第54話 R
ラスバルさんの家は、街の中でも貴族が多く住む地区の外れにあった。
大きな門扉の向こうに、広大な庭が見えた。
その庭には、アルコと恋鳥ちゃん、そしてヒナが2羽・・・
ヒナが生まれている!!
思わぬ光景に、マインも驚いて鈴を凄い勢いで鳴らしている。
その鳴らし方は迷惑だと思うよ、と考えていると、ヤツれた顔のラスバルさんが出てきた。
「やぁ、2人とも。よく来てくれたね・・・」
本当に疲れているようで、マインやスフェルたちへの愛のささやきも、珍しくなりを潜めている。
「疲れてる?」
私は思わず、ボソッと言ってしまった。
それに反応したラスバルさんが、とても・・・うん・・・残念・・・
「そうなんだよ!わかってくれるかい?もう、僕の手には負えなくなってきてるんだ!あの子は、凄く特別だよ!色んな意味で!話をきいておくれぇぇぇぇ」
引きずられるように、ラスバルさんのお家に招かれると、従者の男性がすぐに出てくる。
彼もどことなくぐったりとしていて、何か大変なことが起きているようだった。
ざっくりと話をまとめると、
たくさんの従魔が暮らすこの家にアルコが嫁を連れてきた。
その嫁は、アルコにしか興味がなくラスバルさんすら排除しようとする上に、他の従魔とも喧嘩する。
アルコは、別にこの子を好きなわけでは無いが付いてきたから連れてきたようで、恋鳥ちゃんとの気持ちのすれ違いが、恋鳥ちゃんの行動に拍車をかけている。
何とかかんとか繁殖に成功して、恋鳥ちゃんが落ち着くかと思いきや、アルコ恋しさにヒナに全く愛情を掛けず育児放棄。
アルコは怒って恋鳥ちゃんを無視して、育児している。
ヒナの成長は順調だが、2羽いるためアルコの目が届かないときもあり、たまに恋鳥ちゃんにいじめられている。
それをラスバルさんと従者さんが、監視しながら防いでいる状況で天手古舞だ。
と、いう負の連鎖が続いているようだ。
あまりにも盛大なすれ違いに、こんな強い個性の子にモテてしまったアルコにも同情する。
「とりあえず母親として育児を真面目にしてほしい、私や他の従魔たちに喧嘩を吹っ掛けないでほしいね」
ラスバルさんは、番の事は番で解決してくれと、アルコに嘆願したようだが怒っているアルコは聞き入れてくれないらしい。
私とマインは、預かってくれるところを聞く空気ではなくなってしまって、ラスバルさんの家を出てから冒険者組合に他の従魔術師を紹介してもらいに行った。
「ん~・・・今この街に居るのはラスバルとベスティアくらいなんだよな。んで、ベスティアってやつは、滅多に人前に出てこない。俺もかれこれ2年ほど姿を見てないからな。行ってみるか?会えないと思うけど・・・」
アグリさんの言葉に、私達は軽く眩暈を覚えた。
八方塞がりになってしまったような気がして、一度宿に戻ることにした。
とぼとぼと歩きながら、マインにどうする?と聞くと、困った顔のまま返事は貰えなかった。
逆に3匹は、ラスバルさんの家でアルコと会い、広い庭で駆け回って他の従魔とも遊んでいていい運動になったようだった。
何故か3匹には恋鳥ちゃんは寄ってこなかったようで、様子を見ていた従者さんは不思議がっていた。
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