第55話 M
「リェース、もしかしてなんだけどさ・・・解決するかも・・・一か八かなんだけど、聞いてくれる?」
私は、宿に着くなりリェースに切り出した。
なあに?と、小首を傾げるリェースに、ウェントゥに聞いてみない?と伝えた。
困ったときのウェントゥ様になりつつあるのは重々承知だが、背に腹は代えられない。
リェースの了解を得て、私はウェントゥに事の顛末を話し、3匹の預かりをお願いしたいから解決したい、いい知恵は無いかと問うた。
ウェントゥは、ほんのり口調が冷めたものに変わり、「その大魔鷹に話をしますから、アルコと2羽だけで隔離して、その場に夫の心臓石を持って行ってくれますか?」と、言った。
私は、了解を告げてラスバルさんの家にとんぼ返りし、アルコと恋鳥ちゃんを2羽だけで隔離してもらった。
その場に、魔鉄鷹の心臓石を置くと、私にまでわかるほどの魔力が迸った。
ウェントゥは、人語ではない言葉で、魔力に驚いて横倒しになった恋鳥ちゃんと、なんとか平静を保とうと頑張って立っているアルコに向かって鳴いていた。
突然の魔力に驚いたラスバルさんが、外でウロウロオロオロしていたが、私達にはどうにもできない。
魔鉄鷹の特殊個体であるウェントゥに説教をぶちかまされて、アルコと恋鳥ちゃんは随分としょげているように見えた。
アルコは嘴が地面に着きそうなほどに頭が下がっていて、恋鳥ちゃんは恐怖でほどんど気を失いかけているような気もする。
ウェントゥの話は、私達用に用意されたお茶がすっかり冷たくなるまで続いた。
ふいにウェントゥに呼ばれて、心臓石の所まで行くと、1日このまま隔離しておけばいいから、私達は帰っていいと言われた。
心臓石だけは明日の朝まで残しておいてほしいと言われて、明日の朝回収に来るよとそのままにして隔離部屋を出た。
「な・・・何があったんだい?何をしていた?凄まじい魔力を感じたけど、君たちではないよね?」
私は、ラスバルさんに話していいかとリェースの顔を見た。
リェースがにっこり笑って頷いてくれたので、ラスバルさんに聖教契約を結ばないなら話さないと言って、半ば強引に契約書を書かせた。
その際に、契約書を取りに行くラスバルさんにボロスを連れてきてほしいと頼み、ボロスも回りまわって当事者だからと巻き込んだ。
事の詳細を、端折りに端折って説明した後でざっくりと伝える。
「つまり、君たちは鉄魔鷹と親交があって、その鉄魔鷹があの2羽に説教してくれている?鉄魔鷹の心臓石で、意思疎通がなんとなくできるから?」
「そう、ざっくりそんな感じです。困っていると伝えると、出来る限りの手助けをしてくれるんです。もちろん完璧な意思の疎通などできないですけど、かなり知的なんですよ。鉄魔鷹」
ラスバルさんのあり得ないと言う顔に、笑いを堪えながら説明の補足を入れた。
「大丈夫。彼女は、凄い」
リェースの微妙な慰めに、ラスバルさんは笑って、そうだねと頷いた。
兎にも角にも、あの2羽のすれ違いや他社との諍いが無くなって、子育てに専念してくれればここにいる全員が助かるのだ。
3匹もここの従魔と仲良くしているし、心臓石も回収したいし、何よりお腹が空いたしと、ボロスも残ってラスバルさんの家に一晩お世話になることにした。
従者さんが買い物がてら宿とボロス商店に伝えてくれると言うので、甘えることした。
ボロスは、私とリェースのために残って貰ったようなものだけど、喜んでと引き受けてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます