第28話 M

次の日も、その次の日も、作業に没頭して過ぎた。

リェースも私も、何かしている方が良かった。

ただ待っているだけなのは、辛いものだったから。

物を作れば、買い取ってくれたし、お金はあるに越したことは無い。

私たちが欲しい知らせが到着したのは、作業場を借りてから4日目の朝だった。

ボロスの店のいつもの御者さんが、寝起きの私たちを大急ぎで馬車に乗せて店に移動した。

店の前にはボロスとマグリッドさんが居て、大きな見覚えのある鳥が頭を撫でられていた。

アルコは私たちを見つけると、また胸を張ってカバンを開けろと催促する。

私がカバンを開けると、何かの魔獣の爪が3つと魔晶石がゴロゴロ入っていて、奥底に手紙が一通あった。

私は、リェースと一緒に手紙を覗き込んだ。

そこには、一言づつ4人からの言葉が書かれていた。


終わったぞ アグリ

お土産、それでもまだ一部だからね レーダス

回復薬と傷薬、助かったよ グラド

君の元に真っすぐに帰るから、お利口さんで待っていておく=~~~~=

最後の文章は、完結されず署名すらもなかった。


私とリェースは、その場にへたり込んで笑った。

「帰ってくるって。終わったって。まだまだあるって。」

急いで簡潔に話そうと思っただけなのに、まるでリェースみたいな話し方になってしまって、変な感じだった。

それでも、その場の全員が良い笑顔だった。

冒険者組合への報告にマグリッドさんが走り、大量に持ち込まれるであろう素材の販路と在庫置き場の確保にボロスが店の中に消えた。

私は、リェースとしばらく立てずにその場で呆けてしまった。

アルコが私の頭を軽く突いて、小首を傾げる。

お前大丈夫か?と言ってるように感じて、大丈夫だよと立ち上がってから頭や首を撫でた。

リェースの手を引いて立たせてから、4匹をその場に残してリェースと2人でボロスの店に入った。

「ボロス、何か手伝えることある?」

案内されたボロスの執務室では、ボロスが凄い勢いで書類を書いていた。

そっと、話しかけると、大量の書類を渡されてコレはどこ、アレはあそこにと伝書鳩を頼まれたので、その日は一日中2人と4匹で街中を駆け回った。

冒険者組合でも薬師協会でも手伝えることは手伝って、詰所でも怪我人対策や応急薬の準備、回復魔術師が多く在籍する正教会への手紙や荷物の手配などを手伝った。

みんなが帰ってくるまでは、不安を拭う様に体を動かした。

装飾品作りでも街の人の手伝いでも、何かをして早く早くと落ち着かない自分を宥めたくて仕方なかった。

アルコが帰って来てから更に3日かけて、冒険者たちの一団が帰ってきた。

凱旋を一目見ようとしたのか門から広場まで、まるで街中の人が全員そこにいるかのような人の海だった。

先頭にアグリさん、そのすぐ後にラスバルさん、レーダスさんとグラドさんが続いて、森であった冒険者の人たちが続いた。

広場に一団が止まると、英雄を称える歓声が響き渡った。

一団の誰もが、疲労の蓄積した顔に満面の笑みを浮かべて、満身創痍の体で手を振ったり拳を突き上げたりして答えていた。

歓声が落ち着いたころに、少し遠くで見ていた私とリェース・ボロス・マグリッドさんとボロス商店の店員に薬師協会の面々で、炊き出しと顔と手を拭く温かいタオルを用意して冒険者達に配り歩いた。

その日は、どの屋台も食堂もみんなで料理やお酒を持ち寄って、そのまま広場で済し崩し的な宴会状態だった。

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