第48話 R
2人は、固まってしまったように動かなかった。
「マグリッドさん?」
「ボロス?気に入らなかった?」
私たちの声で我に返った二人は、ソファの背もたれに頭を乗せて天を仰いだ。
「マインちゃん、気に入らないことなんて絶対にない。ありがとう。まだ上手く情報が整理できなくてね・・・ゆっくりお茶を飲む時間を貰うよ・・・」
「えぇ、そうよ。とても素敵。ありがとう、大切にするわ。でも、ちょっと私もお茶を頂くわ・・・」
ボロスさんに続いて、お礼を言ってくれたマグリッドさんもお茶を一気飲みしていた。
2人は結局2杯ずつお茶を飲み干して、ようやく落ち着いたようだった。
2人はスラテルポをまじまじと見ると、小さく震え出した。
「マインちゃん、聞いていいかい?これの素 材は、何だろうか?」
フルフルと何かを堪えるようにマインに聞くボロスさんの顔が、とても強張っていた。
「これ、鑑定魔法掛けれないのだど、どうしてかしら?」
こちらもフルフルと小刻みに震えながら、マグリッドさんが聞いている。
「ロードミスリルと魔聖銀にリェースが開発した新型魔導回路、使用者権限を契約血解でつけてないから鑑定できないのかな?」
「んーん、素材の魔力値」
マインの説明兼問い掛けに、私が答えた。
「マイン、聖教契約」
「あ・・・忘れてた・・・」
折角ウェントゥが教えてくれたのに、マインは聖教契約を結ぶ前に素材を答えてしまった。
「マインちゃん、そういうことは前もって教えておいて。すぐに契約書を持ってくるから!!」
ボロスさんは、いつもの落ち着いたボロスさんらしからぬ動きで、絨毯のへりに足を引っかけて転びそうにそうになりながら部屋を出て行った。
残ったマグリッドさんは、額に手を当てて深くため息をついてあらぬ方向を見ていた。
それなりに長い沈黙の後、2枚の契約書を持ったボロスさんが戻ってきた。
「今すぐに書き上げるから、項目を教えてくれるかい?」
私とマインは、素材の出どころと製法・魔導回路の秘匿に、私とマイン・従魔たちや魔鉄鷹の不利益になるような言動の制限などの項目を4人で相談しながら決めて行った。
ボロスさんの書面とマグリッドさんの書面に、私とマインの署名を書き終えると、ボロスさんとマグリッドさんがそれぞれ魔法を発動させる。
この契約は本来教会の中で聖職者に立ち会ってもらってするものだが、それなりの地位にある二人には同じ権限が与えられてるらしい。
その権限も本来なら、国王か教会の偉い人しか与えられないもののはずだから、この二人がどれほどの人なのか見えてくる。
気にせずにただ感心しているマインを見て、私は何も言わないことに決めた。
契約が完了して、1枚の契約書は2枚に増えて複製を作った。
私とマインは、それをボロスさんとの契約分とマグリッドさんとの契約分受け取って、魔法カバンに仕舞いこんだ。
「やっと話せるね。さっきも言った通りの素材でできてるよ。魔導回路は、はめ込みを外せば見れる。開けようか?」
マインは、軽い口調で2人に問いかけた。
ふるふると首を振って、却下を申し出る2人に、とても綺麗な回路なのに・・・と小さく愚痴っていた。
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