第49話 M

2人に使い方を説明して、やって見せて、把握してもらう。

すぐに2人は、使いこなして見せて、流石だと思う。

これで、遠くに居ても、例え森と街に離れていても、連絡が取れるから安否確認が出来て安心だと喜んでくれた。

やっと2人に少しくらいは恩返しができたねと、リェースと笑いあっていると、ボロスとマグリッドさんからもらい過ぎだと怒られた。

それを言ったら、私たちはウェントゥにどれほどの恩があるかわからない。

一生奴隷扱いまであり得るほどの、恩がある気がする。

私は、最後にボロスにキエクが増えたことで家が手狭になったから増築するための建材が欲しいと、言ってみた。

「それは構わないけど、森に帰るのかい?危なく無いのかい?街で暮らすことも真剣に考えないかな?家なら、いいものを私も探してみるよ?」

ボロスは、思いのほか真剣な声で提案してくれる。

「ありがたいけどさ、まだ踏ん切りがつかないんだよ。鉱山も昔の家もまだ見に行ってないしね。そりゃ、森が危険になってきてるんだってのは理解してるんだけどね。」

リェースにとっては育った場所であり、人との会話が苦手なことを考えると私がボロスの言葉に頷くことは出来なかった。

「マイン、半分こ、どう?森と街、半分こ」

リェースの言葉に、マグリッドさんが一番に賛成を唱えた。

確かに、イオルとキエクのおかげで森と街の行き来は楽になったし、これからもっと早くなるだろう。

森の家から鉱山までなら、イオルが乗せてくれれば半日に短縮できそうな気がするし・・・

「わかった。街と森を行き来する生活を真剣に前向きに検討する。ただし、家を2軒所有することになるから、せめて新しい家を買うお金が貯まってからね。」

私が言うと、ボロス・マグリッドさん・リェースも、頷いた。

「では、従魔も余裕をもって過ごせる家を探しておきましょう。ざっと平均を言えば6000万で買って、修繕や改修に1500万ほどですかね?」

そんなにするの?と、リェースがうなり声を上げた。

2人でコツコツ貯めたとしても、いつになるやら・・・

「マインちゃん、頭金を貯めて残りは分割で払うのが良いと思いますよ?1000万ほどなら3年もあれば貯まるでしょう。」

今度は、私がうなり声を上げる番だった。

「しかし、一つ手があります。聞きますか?」

リェースと顔を見合わせて、見つめ合った。

「リェース、どうしたい?3年かけて貯めてからこっちに家を持つか、多分とんでもないことを言い出すだろうボロスの話を聞くか、どうする?」

リェースにこっそり「封印を解いて、希少な物を売りに出す手もあるけど・・・」と、耳打ちする。

リェースは、考え込んでしまった。

「とりあえず、2人でいろいろ相談してもらいましょ?お茶を淹れるわ。私たちは席を外しましょうか?」

マグリッドさんの計らいで少しの時間を貰った。

「多分、ボロスはスラテルポをどこかに売りつける。危険もあるだろうけど、そこはボロスが上手くやると思う・・・あとは、ロードミスリルや聖血の塊を使って薬や装飾品を作ってボロスやマグリッドさんに売る。それも、危険はある程度覚悟の上になるね。それか3年頑張るか・・・まぁ、完済までは20年くらい?」

私は、リェースに選択肢の提案を、改めて伝えた。

リェースは、しばらくじっと考え込んでいた。

「話を聞こう?悪いこと、しない。きっと」

リェースの悩んだ結果の選択に、私は否を唱えなかった。

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