第30話 M

ボロスは、私たちに甘い気がする。

馬車にしても氾濫が終わっても続くし、五年間の契約にしても未成年の間の三年間に二年も足してるし、なんだか過保護が過ぎる気がする。

お昼ご飯をボロスにごちそうしてもらって頂いた後、お手伝いをするのかと思ったら今度はマグリッドさんがリェースに会いにボロス商店に来た。

リェースも私と同じように、マグリッドさんに五年間の薬師契約を結ばされていた。

月に20万ネルを得て、協会が求める物を求めるだけ作成すること。

年に200万ネルの研究費を得て、新たな薬など有用なものの開発をすること。

それ以外は制約しないと、言うものだった。

リェースが私がボロスに聞いたことと同じことをマグリッドさんに聞くと、マグリッドさんの答えもボロスと同じものだった。

どうやらこの二人は私とリェースを甘やかすつもりでいるようだと、リェースも感じた様だった。

正式な契約書を交わすと、ボロスはおやつの時間だね、と、お茶とお菓子を出してくれる。

それを見計らったように、アグリさんとラスバルさんが現れた。

2人は昨日話す時間が取れなかったことを申し訳なく思ったらしく、謝りに来てくれた様だ。

「マインの居た村は、手紙で報告した通りだった。家も瓦礫と化した。マインの鉱山の方は、道具やらなんやらは荒らされていたが、鉱山自体は無事だ。あとは、教えてくれた大きな揺れの原因だが、大型魔獣のキングドレイクが氾濫をきっかけに生まれた様だ。そっちは何故か氾濫に加わらずに魔鉄鷹の住処のある方に向かって行った。しばらくは、剣戟の様な音が聞こえていたから魔鉄鷹が戦っていたんだろう。氾濫が終わった後に偵察を出したが、存在は消えていたようだから魔鉄鷹さえ刺激しなければ大丈夫だろう。」

アグリさんが、簡潔に知りたかったことを教えてくれた。

それと、冒険者達が私たちが渡したものの清算をさせてほしいと言っているがどうするか?と聞かれてので、差し上げたものですとお断りした。

アグリさんは笑って、ありがとうと頭を下げて言ってくれた。

私もリェースも、全員が無事に帰ってきてくれたことが報酬だと言うと、アグリさんは小さな目をデロっと下げて子供の様に笑った。

・・・・・少し不気味だと思ってしまったのは私だけじゃない・・・はずだ・・・

話しを聞きながらお茶をしている間、ラスバルさんは相変わらずだったけど楽しかった。

私もリェースも、やっと心から笑えた気がした。

夕方近くなって帰る間際、ラスバルさんとアグリさんから森へ戻るならまた護衛をすると言ってくれた。

私たちは、ルフトゥの事を考えて、今回はお礼を言って辞退した。

氾濫と危険な魔獣が居ないなら、早くルフトゥを両親の元に返してあげたい。

彼らは、何かあったらいつでも言っておいでと笑って帰って行った。

宿に戻って夕食後、いつ森へ帰ろうかと2人と3匹で相談して、3日後に決めた。

それまでは、雑貨を買ったりするだろうし、まだボロスのお手伝いもしてないし、忙しくなるねと早めに寝ることに決めた。

次の日からは、精力的にボロスの手伝いとして、配達や掃除、仕分けなどの雑用を頑張った。

思った以上に素材が多く、力と体力の低いリェースは毎日ぐったりしていた。

それでも、空になった協会の倉庫を埋めるためにと毎日薬の在庫を増やしていた。

いくら魔力が多いと言っても、体力は反比例しているリェースが倒れないかが心配だった。

とりあえず、明日は森に帰るのだし今日は早く寝かせようと決めた。

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