第47話 M

翌日の私は、目元は腫れていても心は晴れていた。

昨日は、リェースの肩に頭を乗せて、安堵から涙が出た。

リェースは何も言わずに、私を抱きしめて涙が止まるのを待ってくれた。

宿に居るのに野営の様に全員でくっついて眠ったら、とても気持ち良かった。

私は、リェース・リェースに抱かれたスフェル・リェースにべったりくっついて歩くキエク・私の手に頭を擦りつけながら歩くイオルの全員で歩いてボロスの店に向かった。

いつもは馬車で行く道も、晴れた気持ちでみんなで歩くと新鮮なものだった。

店に着くと、従業員さんたちは何も言わなくても応接室に案内してくれる。

いつも通り過ごして待っていると、ボロスはいつも通りの穏やかな笑顔でやってきた。

「どうしましたか?」

私の目の腫れを見て、少し怪訝な顔をする。

「ボロス、聞いてほしいことがあります。出来れば、マグリッドさんにも。呼んでもらえますか?」

何かを察したのか、一つ頷いてボロスはすぐに部屋を出た。

ボロスと入れ違いに、御者さんがお盆に濡れ布を持ってきた。

私に差し出すと、瞼を冷やすといいですよと渡してくれた。

ありがたく濡れた布を受け取って、私は上を向いて頭をソファにもたれさせて目に当てた。

ボロスは何をしているの?と、聞くと御者さんは思いもよらぬ事を言う。

「ボロス様でしたら、自ら馬車を率いてマグリッド様をお迎えに参りましたよ」

びっくりして御者さんの方を向くと、目に当てていた布が落ちた。

御者さんはそれを拾うと、代わりをお持ちしますと言って出て行った。

やっぱり、ボロスは私達が隠し事をしていることは解かっていた上で接してくれていたんだ。

それはきっと、マグリッドさんも同じで今日の私を見て重大なことだと思ったんだ。

大人って、すごいなぁ・・・

私が、ぼーっとそんなことを考えていると、リェースが私の手を握る。

リェースを見ると、理解してもらっていて嬉しいねと笑う。

私も笑って、そうだねと返すとリェースは嬉しそうに笑って、膝の上のスフェルを撫でだした。

程なくボロスは、マグリッドさんを連れて帰った来た。

私は、2人に今までの事を秘密にすると約束した2項目に関すること以外は全て話した。

私達が初めてガングリードに到着したまでを話したところで、お昼にボロスに食事をご馳走になった。

ボロスもマグリッドさんも、鉄魔鷹によく殺されなかったものだと変な顔をしていたけど、確かに運が良かった。

あの時、ルフトゥの父親が私達に襲い掛かってきていたら・・・考えただけで恐ろしい・・・ルフトゥ、ありがとう!

美味しいお昼の後の、爽やかな薬草茶はマグリッドさんが淹れてくれた。

独自の分量で配合したお茶らしく、苦みの無いスッと喉を通るお茶だった。

リェースがお代わりを貰いながら、続きを話した。

氾濫の時の逃げてきたのは、前に助けた鉄魔鷹が逃げるように教えてくれたから難を逃れられたこと、氾濫後に帰ってからは家づくりの合間に鉄魔鷹からもらった素材で通信魔導具を制作していたこと、そしてその中でキエクに出会った話に繋がるのだと。

そして、2人に通信魔導具「スラテルポ」を手渡した。

リェースはマグリッドさんに、私はボロスに、渡しながら今までのお礼とこれからもよろしくお願いしますと、伝える。

2人は、受け取ってから確認して、何とも言えない顔で固まっていた。

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