第42話 R
・・・・・びっくりした・・・・
まさか、寝起きで顔を舐められると思わなかった。
その後も、子狼は私から離れようとしなくて白銀雪花狼の毛皮の上で延々とスリスリされることになった。
私が顔と髪の毛をベッタベタにされながら、従魔の証を作って欲しいと言うと、マインはまん丸にしていた目を細めて大笑いしてから了承してくれた。
キエクと名付けた子狼は、従魔の証を残っている耳に付けて、概ね順調に回復し半分無くなったシッポをぶんぶん振り回してスフェルを追いかけ回るまでに元気になった。
イオルも自分と同じような大きさの友達が出来たのが嬉しいのか、2匹で転げまわっているのをよく見かける様になった。
私とマインは、従魔たちに居間をほぼ占領されている事態に、苦笑しながらも拡張するか、従魔のための家を作るかで悩んでいた。
スフェルは小さいから私と一緒の布団で寝れるが、イオルとキエクについては、そうは行かない。
今は、イオルがキエクと共に居間で寝ているが、それでいいのかどうか・・・
マインと相談して、一度納品と試験使用に従魔登録を兼ねてガングリードの行こうかと話し合った。
出来れば、その時にボロスさんとマグリッドさんに、通信魔導具を使える状態にして渡したい。
そうして私達に、魔道具作成に本腰を入れて作業場と工房に籠る日々が戻ってきた。
そして、開発から何やかんやあった試作品1号2号が、ついに・・・やっと・・・完成した。
マインの切り出してくれたロードミスリルの板は、艶々と滑らかに白く、美しく輝いていた。
その表面に、私の組んだ受信と発信の魔導回路を刻み込んでいく。
細かい線を重ならず潰れず逸らさずに刻み込んでいくのは、魔力の制御が倒れそうなくらいに辛い。
それを、2回繰り返して、私は一度気を失った。
大量の魔力を注ぎ込みながら刻み込むために集中し過ぎて、盛大な魔力切れを起こしたようだった。
目が覚めたのは翌日の朝で、マインが私の布団に突っ伏して眠っていた。
私を運んでからずっと、そばに居てくれたのかと思うと申し訳なくて嬉しかった。
大きさを合わせて作られた魔聖銀の台座にも、ロードミスリルの回路の部分が当たる2面に受発信の仲立ちをするための回路を刻み込んだ。
マインは、魔導回路が刻まれていないロードミスリルの表側になる面に、受信側には美しい大輪のローザの花を、発信側にはリリエの花を、線を彫って描いてくれていて感動した。
マインが丁寧にロードミスリルを魔聖銀の台座にはめ込むと、ほんの刹那、効力発動の火花が小さく散った。
マインが作ってくれていた魔聖銀の鎖に、出来上がったものを通して首から下げると、2人して変な笑いが込み上げた。
マインの工房に2人の笑い声が響いてしばらく・・・笑い疲れた私達は、試動してみることにした。
マインの魔力が少ないことも考えて作った魔導回路は、正常に機能して別の部屋のマインから少量の魔力を与えられて私に伝わる。
突然声が聞こえたらびっくりするからと、受信時には2回ポっポっと小さく輝いて震える様に仕組みを考えた。
誰からなのか相手を特定できるように、いつか改良も重ねたいと密かに思っている。
私は、自分の首に下げている魔導具に魔力を与えて起動するとマインの声が聞こえた。
一度、魔力を切って終了させてから、今度は私がマインに通信する。
試動は無事に完了して、マインが工房に戻ってきた。
次は、ボロスさんとマグリッドさんに渡す分を仕上げて組み上げなくては・・・だが、流石に今日は諦めた。
また魔力切れを起こして倒れたら、マインに怒られて心配をかけてしまう。
自分たちの魔導具に自らの血を一滴染み込ませて契約血解を施して、今日の作業は全て終わった。
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