第62話 R

「確かに、アーサーったら、涙目でオロオロしてたわね。その後で、スラテルポと水薬を見せたらね、びっくりしすぎて後ろにひっくり返ったのよ!椅子ごと!もぉ、笑ったわぁ」

マグリッドさんは、それはそれは楽しそうに思い出し大笑いをしていた。

「それでね、私達はまぁざっくりと説明したわけだよ。ダーナ・エールとヴェルク・バルクの養い子が、色々あって逞しく生きて制作したのだと。」

ラスバルさんの言い方に流石にざっくりしすぎだと思ったが、逆にそれくらいでよかったのかもしれない思い直して、私は何も言わなかった。

「そうしたら、まぁ、結局は言い分通りに通ったわ。国が出すのは、スラテルポ1対に大白金貨350枚、水薬1本につき大白金貨50枚が10本。総額は大白金貨850枚の85億ネルよ」

マグリッドさんに「どやー」という顔で、見たことも聞いたこともない金額を言われても・・・何とも言えない顔しかできません。

「一生遊んで暮らせます。っていうか、なんでそんな値段になったんですか!?」

マインの叫びは、尤もだ。私も、そう思う。

「いや、森の保護と鉱山の保護までしてもらうから、金を出せって吹っ掛けたんだよ。鉄魔鷹と友好が結べる者はこの先2度と現れないぞ?森の氾濫を食い止められた功績はどうする気だ?キングドレイクまで居たんだぞ?我々がその腕を買って面倒を見たいと思っている娘たちが家が潰れて2人で一から立て直していて、伝説の2人の養い子が苦労しているのに放っておくのか?人でなしに育てたつもりはない。ならば奥方に話に行こう!と、まくし立ててやったのだよ。私、頑張っただろう?褒めてくれても構わないよ?」

「「・・・・やりすぎ」ですっ」

マインと私に怒られて、ラスバルさんは目に見えてへこんでしまった。

それでも、許してあげれる限度を知ってもらいたいと切実に思う。

「ほら見なさい、怒られない訳がないって言ったじゃない。本当に、長生きのくせにバカなエルフよねぇ」

マグリッドさんに追い打ちを掛けられて、元王家の教育係は机に突っ伏してしまった。

「さて、大白金貨はまとめて貰っても仕方ないでしょうから、毎年大白金貨を22枚と大金貨20枚と金貨を20枚で34年間、送って貰う手筈になっているよ。大きい金額の両替はうちで出来るから、安心していいよ」

ボロスさんの言葉に頷いたはいいが、大白金貨なんてどこに仕舞っておけばいいのか・・・

マインを見ると、魔法カバンに仕舞っておくしかないな・・・と呟いていた。

そうなるよね、わかってた。

2人で半分に分けようと言うのは、マインと前に相談していたから分けやすいのはありがたいが、金額が金額だけに実感がわかない。

「ということで、先に今年の分を貰ってきているので、渡しますね。受領の署名を送らなくてはいけないので、2人とも書いてもらえますか?」

どさどさっと置かれた精神的に重たそうな王国印の入った袋が二つ、書類が2枚。

スッとこちらに押しやって、ボロスさんがにっこり笑う。

とりあえず、マインも私も中身を、そっと覗いてみた。

白く輝く金貨と大小の鈍く輝く金貨、合わせて62枚が入っていた。

震える手できちんと数えて、書類に震える文字で署名をした。

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