第60話 R

順調にスラテルポを作り終わって、ラスバルさんの家で完成品を3人にお披露目すると、3人揃って感嘆の息を吐いていた。

それはそうだろう、マインの作ったスラテルポを見れば、きっと誰もがため息をつく。

艶のあるロードミスリルの輝きに、王家の紋章が彫り込まれて、反対面には王妃の紋章に国王の紋章が複雑に絡み合って美しい意匠になっていた。

魔聖銀の土台には、繁栄の意匠を繊細に彫り込んでいて、光の当たり具合で複雑な虹彩が浮かぶように計算されていた。

同じものが2つ、ボロスさんの用意した豪奢な箱にそっと仕舞われた。

3人は、既に王都への手配を済ませていて、明日には出発すると言う。

見送りに行くと約束して、宿に戻った。

マインと、3匹とまったりと部屋で過ごすと、この数日の怒涛の出来事がやっと一段落ついたとホッとした。

3人が帰ってくるまでは20日ほどかかると言うし、森に帰ると決めてあるから、明日3人を見送ったら私達も出発になる。

宿屋の皆さんと工房のフォル爺さん・女将さんに挨拶をして出ようねと、話し合って眠った。

早朝に3人を見送って、みんなに挨拶をして戻ってくることを約束してから街を出た。

何度目かの道は慣れたもので、3日もすれば森の家に到着した。

凄く久々に帰ってきた気がして、自分の布団に潜り込むと幸せだった。

翌日、ウェントゥに事の次第を話すと、今から来ると言う。

本当に来た時には、ルフトゥが一緒だった。

ルフトゥは、既にウェントゥほども大きくなっていたのに、私たちを見ると頭を擦る付けてくる。

私とマインは、ルフトゥとの再会に喜んで撫でまわした。

「ウェントゥ、ルフトゥに合わせてくれて、ありがとう。すごく嬉しいよ!」

マインが言うと、ウェントゥも嬉しそうに喉を鳴らした。

「あの大魔鷹達は、どうですか?問題は、起こしていませんか?」

アルコと恋鳥ちゃんは、それはそれは協力的に育児をこなしていると伝えると、目を細めてニヤリと笑った気がした。

「なんて言ったの?」

どうしても、知りたくて聞いてみたけど、内緒だと言ってウェントゥは、教えてくれなかった。

これからは、森と街を定期的に行き来して、街での生活を主にして生活すると言うと、ウェントゥは、寂しくなるが私達には、それが良いと言ってくれた。

ルフトゥは3匹と遊んでいたが、帰り際に羽根を2枚置いていった。

まだ細い幅の若い金王鷹の羽根は、白い鷹斑が光に当たって金色に輝いていた。

また2人で揃いの何かを作ってほしいと、マインに渡すと笑って引き受けてくれた。

森の生活は、やはりのんびりと時間が過ぎていくのが好きだ。

マインが何だかんだと作って入る間に、薬草などの採取・薬の作り置き・保存食の作成にと私も色々することにした。

夕飯時にスフェルにマインを呼びに行ってもらうと、マインがルフトゥの羽根で作ったものを見せてくれた。

羽根を朱金の板に張り付けて、ガラスで表面を覆った腕輪だった。

朱金の板には、羽の美しさを邪魔しない様に意匠が彫り込まれていて綺麗だった。

でも、まだ未完成の様で、腕輪の正面になる部分のガラスに窪みが付いている。

マインに聞くと、ルフトゥの父親の心臓石を分割して嵌め込みたいのだと言う。

私は、マインに赤い心臓石を手渡して、お願いしますと頭を下げた。

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