第59話 M

まさかの国王との関係を教えられて、再三びっくりし尽くしたが、私にとってはまだあった。

「しかし、不思議な因果だね。伝説の王宮魔術師団長ダーナ・エールの養い子に、伝説の宝剣鍛冶師ヴェルク・バルクの養い子。聖血の水薬は作るわ、通信魔導具なるものも作り出す。果ては、鉄魔鷹との友好まで持っていて、危険度と希少性の高い魔獣たちを従魔にしている。君たちは、面白いね。嫁に来ないかい?」

サラッと重要なことを言って、問題発言まで投下していくあたり、ラスバルさんだ・・・

「伝説の宝剣鍛冶師ってなんですか?初めて聞きました。じぃさまのことなの?」

私は、ラスバルさんの最後の言葉を無視して、ボロスに問いかけた。

「知りませんでしたか?現在この国に存在する、魔剣・聖剣・宝剣の類はほとんどがマインちゃんのおじいさんの作品ですよ。ヴェルクの印が入った武具はどれも国宝級の団が付きますから。でも、彼の作品の中に、ロードミスリルを使ったものはありません。マインちゃんも知らず知らず、養父を超えているのですよ?」

にっこりと、自信を持ってくださいとボロスは私に笑いかけた。

じぃさまは、私に武具の類は作らせなかった。

装飾品と生活用品を中心に、教えてくれていた。

なにか嫌なことがあったからというのは聞いたことがあるが詳細は知らないし、鉱山ではほとんど農耕具と生活用品しか作ってなかったし、印のある品は見たことがない。

「それは、そうとして・・・私には、スラテルポ、くれないのかい?仲間外れは嫌だなぁ。」

ラスバルさんは、可愛くないシュンとした顔で上目遣いに私とリェースの事を交互に見てくる。

「・・・・・・やめなさい。ラスバル、可愛くないわ。むしろ、むかつく」

ズバッと言い放つマグリッドさんに、心の中で拍手した。

私は、リェースを見て、目でどうする?と問いかけた。

リェースが頷いたので、ラスバルさんにも作る約束をして、スラテルポと水薬の事は3人に任せることにした。


そのままお昼をご馳走になってから、私とリェースは工房でスラテルポの制作に、ボロスとマグリッドさんはそれぞれの仕事場に向かった。

フォル爺と女将さんに、今日はリェースも一緒だと言うと孫が増えた気がすると喜んでくれた。

リェースは、ロードミスリル2枚に回路を付与すると、魔聖銀の土台にも付与を掛けた。

倒れないかとヒヤヒヤしたものの、本人は調子がいいらしく無用の心配だった。

まだ魔力が増えているらしく、どこまで魔力が上がるのか楽しみだと笑っていた。

私のリェースは、本当に、可愛いのに逞しい。

スラテルポをそのまま組み上げると、夕方になっていた。

3匹を迎えにラスバルさんの家に行くと、3匹と従者さんが出迎えてくれる。

すうっと夕飯まで出てきてしまって、至れり尽くせりで申し訳なくなる。

ラスバルさんは、気にしなくていいと言うけど、私達は気にする。

3匹の毎食の食費や私たちの食費、宿代にしたって払ってないのにと言うと、スラテルポ1つで30年分あるよと、笑われた。

アルコと恋鳥ちゃんの仲も良くなって、喧嘩を吹っ掛けられなくなったらしく、それのお礼でもあるんだから、甘えてほしいと言われてしまっては断れなかった。


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