第22話 M
リェースの家に着くと、みんなで荷下ろしを手伝ってくれて私とリェースは大助かりだった。
スフェルとイオルはアルコに森を案内するつもりなのか、すぐに3匹連れだって飛び出していった。
一段落すると、リェースはみんなにお茶を出して外の長椅子で休憩してもらった。
私は、材料を手元に作業場の改造と家の改装に精を出した。
結局興味本位込みの全員での作業になって、家の中は一気に賑やかになった。
今夜は、まだ改装が終わらないこともあって、全員で外で寝ようとなった。
夕飯にはリェースとレーダスさんが料理担当で、従魔3匹の狩りの成果を全員で堪能した。
スフェルもイオルも帰ってきたことが嬉しいのか、大はしゃぎでアルコと遊び疲れていつもより早めに寝落ちてしまっていた。
私とリェースも安心感からか早めにうとうとしだしたが、大人たち4人はまだワイワイと酒盛りの最中だったのでリェースと2人で寄り添って先に眠った。
翌日目覚めるとレーダスさんが朝食を用意してくれたらしく、既に温かいスープが出来上がっていた。
本人は、グラドさんと共に調査探索に出たらしく居なかった。
ありがたく頂戴して、今日もアグリさんとラスバルさんと共に家の改装に勤しんだ。
やはり男性の手があると作業が早く、線の細いラスバルさんでさえ私の持てる以上の物を持ってくれたりする。
本当に変態的なさえなければ、素敵な男性だろうに勿体なくて残念な人だと思う。
改装が一段落するころに、レーダスさんとグラドさんが帰ってきた。
帰ってすぐ、2人はアグリさんと何かを話し合っていた。
冒険者組合の仕事の関係だろうからと、聞くことは無いがやはりそわそわしてしまう。
見ないふりをして、何気なく過ごしているとアグリさんから集合してほしいと声が掛かった。
6人全員が揃うと、アグリさんが話し出す。
「レーダスとグラドからの報告を、伝える。事は中々に重大だ。心して欲しい。」
アグリさんから、金王鷹の存在が確認されたこと、それに重なって氾濫の兆候を調査していたこと、その氾濫が発生していてドワーフの村の方に向かっていることを伝えられた。
ドワーフの村の近くには、私の鉱山がある。
じぃさまから受け継いだ、私の大事な場所。
魔物たちに、無慈悲に蹂躙されたくない。
「アグリさん、氾濫はどこまで来てるの?大切な鉱山があるの。ドワーフの村は兎も角、そこは守りたいの。」
私が食いつくと、アグリさんはドワーフの村の目の前に迫っていると教えられた。
村から鉱山までは、目と鼻の先だ。
私を支えるように、リェースが寄り添ってくれていなければきっと崩れ落ちていた。
守備兵隊の副隊長であるラスバルさんの顔色も悪く、すぐさま状況を手紙に書いてアルコに飛んでもらうと言っていた。
アグリさんとラスバルさんは、街に戻るよりもこのまま4人で氾濫の確認に行くと言う。
私とリェースは、絶対に連れて行かないと、氾濫を片付けたら鉱山まで連れて行くからと、同行を断られた。
ドワーフの村からこちらに進路を変えることは先ずないと思うが、十分注意するようにと固く言い含められて頷くしか出来なかった。
アルコは頭をラスバルさんに一撫でされると、街へ飛んで行った。
残った大人たちは出発の用意をものの数分で終えて、アグリさんが私たちの頭を撫でて大丈夫だと笑うと出発して行った。
私たちは、突然の出発に別れも言えずに、ただ見送るしかできなかった。
その日は、今に布団を持ち込んで2人と2匹で身を寄せ合って眠った。
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