第58話 R

目を覚ますと、ラスバルさんの家の居間のソファだった。

ご飯を食べてからの記憶がほぼ無いことに気付いて、カバっと起き上がった。

すぐ下の床に敷かれたふかふかの毛布の上で、マインと3匹が寝息を立てている。

食事をした机には、大人3人が突っ伏すように眠っていた。

何が何だかわからないので、そっとソファを降りてマインの隣に横になって、私はもう一度眠ることにした。

次に目が覚めたのは、スフェルとキエクに揺すられたからだった。

マインもイオルに揺すられて、目を擦って起き上がった。

「おはよう、リェース。下に降りてきてたの?」

コクンと頷くと、マインはニヘラっと笑って私のほっぺたを優しく抓った。

「リェースが寝ちゃってから大変だったんだよ?大人3人に尋問されたんだから」

びっくりして目を開くと、マインはまた笑ってほっぺたを両手でグニグニと撫でまわした。

「起きたのかい?おはよう。顔を洗ってくるといいよ。案内してあげて」

ラスバルさんは、最後の言葉を従者さんに向けて言うと、席を立ってどこかに行ってしまった。

ボロスさんとマグリッドさんも起き出して、一緒に顔を洗いに洗面室に着いてきた。

朝食にはいつも通りの美丈夫に戻ったラスバルさんが席についていた。

ボロスさん、マグリッドさんも席に着き、3匹と遊んでいた私達も呼ばれて席に着く。

因みに、3匹はこの家の従魔たちと一緒に食べるらしく、従者さんに連れられて行った。

ご飯をくれる人認定なのか、3匹とも素直についていく。

「うちの子たちは、頭がいいなぁ。お利口さんだなぁ」と、親ばかを披露したマインに、どことなくラスバルさんに近いものを感じてしまった。

「さぁ、先ずはしっかり食事をしよう。話はそのあとだよ。」

にっこりと笑顔のラスバルさんに促されて、しっかりご飯を頂いた。

今日の食後のお茶は、花の香りのするお茶だった。

苦みや渋みが少なくて、香りが良くて、後で銘柄とお店を教えてもらおうと決めた。

「さぁて、マインちゃん、リェースちゃん、昨晩大人たちが考えた作戦を聞いてくるかい?」

マインと2人でコクンと頷くと、ボロスさんが話してくれた。

「では、私から。水薬は、スラテルポと共に王家に売るよ。昨日、鑑定魔道具を取ってきて確認した。確かに聖血の水薬で、完璧な完全なる聖血の水薬だった。つまり、君は養母であるダーナ・エールを超えたんだよ。それは、伝説級の王宮魔術師団長を超えたってことだ。だが、王家に囲い込まれたくないだろう?だから、国王にも聖教契約を結ばせて未成年ということも踏まえて、2人の自由を我々3人で保証人になることで確保しようと思うよ。」

「あ、大丈夫よ?この3人、全員国王と縁があるの。ラスバルは歴代国王の教育係をしていたし、ボロスは旧友、私は現王妃との仲を取り持った恩人。3人揃って詰めよれば、何とかなるわ。最悪、王妃も取り込むもの。私の親友よ?任せておきなさい」

ボロスさんの言葉に驚き、マグリッドさんの言葉に更に驚いた。

「まぁ、3人揃って謁見なんて滅多にないから、何事かと強張るだろうね。あの坊やは。楽しみだ・・・久々に全身丸ごと洗濯でもしてやろうか。」

ふふふと不敵に笑うラスバルさんが、不気味だった。

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