第50話 R

マインと相談した結果を、ボロスさんとマグリッドさんに伝えた。

「ボロスさん、聞かせて」

私の言葉に、ボロスさんは頷いた。

「では、言うよ。この通信魔道具、スラテルポを王家に売る。今まで誰もなしえたことの無い代物だし、下手な奴には売れない。君たちのことは全力で守ると約束する。」

「お金は、きっとたくさん貰えるだろうけど、売ったとして私達にはどんな危険がある?ボロス」

「先ず、必ず製作者は聞かれるし、だんまりはできない。つまり、君たちにその力があるということは王家に伝わる。もちろん、王とその側近ぐらいの者だろうけど、変な考えを持つ人間がいないとは約束できない。」

「ここに居れる?」

私の言葉に、ボロスさんは「もちろん」と頷いた。

「わかった、売ってくれていいよ。それで、売れたとして売り上げの何割くれる?」

マインが聞くと、ボロスさんは少し考えて答えた。

「はっきり言って相場の無い商品だからね。はっきりとは答えられない。それでも、目標金額に近いくらいにはなるはず、いや、多分私の利益を引いても超す。」

そう言って、ニヤリと笑うと「吹っ掛けて見せるよ」と商人の顔で言い切った。

私とマインは、ボロスさんの店を出てそのまま、前にマインが工房を借りていたお店にもう一度工房を借りるために向かった。

向かった工房は武具を主に生産している工房で、親方さんの職人気質なところがおじいさんに似ているから好きなんだと、マインが言っていた。

私は、マインが交渉している間に中を見せてもらっていた。

よく見ると、鍋などの生活用品も置いてある。

結構何でも作っている様だった。片手持ちの深鍋が欲しいなと思っていたので、物色する。

持ちやすく軽く手ごろな値段の片手深鍋を発見して、会計をしようと受付に行くと奥で話しているマイン達が見えた。

随分と談笑が弾んでいるみたいだし、きっと工房を貸してもらえるだろう。

会計が終わると、すぐにマインが笑顔で戻ってきた。

「いいって。明日から5日程ここに通うよ。」

マインの言葉に頷いて、掘り出し物の戦利品を見せると、マインが驚いていた。

曰く、マインがここに来た初日に、練習用にと作ったものだったらしい。

いくらでも作るから返品してきてと言われたけれど、私は嫌だと首を振った。

偶然でも、私の手に合うものをマインが作っていて、それを知らずにでも私がマインの作ったものを買えるなんて、そんな運命的な鍋には2度と会えないと押し切った。

マインは随分とお金の無駄遣いだよと言っていたけれど、結局折れてくれた。

私は、運命的な掘り出し物を大切に魔法カバンに仕舞い込んでウキウキと宿に戻った。


翌日からマインは、工房に通っていく。

私は、マインから付与を頼まれるまで時間が出来てしまったから、薬師協会に通うことにした。

私の雇い主に、作業場を借りて納品する薬を作ることにしたのだ。

ついでに、作りたいものもある。

折角、ウェントゥに貰った命の聖血があるのだから、聖血の水薬を作ってみたくなるのは薬師の性だと思う。

ほんの少しだけ前に削っていた残りを持って、私は薬師協会に急いだ。

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