第46話 R
マインは、浮かない顔で私に言う。
「嘘をつくのも、隠し事をするのも、辛いね」
私は、コクリと頷いて同意した。
「二人、好き。辛い。」
私の言葉に、マインは何やら決意を固めた様に私の手を握った。
そのまま無言で、冒険者組合に到着してしまった。
従魔の登録は、前と同じようにあっさりと終わって、とぼとぼと宿に向かって歩いた。
アグリさんも再会を喜んでくれたが、マインはどこか中途半端な笑顔になってしまっていた。
ぶらぶらと歩いて部屋で食べる夕飯を物色しならきょろきょろとしていると、夕方の人の多さで私は人にぶつかってしまう。
私がよろけた瞬間に、マインがそっと支えてくれた。
謝って頭を下げると、相手の人は、ふんっと鼻を鳴らして行ってしまった。
マインは、ぶつかった瞬間にシャランと鳴った、冒険者証を付けているルフトゥの羽根飾りをじっと見ている。
何か考えているんだろうなとは思うが、話してくれるのを待とうと思っている。
帰ろう?と、マインの手を握ると、マインが頷いて歩き出した。
宿の部屋には大きな絨毯が部屋の中心に敷いてあって、私達はそこに陣取るイオルとキエクに挟まるように座って3匹を撫でていた。
いつも自宅の居間で同じことをしているから、初めての街でもキエクが寛げるようにと撫でていたが、イオルは主人の心無い撫で方に不満を抱いている。
それでも、大人しくなでられることにしたようで、前足を顔の下で交差にして、そこに顎を置いたまま目を閉じていた。
シッポはパタンパタンとゆっくりと不満げに動いているから、感情が丸見えで可愛い。
キエクのシッポは、フランフランと横に揺れていて喜んで寛いでいるのがわかる。
スフェルは、キエクの前足で転がされたり、お互いの前足で突き合ってみたりと遊んでいる。
3匹三様に時間を過ごしてしばらく経つと、マインが突然立ち上がって私を見る。
「リェース、やっぱり出来る限り話したい。どこまで話していいかウェントゥに相談したいんだ。石を貸して欲しい」
やっぱりそんなことだったなと思いながら、ポケットからルフトゥの父親の心臓石を取り出してマインに渡した。
「大丈夫。マインと一緒」
精一杯の言葉に、めいっぱいの同意を込めて言うと、やっとマインのマインらしい笑顔が見えて安心した。
「ウェントゥ、聞こえますか?」
「聞こえていますよ。どうかしましたか?」
マインは、すぐにウェントゥに連絡を取り、お世話になっている信頼できる2人に出来る限り話したい、ルフトゥの誕生の事は話さない、聖教契約してもらうから許可してくれないかと必死になって説明して伝えた。
「構いませんよ。あなた達を信じましょう。ですが、私の特殊性も隠してもらえますか?私からの追加の要望は、それだけです。悩んだのでしょう?大丈夫ですよ」
ウェントゥは、そう言ってマインを慰めてくれる。
私はマインと手を繋いで、ウェントゥに迷惑が掛からない様に頑張るよと何とか伝えることが出来た。
ウェントゥとの会話が終わると、マインは床にぐたりとしゃがむ込んでしまった。
釣られて私もしゃがみこむと、マインの顔を両手で挟んで覗き込み、お疲れ様と伝えた。
マインは、少し笑ってマグリッドさんがするように私とスフェルとイオルとキエクの全員を抱きしめる様に腕を広げて私の肩に頭を乗せた。
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