第65話 M
結局、1軒目はお断りした。
訳が分からないほどに、大きすぎる。
ボロスに、無言で「なんてものを見せるんだ」と抗議したが、するっと笑顔で躱された。この男、強い・・・
「次も、大きい?」
リェースが、ボロスに問いかける。
最近、リェースは少しづつ自分から私以外の人にも話しかける様になった。
ボロス、マグリッドさん、ラスバルさん、アグリさんの4人以外にも、自分の意志で拙いながらも単語のみの会話から抜け出そうとしている。
寂しいような、嬉しいような、複雑な気持ち・・・表現の仕方は、わからないけれど、きっとリェースにとっては凄くいいことだと思う。
「いいえ?さっきのよりは小さいですよ?次のは、店舗兼自宅という感じでしょうかね」
「はい。貴族地区と市民地区の丁度間辺りにありまして、住居兼店舗の中でも大きめの物ですね」
ボロスの答えに、同乗しているマチアさんが補足を付け加えた。
「見て頂ければわかりますが、一階に店舗・作業場・風呂手洗い。二階に主寝室1つと客室2つ・食堂厨房と居間ですね。庭は大きめとなっておりますし納屋もございますよ」
この人は、1を聞くと3か4くらいで返ってくるようだ。
何の情報も見ないでここまでスラスラと出てくるのが、凄い。
2軒目に到着すると、外観はとても可愛らしくて好みだった。
入口の左右には、花壇だったであろう名残も見える。
扉は少しくたびれていたが、いい具合に年季の入った代物だった。
扉を開けると、正面に店番の座るであろう会計場所、左右に商品棚、奥には右手に炉があり、左手に大きな備え付けの作業机と小物棚があった。
作業机の上には、大きめの天窓があり程よい光が差し込んできていた。
作業場の奥には、手洗い・風呂・階段があり階段の下から裏庭に出れる様だ。
扉を開けると、建物の床面積と同じくらいの庭に、森の家の隣の納屋と同じくらいの納屋があった。
庭自体には、十分スフェル・イオル・キエクとアルコの娘がじゃれて遊べるだけの広さがあった。
走り回ってクタクタになるほどではないにしろ、遊ぶだけなら十分な広さだろう。
流石に、アルコ一家が遊びに来たら並ぶだけでも狭苦しいが・・・
二階に上がると、階段からのびる廊下を挟んで厨房食堂・居間と客室が2つ、最奥に主寝室があった。
厨房は使い勝手のいい大きさで、リェースは随分熱心に立ち位置や棚の具合を見ていた。
食堂に家具が入っていなかったので伽藍堂だったが中々大きな食卓が置けそうで一式作ってみたい気持ちに駆られた。
居間には、旧式だが冷暖房の使える魔道具が据え置きで設置されていて手を加えれば使えそうだった。
客室は、私達の森の家の部屋より二回り程大きいくらいで使いやすそうな間取りだと思った。
部屋の家具の配置が、部屋を見た瞬間に思い浮かんで、私の中で完結した。
最奥の主寝室にも家具は無く、このまま床に絨毯を敷いたら、みんなでゴロゴロと出来るなぁと考えてしまった。
概ね、私には使いやすそうな家だと思う。
出来るならここに決めてしまいたいが、リェースの意見も大切だ。
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