。

ラスバルさんに出合い頭に結婚を申し込まれて、走って部屋に駆け上がって着替えをした。

リェースは、少し残念がっていたがラスバルさんに絡まれるから仕方がないねと笑っていた。

今日あったことを夕飯の時にラスバルさんに話すと、孫の話を聞くおじいちゃんのようにニコニコと笑って話を聞いていた。

ここ最近、みんなに甘やかされている気がする。

リェースに聞いても、同じように感じていると言っていた。

守られている感覚に慣れなくて、くすぐったいけれど嬉しい気持ちだねとイオルを抱きしめて眠った。

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