第61話 M

リェースから受け取った赤い心臓石を、丁寧に割って削り、腕輪に嵌め込んだ。

凹凸がなるべく少なくなるように厚みを付けた腕輪は、リェースに軽量化の付与を掛けてもらう予定だ。

削り出しに使った残りのかけらたちは4つ出来たが、ウェントゥの魔法を有していない。

前に許可を貰ってあるので、従魔3匹用にさせてもらうために残しておく。

イオルの母親の瞳もひとかけら残してあるから、家族が増えても大丈夫。

実は、密かにラスバルさんの所の大魔鷹のヒナのうちメスの子の方を家族にできないかと、みんなに相談しようと思っている。

以前、私の手のひらの上で、スリスリと甘えられて虜になってしまった。

暇があればあの子を見に行っていたから、リェースと3匹にはきっとばれてるだろうけど・・・

出来上がった腕輪を持って、リェースに付与を頼もうと居間に行くと、3匹がへそ天で日当たりのいい窓際に転がっている。

それを見ながらお茶を飲むリェースの隣に座ると、腕輪を差し出して付与を頼んだ。

リェースは、すぐに腕輪に軽量化の付与を掛けてくれた。

街に行ってから付与の腕も魔力も、相当に上がっている。

付与済みの腕輪を、お互いの腕に着けるとどちらからともなく笑顔になった。


翌日、スラテルポから反応があった。

魔力を注ぐと、ボロスから明日移動を開始するとの報告だった。

私達も街に移動する用意を開始して、翌日に出発した。

イオルとキエクの速度は、どんどん早くなっている。

私達は、大きなったその背中に乗ってやはり鞍が早急に必要だと再確認した。

次に帰る前には、必ず鞍を作ると2人で頷き合って決めた。

ガングリードの門をくぐると、ボロスの馬車を見つけた。

スラテルポで連絡すると、ラスバルさんの家に向かうとのことだったので、私達もそのままそちらに向かった。

ラスバルさんの家では、従者さんがお茶を淹れてくれた。

「長の移動、お疲れ様でございました。どうぞ」

お茶を置いて、3匹を連れて、従者さんは部屋を出て行った。

「お待たせしたね。マインちゃん、リェースちゃん。君たちのラスバルが帰ってきたよ。抱きしめてくれても構わないよ?」

どこかに行っていたラスバルさんが、部屋に入るなり訳のわからないことを言う。

サラッと無視して、ボロスに向き直った。

「それで、首尾はどうだったの?」

私の反応に、苦笑のボロスは王都でのをしてくれた。

「王都ではしばらく待たされましてね。まぁ、事が事ですから仕方がないんですけどね。それでも謁見の順番は、だいぶ飛び抜かしてくれたようですけれどね。謁見の間では品物は出さずに、昔のように話がしたいとだけそれとなく昔の暗号で伝えましてね。王の個人的な謁見部屋に連れ込んだんですよ。」

ボロスの言い方にほんのりと、何かが垣間見えて笑ってしまう。

「その後は、私とボロスとマグリッドに文字通り囲まれて、契約書を涙目で書かされていたね。坊やのころを思い出して、楽しかったよ」

ラスバルさんは、小さいころを知っているのだからある意味最強だろうと思う。

今の国王陛下は、賢王と呼ばれているのに、なんだかほんのり可哀そう。

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