第19話 R
冒険者の登録は、あっけないほどあっさりと終わった。
紙に自筆で名前を記入・血を一滴、従魔の種類・特徴と固有名称、証の形状の詳細記入と血を一滴、それで発行された小さな金属の円盤を2枚と注意事項の小冊子を渡されて終了した。
私たちは、他の冒険者と同じように首に下げる鎖を買って肌身離さず付けるようにした。
いつかマインに、もっと可愛らしく邪魔にならないように付けれるようにしてもらおうと思っている。
その後は、街の中を少し探検して本屋と鍛冶屋を見つけて、明日尋ねようねと約束した。
スフェルもイオルも、可愛いと食べ物を貰ったりして街を満喫しているようだった。
夕飯をいつも通りに屋台で買って食べる間、私は上の空だった。
マインの言った、「ゆっくり考えてみる」という言葉。
私の事を、考えて言ってくれたんだろうと思っている。
でも、それがマインの負担になっていないか不安になる。
ずっと、喋ることをマインに任せていることもわかっている。
マインがそれとなく、そうしてくれていることも。
私は、マインのお荷物じゃないかな?
当たり前のように一緒にいるって考えてくれてることも、我慢をさせているんじゃないかと思ってしまう。
私は結局上の空のまま曖昧返事をしながら布団に潜り込んで、意識が消えるまでぐるぐると考えていた。
「リェース!!」
マインの声で、意識が覚醒した。
私は、朝食のスープを盛大にスカートに零していた。
「リェース、昨日から変だよ?なんでも話し合う約束でしょう?忘れた?」
マインの少し怒った顔に、スカートを拭きながら身を竦めてしまう。
食事の後、着替えてからマインに思ていることを話した。
絶対、呆れられている。
怒られるかもしれない。
でも、約束を破りたくないからちゃんと話した。
マインは、呆れ顔からびっくり顔になって、最後に笑った。
「リェース、私は負担になんて思ってない。リェースを守りたくて、一緒に頑張りたくて、もし引っ越すにしても一緒が良いからリェースの準備を考えてゆっくり考えるって言ったんだ。」
マインはそう言って、私の手を握ってくれた。
マインがいずれは一緒に街で暮らすのもいいなと思っていること、でも私の対人恐怖症をゆっくり慣らしてからにした方が良いと思ったこと、自分の考えだけで負担にならないか心配して言い出せなかったことを教えてくれた。
私は、マインと2匹が一緒なら街で暮らすのでもいい、怖いけど恐怖症も話し下手も直したい、マインにばっかり負担を掛けたくないと伝えた。
結局お互いの事を尊重しすぎてすれ違ったねと、笑いあっった時にはお昼になっていた。
本屋と鍛冶屋に向かう間に、屋台で簡単な野菜の皮包みを買って公園の広場で食べた。
二人で2種類を半分ずつに分けて、飲み物も半分こにして、近くの屋台のおばさんから姉妹の様だねと言われて焼き菓子をおまけしてもらった。
嬉しくなって笑いあって足取りも軽く、まずは本屋に向かった。
マインは途中から退屈そうだったけど、外で2匹と遊びながら待ってくれていた。
私は、マインに冒険譚、私に薬草辞典の新しいものを買った。
その後は、マインが行きたがった鍛冶屋に回った。
ドワーフは、元々鍛冶職人や物を作る職人が多い。
マインのおじいさんも往年は鍛冶をしていたらしく、家に炉があったと懐かしそうだった。
マインはひとしきり、作業を見せてもらった後で私に新しい包丁を買ってくれた。
曰く、これからもおいしいご飯をお願いします。とのことだった。
私は、もちろん!と、笑って頷いた。
明日はボロスさんのお店に行く前に、帰り支度のための買い物をすることを決めて宿に戻った。
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