第24話 M
まだ小さくスフェルほどの大きさしかない空の王は、両親の飛び去って行った方を見つめていた。
それでも、瞳は悲しみではなく希望を宿しているに見えた。
この子は、きっとちゃんと理解しているんだ。頭のいい子だね、とリェースと話した。
小さな空の王をスフェルと共に抱き上げると、移動用の籠に入ってもらう。
おわ私とリェースは、すぐに必要なものを魔法カバンに詰め込み始めた。
大急ぎで最低限の支度を終わらせると、荷馬車に馬を繋いで2人と2匹と1羽で乗り込んだ。
最低限の休憩、最低限の食事、最低限の会話でガングリードまでの道を急いだ。
途中の森の中で冒険者達に会うことが出来ので、詳細を端折ったり隠したりで手紙に書いた内容と符合するように状況を説明して、作った薬や装飾品を渡して何とか先の4人も含めてみんな無事に帰って欲しいと願った。
冒険者達は、必ず4人を連れて全員で無事に帰ると手を振って先に進んでいった。
私達はそれを信じて、只管にガングリードを目指した。
繋いだ馬の様子を見ながらの強行軍で、何とか6日目の夕方前に街の門に辿り着いた。
口ひげ門兵さん達に無事でよかったと笑顔で迎えられて、やっと生きた心地がして大きく息を吐いた。
荷馬車でボロス商店まで乗り付けると、大慌てのボロスが飛び出してきた。
どうやら、執務室の窓から自分の荷馬車がやってくるのを見つけて出てきたらしい。
商人らしく、目ざといことだと変な感心をしてしまう。
ボロスは私達を応接間に連れて行って、お茶とお菓子に食事の用意と宿の手配まであっという間に終わらせてくれた。
私達は、あまりの疲労に全ての説明は明日必ずするからと約束してすぐに食事を頂いてから宿屋のお布団に直行させてもらった。
翌朝は、2人と2匹が全員そろって朝寝坊だった。
きっと、ボロスが来なかったら全員まだ寝ていただろうと思う。
眠い目を擦りながら着替えて降りていくと、いい笑顔のボロスとマグリッドさんが飲んでいたお茶を置いて迎えてくれた。
「お寝坊さんね。でも、良く来てくれたわ。アルコの持ってきた知らせはすぐに街中に伝わって、後3日遅かったら私たち、あなた達を迎えに行こうかと思ってたのよ。」
マグリッドさんは、リェースを腕の中に捕まえて涙声で話しながら抱きしめた。
ボロスも何度も頷きながら、イオルの頭を撫でていた。
私もリェースも、心配をかけてしまったことの申し訳なさと、心配して貰えることの嬉しさとで複雑な顔をして聞いていた。
ボロスの店の応接室に場所を移して、私とリェースは2人に森での出来事を話し始めた。
話しを聞いた2人は、それぞれ支援物資の手配のために飛び出して行った。
残された私達に出来ることは、お茶を飲んで2人の帰りを待って、森にいる4人と冒険者達の無事の帰りを祈ることだけだった。
ボロスとマグリッドさんが戻ってくると、2人はそれぞれ情報を持ってきていた。
ボロスの情報は、警備兵達の警備が強化されて外出が制限されるとの事だった。
皆が宿で食事が毎食とれるように、手配してきたと笑ってくれたが、どこか緊張が漂っていた。
マグリッドさんの方は、アルコがまた戻ってきたと言う話だった。
アルコは、私達宛の手紙も持っていて私を探しているらしい。
直ぐに外に出ると、丁度よく正面の上空をアルコが飛んできていた。
人よりも大きな鳥が真っ直ぐに私たちのところへ飛んでくる様は、申し訳ないがちょっと怖い・・・
目の前につむじ風を起こして着地したアルコの頭を撫でると、首に下げたカバンを胸を張って主張してきた。
私がカバンを開けると、手紙と小さな箱が入っていた。
アルコは、受け取ったのを確認すると手紙をつついて、早く読めと催促する。
私は、手紙を開けてリェースにも見えるように持って2人で読んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます