第21話 R
朝から、この一行は賑やかだ。
それはもう、うるさいくらいに・・・
ボロスさんの荷馬車の元に集待ったのは、私・マイン・スフェル・イオル・アグリさん・ラスバルさん・ボロスさん・冒険者で氷魔法使いのお姉さんと剣士のお兄さん・薬師協会長マグリッドさんと大所帯だった。
ボロスさんとマグリッドさんは同行しないが、お見送りに来てくれたみたいだ。
朝から元気に自分の従魔そっちのけでマインとイオル・スフェルを口説いては撫でるを繰り返して拒否されているラスバルさんを、アグリさんが呆れて見ている。
見ているなら助けてください!と、マインが怒鳴っていた。
マグリッドさんから花を砂糖漬けにしたお菓子と、ボロスさんからお茶の葉を餞別にと貰った。
嬉しくて恥ずかしくて俯いて小さくなってしまったけれど、ちゃんと聞こえるようにお礼が言えた。
冒険者の二人は、お姉さんがレーダスさん、お兄さんがグラドさん。
アグリさんの部下のようなもので、マインを助けるべきか沈黙を守るかで悩んでいた。
どうか助けてあげてほしいと言うと、笑ってマイン達をラスバルさんの手から奪い返してくれた。
レーダスさんとグラドさんは、私たちの護衛のほかにも調査の仕事があるとかで「たまにいなくなるけど、ごめんね。その時は、頑張ってね。」と言っていた。
準備や装備の確認をして、ボロスさんとマグリッドさんにひと時の別れを告げた。
二人は、見えなくなるまで手を振ってくれていて、何故か涙が出た。
私とマイン、スフェルとイオルは荷馬車の御者台に上がらせてもらって森に入るまでの時間は初めての馬車の旅を楽しんだ。
馬車の御者台は、思いのほか高くて最初のうちはマインの手を握り締めていた。
ただ、吹き抜ける風が気持ちよくてお尻の痛みさえなければ一日中乗っていたいと思った。
街道沿いの休憩所では、さすがと言うべきか皆慣れていて仕事が早く、マインと私はほぼお客さん状態だった。
スフェルとイオルは、冒険者の二人にも慣れて最初に警戒心を出していたのが噓のように気持ちよさげに撫でられていた。
アグリさん曰く、魔毒虎が人に慣れるのが珍しくみんなが貴重な体験をしているらしい。
アグリさん自身も、スフェルが近くに行く度に撫でていた。
ラスバルさんではないが、もふもふの癒し力は相当なものの様だった。
当のラスバルさんは、マインにもスフェルにもイオルにも振られ続け様が落ち込むこともなく、常にそちらを見ていて軽く付きまといの犯罪者に思えた。
ただ、彼の連れてきた従魔は素晴らしかった。
魔鉄鷹の親戚のような姿の、大魔鷹アルコはとても賢く力持ちでスフェルとイオルともよく遊んでくれていたし、道中は空からの偵察役を担ってくれていた。
ラスバルさんとアルコの様子は、とても仲良しでとても参考になった。
森に入ると隊列は円形から縦長に変わり、スフェルとイオルは荷馬車の先導をするように前を歩いていた。
アルコは、荷馬車の上に陣取って周囲を警戒している。
森で生まれたとはいえ、街で暮らしていると森の中は楽しく思えるのかもしれない。
途中、魔鉄鷹に殺された冒険者の死体の場所を確認したり、周囲の魔物の繁殖状況を確認したりで時間を取られるも急ぐ旅ではないので苦にならなかった。
ただ、やはり王魔鷹のヒナの話だけは出来なかった。
アグリさん以下冒険者の3人は、ラスバルさんとアルコに私たちの護衛を任せて素材集めにも勤しんでいた。
森の中は素材の宝庫だとニコニコしている様子は、冒険者らしくて見ていて面白い。
マインがボロスさんに売りに出した素材の中にも、森で手に入る貴重なものがあったらしく冒険者が武器や防具の新調に活気づくのはありがたいことだと言っていた。
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